| 脳下垂体 | 項目ビュー | ||||
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| II. | 脳下垂体前葉 |
牛や羊、豚の脳下垂体前葉から、体内の10~12の機能を調整するホルモンがとりだされて分離精製され、アミノ酸からできた8種類のペプチドホルモン(→ ペプチド)であることが確認された。
成長ホルモン(GH)は、ソマトトロピンあるいはSTHとよばれ、正常に骨がのびていくためには不可欠なホルモンで、思春期になって性ホルモンが性腺からでるようになると成長ホルモンは作用しなくなる。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)は、甲状腺が正常にはたらくようにし、副腎皮質刺激ホルモン(ACTH)は、副腎皮質の活動をコントロールしたり、ストレスに抵抗して体をととのえる反応をおこしたりする。プロラクチンは乳腺刺激ホルモンともよばれ、乳腺に作用して乳汁分泌をうながす。妊娠中にほかの脳下垂体ホルモンや性ホルモンの刺激によって乳汁をだす準備ができている乳腺組織にだけ作用する。
卵胞刺激ホルモン(FSH)は、女性では卵巣を刺激してグラーフ卵胞をつくり、男性では精子をつくるように刺激する。黄体形成ホルモン(LH)は、女性では排卵後に卵胞ホルモンをつくるようにうながしたり、乳汁の分泌を開始させる。また、男性では精巣がテストステロン(男性ホルモン)をつくるようにうながす。
1975年、実験動物では、ストレスをうけると天然麻薬の作用をするエンドルフィンが脳下垂体からでることが発見された。エンドルフィンとACTHとははじめは1つの大きなタンパク質をつくっていて、大きなタンパク質のまま分泌されるが、その後それぞれにわかれて作用をする。エンドルフィンとACTHはともにストレスがあるとでてくるホルモンで、一体になって分泌されることで2つのホルモンの生理活性が調和的にはたらく。
大きなタンパク質であるプロホルモン(前ホルモン)には、メラニン細胞刺激ホルモンもふくまれている。この小さなペプチドは魚類や両生類の皮膚の色を調節するホルモンと構造が似ているが、ヒトではどのような働きをしているかはわかっていない。
視床下部から小さな血管をとおって脳下垂体前葉におくられた化学伝達物質が、前葉のホルモン活性を調節している。
1950年代にイギリスの神経学者G.ハリスは、視床下部から脳下垂体に血液をおくっている血管を切断すると、脳下垂体の働きがわるくなることを発見した。64年には、成長ホルモンや甲状腺刺激ホルモンのチロトロピンや、性腺刺激ホルモンの分泌を調節する、ホルモン放出因子とよばれる化学物質が視床下部にあることがわかった。69年にアメリカの内分泌学者R.ギルマンらが、脳下垂体から甲状腺刺激ホルモンがでるように刺激するチロトロピン放出因子を分離して、その性質をつきとめた。
その2、3年後には彼のグループとアメリカの生理学者A.シャリーのグループが、LHとFSHがでるように刺激する黄体形成ホルモン放出因子と成長ホルモンがでないようにはたらくソマトスタチンを分離した。このように脳と内分泌系とはつながっていることをあきらかにした業績によって、1977年に彼らはともにノーベル生理学・医学賞をうけた。また、ヒトのソマトスタチンは、組みかえDNAを細菌に導入してつくられた最初の遺伝子工学の産物のひとつである。
エストロゲンとプロゲステロンの2種類の女性ホルモンは、経口避妊薬(ピル)にもはいっているが、これらのホルモンの作用は視床下部からでる放出因子の働きを考えるとよくわかる。卵巣が、受精できる成熟した卵子細胞をつくるまでには、ヒトの正常な月経周期で数回のホルモン変化がおきる必要がある。
まず、体のエストロゲン濃度が低くなると、卵胞刺激ホルモン放出因子(FRF)が脳下垂体にながれていって卵胞刺激ホルモン(LH)の分泌を刺激し、エストロゲン濃度が高くなる。プロゲステロンの濃度が低くなったときも同じようにフィードバックがかかって、黄体形成ホルモン放出因子(LRH)がでて黄体形成ホルモンが分泌され、プロゲステロンの濃度が高くなる。
卵巣で成熟した卵胞がエストロゲンをだすとエストロゲン濃度が高くなり、視床下部にはたらいてFSHを一時つくらないようにし、プロゲステロン濃度が高くなると脳下垂体がLHをつくらないように視床下部を刺激する。このように、ホルモンの分泌パターンが変化して受精できる卵胞がつくられる。
経口避妊薬を毎日のんでいて、合成エストロゲンと合成プロゲステロンがいつも体の中にあったり、エストロゲンとプロゲステロンを注射したりすると、視床下部はこれが正常なホルモンの刺激であるかのようにみなす。そのため、卵巣は卵胞を成熟させないので、月経がなくなり避妊できる。