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| I. | プロローグ |
太陽の内部でおこる核融合反応によって生成される膨大な放射エネルギーのことで、太陽は、毎秒3.85 × 10²³kW(→ ワット)のエネルギーを放出している。そして、フォトン(光子)とよばれる太陽から放射(→ 電磁放射)されたエネルギーをもつ粒子となって地球にとどき、大気による吸収や散乱などをうけながら地表に達している。太陽と地球は約1億4960万km(天文単位)はなれているため、地球に到達するエネルギーは、毎秒1.73 × 1018kWほどになる。
| II. | 太陽定数 |
太陽放射の強さは、太陽定数とよばれる値であらわされる。これは地球と太陽の平均距離(天文単位)において、太陽放射に垂直な単位断面積(cm²)当たり単位時間(秒)に入射する太陽エネルギーの総量でしめし、地球大気の吸収をさけて大気圏外でえられた値をもちいる。人工衛星による測定結果の平均値では、1.37kW/m²ほどである。なお、この値は、厳密には一定しておらず、長期間、たとえば黒点の11年周期などで変動している(→太陽の「組成と構造」)。しかし、30年で約0.5%ぐらいの変動であることから定数としてあつかわれている。
利用できる太陽エネルギーの量は、利用する場所の緯度や、季節、天候などによってことなる。さらに、太陽エネルギーを利用する装置などの種類や構造によってもことなっている。太陽は、エネルギーを放出することで1%質量が減少するのにおよそ1000億年かかることから考えてみても、ほぼ無限のエネルギーであるといえる。
| III. | 自然のエネルギー資源 |
地球に到達した太陽エネルギーは、地表面に達するまでに大気や雲などによって吸収、散乱されるので、太陽定数の約3分の2(約0.9kW/m²)に減少する。そして、約4分の1は、大気や海洋、植生によってエネルギー変換され、エネルギー資源として利用される。たとえば、風車は、太陽エネルギーと大気との相互作用の結果生じた風をエネルギー資源として、何世紀も前から利用されている。空気力学的に工夫された風車によって、あまり天候に左右されずに風力発電がおこなわれている。現在では、風力発電によってえられた電力は、特定地域のネットワークやコミュニティに供給されるまでになった。→ 市民風車
太陽エネルギーは、地球上の水の循環にも消費される。山間部への降水は、降水自体が位置エネルギーをもっているために下方にむかってながれだし、最終的にはそれらがあつまり川となる。水力発電は、このような水をダムに貯水し、水の自由落下による位置エネルギーを発電用タービンを回転させる運動エネルギーに変換させ、電力をうるシステムである。
太陽エネルギーのごく一部(約4.0 × 1010kW)は、緑色植物がおこなう光合成により炭水化物に姿をかえ、エネルギー資源となる植生(→ バイオマス)の成長をうながす。この炭水化物は、人類にとっても食料として貴重なものである(→ 食物連鎖)。しかも、数億年も前の植物やプランクトンなどの遺骸(いがい)は、石油や石炭、天然ガスなどにかわり、化石燃料として利用することが可能である。
地球に到達する太陽エネルギーのほぼ半分は、大気や陸地、海洋などに吸収され、これらの温度上昇にむすびつき、熱エネルギーへとかわる。たとえば、海洋が太陽エネルギーを吸収すると、海水の循環がおこり、海水中の温度勾配(おんどこうばい)が生じる。場所によっては、この垂直方向の温度勾配が、数百メートルで20°Cをこす場合もある。
ことなった温度の大量の海水が存在すれば、熱力学の法則により高温の物体から低温の物体へ熱が移動するため、エネルギーを発生させるサイクルをつくることは可能である(→ 熱力学)。これら2つの熱エネルギーの差から、タービンをうごかし、発電機をとおして電力をうることができる。このようなシステムを、海洋温度差発電(OTEC:→ 温度差発電)という。
| IV. | 太陽熱エネルギーの利用 |
太陽熱エネルギーを直接利用するためには、太陽光線を集光するための太陽熱コレクター(集熱器)を必要とする。集熱器であつめられた熱エネルギーは、蓄熱器や熱輸送系をへて利用されている。蓄熱器は、太陽熱エネルギーを気体や液体を利用して蓄熱するシステムである。一方、集熱器から蓄熱器へ、また蓄熱器から利用機器へと熱エネルギーを液体や気体などを媒体としてはこぶシステムを熱輸送系とよんでいる。
太陽熱の集熱器には、2つの基本的なタイプがある。ひとつは平板型、もうひとつは集光型である。
| 1. | 平板型 |
平板型では、集熱板の中を通過してながれる気体や液体などの流体に、太陽熱エネルギーをうけわたすというプロセスになっている。これらの流路を通過した流体の温度は、集熱板からの熱伝達をうけ上昇していく(→ 熱:熱の伝達)。太陽エネルギーから、流体中にとりこまれるエネルギー量は、集熱器の種類によってことなるため、瞬間の熱効率をパーセントでしめしている。また、最大の熱効率をえながら、集熱板からの熱の損失を最小限にするためにガラスなど光学的に透明なカバーを装着している。平板型集熱器の典型的な例では、40~80%の熱効率で流体を82°Cまで加熱することができる。ちなみに、真空に近い状態になったガラス管の中に集熱板をくみこみ、空気による熱の損失をおさえる工夫をした真空管型とよばれるものもある。
平板型集熱器の流体として、これまで多くの場合水がつかわれ、ほぼじゅうぶんな効果がえられていた。住居に応用された代表的な例は、太陽熱温水器である。これは、北半球では南側に、南半球では北側にむけておく。また、水平面と太陽熱温水器のなす傾斜角の最適値は、その場所の緯度に関係している。一般的に、年間を通じて、水平面と相対的になす角が緯度とひとしい、もしくは±15度以内、また、方位は北半球では真南、南半球では真北か、もしくは±20度以内が最適である。
それにくわえて、最適な太陽熱温水器のシステムでは、循環のためのポンプ、温度センサー(→ センサー)、循環ポンプを作動させるための自動制御装置と蓄熱装置が必要である。
| 2. | 集光型 |
一般的に、平板型では、じゅうぶんに温度を上昇させることができない。したがって、この方法では、エアコンやセントラルヒーティングといった空調、また産業用に使用するための莫大(ばくだい)な熱の供給をささえることはできない。そこで、流体の温度をさらに上昇させる必要がある場合は、ほかの方法によっておこなわれる。
平板型にかわる方法として、より複雑でかつより高価であるが、集光型の集熱器がある。集光型のうちで、小型の固定式のものは、セグメントミラーとよばれる平面鏡やパラボラ(放物線)形の放物凹面鏡、フレネルレンズ(→ レンズ)などを利用して集熱する。
一方、タワー集光型とよばれるものは大規模な装置で、太陽を追尾するためにヘリオスタット(多数のセグメントミラーからなる集合体)とよばれる装置をコンピューターで制御し、太陽光をタワー頭部にある光学的に焦点となる小さなエリアに集熱させ、熱媒体の温度を高温にする装置である。また、タワー頭部の集熱器のかわりに反射鏡をとりつけ、太陽光をヘリオスタットにもどし、2回集光してから地上の集熱器であつめるダブル集光型とよばれるものもある。このような方法をつかうことで、集熱部の温度は、摂氏数百~数千度にも達する。
| 3. | 太陽炉 |
太陽光をあつめ、数秒という短時間で高熱をつくりだす装置を太陽炉という。太陽追尾用のヘリオスタットで太陽光をうけ、その反射光を凹面鏡で集光する方式や、ヘリオスタットをつかわない直達方式など数方式がある。最高3000~3500°Cの高温がえられる。このような高温は他の方法では発生しにくいうえ、不純物の混入がほとんどなく、また、任意の気体中の試料を加熱でき、急加熱・急冷却が可能であるため、高融点の金属、耐熱材料など高温物性の研究に利用される。
ピレネー山中のフランス国立太陽エネルギー研究所の超大型太陽炉は、側面が直径54m、焦点距離18mの放物面で、これが約130m先の1840m四方の領域に9600枚の反射鏡があるヘリオスタット群(63基)の反射をうけて、温度約3500°C、1000kWを出力し、高温材料の開発に利用している。なお、太陽炉で世界最高の温度を達成したのは、東北大学の科学計測研究所(現、多元物質科学研究所)の太陽炉で、1962年(昭和37年)に3727°Cという温度を記録した。
| 4. | 太陽熱発電 |
太陽熱エネルギーを利用して発電をおこなう太陽熱発電には、タワー式やトラフ式などがあるが、タワー式では次のような手順で、太陽エネルギーを電気的なエネルギーに変換することができる。まず、集熱タワー(中央集熱器)に、コンピューター制御で動作しているヘリオスタットを経由して太陽光線を集光する。タワーの最上部には、給水管ではこばれた高架水槽があり、その中の水を集熱器でうけとった太陽の熱で水蒸気にかえ、発電タービンに供給する。日本で最初に、このような方法で太陽熱を大量に集熱してつかったのは、サンシャイン計画の一環として香川県仁尾町(現、三豊市)で実験された太陽熱発電である。1981年(昭和56年)に世界初の太陽熱発電をおこない、発電能力は、1000kWであったが、日本では散乱光が多く、経済性が低いと評価され、実験は85年に中止された。
現在稼働中で、世界最大の太陽熱発電所は、1985年から稼働しているSEGS(Solar Energy Generating Systems)プラントで、アメリカ・カリフォルニア州モハーベ砂漠にある。太陽熱のほかに天然ガスを補助熱源として利用しているが、総発電量は35万kWをほこっている。約1.7km²の広大な敷地に整然とならんだ集熱器(幅6m、長さ100m)は、湾曲した反射板の前におかれたパイプに集熱させて中の油を約400°Cにまであたため、その熱で蒸気タービンを回転させている。この方式はトラフ式とよばれるもので、タワー式が集中式とよばれるのに対し、分散式ともよばれている。
| 5. | 太陽熱利用の冷却システム |
太陽熱の利用は、暖房だけでなく冷却システムとしても利用されている。臭化リチウム水溶液をつかった吸収式冷房機では、臭化リチウム水溶液を沸騰または凝縮させ、気化熱によって冷却するようになっている。従来から石油やガスボイラーなどを熱源として利用されていたものを太陽熱におきかえたもので、100°C以上の高温水が必要なことや、複雑なシステムなために製造コストが高く、普及はしなかった。これに対し、空気中の湿分を吸収する乾燥剤(デシカント)を使用したデシカント式冷房システムは比較的簡単な装置で冷房ができるものとして注目されている。原理は、乾燥剤をしみこませたローターを回転させ、空気中の水分を吸着させる除湿行程と空気でローターを乾燥させる再生行程を交互にくりかえすようになっている。この場合、熱源として太陽熱を利用したヒートポンプ(→ 空調)が利用されている。
| V. | 太陽光エネルギーの利用 |
太陽光エネルギーの利用として代表的なものは太陽電池である。太陽電池は、太陽放射エネルギーを電気的なエネルギーに直接変換する光電効果を利用するもので、電池といっても電気をたくわえる機能はなく、日射強度に比例して発電をおこなう。材料としては、結晶系シリコン(単結晶、多結晶)、非結晶系シリコン(アモルファスシリコン)、化合物半導体(カドミウムとテルルの化合物CdTeやガリウムとヒ素の化合物GaAsなど)、有機半導体などが利用されている。
太陽電池の照射した太陽光エネルギーが電力になる率(光電変換効率)は、研究開発がはじまった1970年代からしばらくは10%程度が平均的だったが、現在では変換効率が30%をこえる太陽電池もつくられている。太陽電池の用途としては、住居用発電システムや、海洋ブイや宇宙船などの電力装置として利用される低電力のものから、大規模な発電プラントにまで拡大してきている。国際エネルギー機関(IEA)によれば、2005年の太陽光発電システムの累積導入量は、世界全体で3696MW(1メガワット=1000kW)と、1997年当時の10倍以上にまで急成長をとげている。そうした中、日本は2000年代初頭までは世界のほぼ半数を1国で占める太陽光発電大国であったが、04年に年間設置量(MW)、05年には累積導入量でもドイツにぬかれた。
| VI. | 太陽エネルギーの貯蔵装置 |
| 1. | ソーラーポンド |
太陽熱をたくわえる池という意味のエネルギーシステム。人工池にきわめて高濃度の塩水をいれ、その上に淡水をみたす。すると、底部の塩水の比重が大きいので太陽熱をうけても対流現象がおきず、熱エネルギーは底にたまる。そこで、底部の温かい塩水を外部に低流速でくみあげ、さらに熱交換器をとおして熱だけをとりだし、暖房、給湯、発電などに利用する。くみあげた塩水はふたたび池の底に低流速で静かに注入し、循環させる。一般にこのシステムでは太陽熱の10~20%が利用可能だといわれている。日本でも北海道網走市に1600m²のソーラーポンドがあり、温水供給などに利用されている。
| 2. | 太陽エネルギー利用の課題 |
太陽放射は、一日じゅうエネルギー源になるわけではないので、需要が少ないときには余分な太陽エネルギーをたくわえておく必要がある。
単純な水や岩石による貯蔵システムとくらべて、より小さな装置、たとえば低温で溶解する化学物質をつかったような特殊な方法がとくに冷却のために利用されるであろう。蓄電池は、風や、太陽光発電によってつくりだされた余剰な電気的エネルギーの貯蔵装置として役だつ。より一般的なものとして、太陽光の利用がふじゅうぶんである場合、余分な電気エネルギーを既存の電力ネットワークに伝送することもおこなわれている。しかしこのような計画の実施には、かならずその経済性、あるいは確実性の二者択一をせまられることになる。