進化
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進化
IV. 集団遺伝学

突然変異説がダーウィン説にとってかわったちょうどそのころ、先駆的な進化論である集団遺伝学の理論が、ライト、ホールデーン、そのほかの遺伝学者らの研究によって発展してきた。彼らは、たとえ突然変異がおきたとしても、その変異が個体群の間にひろまっていくには、(1)集団の大きさ、(2)世代の長さ、(3)変異の有利さの程度、(4)同じ変異が子孫に再現する割合によって左右されることを論じている。

さらにまた、うけつがれた遺伝子は、一定の環境においてのみ有利である。もし環境が場所によって変化しているなら、その遺伝子は局地的な一部の集団においてのみ有利であろう。また、もし環境が時間とともに変化するのであれば、その遺伝子は一般に有利でなくなることもある。

個々の個体は、それぞれことなった遺伝子の組み合せをもっていて、人間でも、一卵性双生児は別として、遺伝学的にまったく同じ人が2人存在することはありえないので、次の世代がうけついで利用できる遺伝子の総数は膨大で、遺伝的変異性の広大な倉庫を構成しているだろう。この倉庫を遺伝子プールとよぶ。有性生殖には、遺伝子がそれぞれの世代で再配列される、遺伝的組み換えとよばれる過程がある。個体群が安定しているときは、たとえ遺伝子が各個体でことなる組み合せになっていても、遺伝子頻度(遺伝子プールの中にある遺伝子の総数に対する、各遺伝子の出現度)は変化しない。もし、遺伝子プールの中で遺伝子頻度が変化しつづけると、進化がおこる。

進化をこうした観点から考えるために数学的手法を開発し、それをもちいて証拠を論じたにもかかわらず、多くの進化論者たちは1930年代後半まで、偶然おこる突然変異説に固執していた。そのころドブジャンスキーは、著書「遺伝学と種の起源」で、広範囲にわたる実験と観察の結果によって数学的論拠を補充した。たとえばショウジョウバエの大きな個体群に人為的に変化させた環境をあたえると、それに適応した遺伝的変化が生じることをしめした。ドブジャンスキーは、遺伝学の諸事実がダーウィンの自然選択説と矛盾しないことを証明してみせたのである。自然選択は遺伝子頻度に永続的な変化をもたらす主原因であり、これによって集団の形質が進化的な変化をおこすのである。その後の数十年間に、生物学および古生物学のほとんどすべての分野の研究の成果によって、ダーウィンの進化論はよみがえることになった。