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| III. | 有機化合物の化学式と化学結合 |
化合物をあらわす分子式によって、その物質の分子を構成する各種の原子の数がしめされる。たとえば、フルクトース(果糖ともいう)C6H12O6は、炭素原子6個と水素原子12個と酸素原子6個をふくむ分子からなっている。しかし、このほかに少なくとも15種類の化合物が、これとまったく同一の分子式であらわされるので、これらの化合物を区別するために原子の空間配置をしめす構造式が利用される。

分析によって炭素と水素と酸素の割合はわかっても、C6H12O6と、これと同じ1:2:1の元素比をもつもうひとつの糖であるリボースC5H10O5との区別はつけられない。
分子中の原子をたがいにむすびつけている力が化学結合であるが、これには、イオン結合、共有結合、金属結合の3種類がある(→ 化学反応:金属)。イオン結合は、プラスとマイナスの電荷がたがいにひきあう静電引力によって形成される。
共有結合は、2つの原子の間でたがいに電子を共有することによって形成される結合で、電子対結合ともよばれる。たとえば、ウェーラーの実験(図1)では、シアン酸アンモニウム中のイオン結合が、尿素では共有結合に変化している。
シアン酸アンモニウムでは、5つの原子からなるプラスの電荷をもったNH4+基と、3つの原子からなるマイナスの電荷をもったCNO-基との間にはたらく引力によって、イオン結合が形成されている。NH4+基の中では、NとHとをむすぶ4本の線が共有結合(電子対)をあらわしている。同様に、CNO-基と尿素分子の中では、原子をむすぶ線は共有結合をあらわしている。シアン酸アンモニウム分子に熱をくわえると、結合のしかたが変化する。
この例からもわかるように、炭素が共有結合を形成する能力は、1種類ではないのである。窒素と水素との間の結合も共有結合である。
しかし、炭素は他の炭素原子と、長い鎖状あるいは環状の共有結合を形成することができ、この点で他のすべての元素とことなる。炭素にはこのような性質と、またほとんどつねに他の原子と4つの結合を形成するという性質があり、これによって、炭素化合物の数がひじょうに多いことが説明される。知られている化合物の数は数百万もあるといわれているが、そのうちの少なくとも80%は炭素をふくんでいる。