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| II. | ラテックス |
パラゴムノキなどの植物にふくまれるラテックスには、直径0.05~2µm(マイクロメートル:100万分の1m)ほどのゴムの微粒子(ゴム炭化水素)がコロイドとして分散している。組成としては、水60%、ゴム炭化水素36%、タンパク質2%のほか、糖類や無機塩類などをふくんでいる。
天然ゴムは、ラテックスを加工して、あつかいやすいように固形にしたもので、生ゴムともいう。また、広く合成ゴムをふくめて加硫前の原料としてのゴムのことを生ゴムということもある。ラテックスは生ゴムの原料となるが、そのまま製品にもちいられることもあり、ゴム手袋や哺乳瓶(ほにゅうびん)のゴム乳首、気球の球皮(エンベロープ)、ゴム風船、避妊具などといった、うすいものや接着剤への用途が多い。
| 1. | 生ゴムの製造 |
採取されたラテックスは、濾過によってゴミや異物を除去したあと、水でうすめられる。これにギ酸や酢酸などの凝固剤をくわえて処理すると、ラテックス中に分散していたゴム炭化水素の微粒子が凝結し、白色の凝固物がえられる。凝固物には水分がふくまれるので、ローラーで圧力をくわえてしぼりだす。さらにローラーで数ミリのシートに成形し、木材の煙でいぶしながら50°Cくらいの温度をたもち、3~5日かけて乾燥させる。こうしてできあがるのが、スモークドシートとよばれる生ゴムのシートで、燻煙(くんえん)によって赤褐色に着色する。
また、ラテックスを亜硫酸水素ナトリウムNaHSO3で漂白し、強力なローラーで表面に細かな皺(しわ)のついた縮緬状(ちりめんじょう)のシートに成形し、熱風乾燥させると、ペールクレープとよばれる淡黄色の生ゴムシートができあがる。こちらは価格が高く、淡色のゴム製品など高級品にもちいられる。これらのシートを重ねあわせ、約50cm角の立方体にプレス成形したものをシートゴムとよんでいて、色調や異物の混入度により等級がきめられる。
一方、シートゴムとはちがい、凝固したゴムの小粒子(クラムという)をプレス成形により約70 × 40 × 15cmのブロックにしたものは、ブロックゴムとよばれている。こちらも使用する原料や含有物の多少により等級がきめられている。
| 2. | 構造と性質 |
生ゴムはイソプレンCH2=C(CH3)CH=CH2の分子が付加重合したもので、1つのイソプレン単位構造の中に1個の二重結合がある。この二重結合部分はほかの原子と結合しやすい性質をもち、とくに空気中に存在する酸素やオゾンと結合することでゴム特有の弾性がうしなわれ、劣化してしまう。生ゴムには約93~94%のポリイソプレンがふくまれているが、ほかに樹脂やタンパク質などをふくみ、平均分子量は約30万である。生ゴム中のポリイソプレンはシス–1,4結合で構成された規則正しい構造となっている。そのため、結晶性があり、分子が長くつらなっていることと、あいまって引張り強さや、耐摩耗性などの機械的な強度にすぐれている。
生ゴムは黄褐色をおびた半透明の固体である。0~10°Cの温度におくと、かたく不透明になり、液体空気の温度-190°Cでは、透明な固体となる。20°C以上ではやわらかく弾性をもつが、50°C以上に加熱すると弾性がうしなわれ、可塑性(→ 熱可塑性)と粘着性があらわれる。200°C以上に加熱すると、生ゴムは分解して融解する。
生ゴムは水や塩基(アルカリ)、弱酸(→ 酸と塩基)、アルコール、アセトンにはとけないが、ベンゼンやガソリン、四塩化炭素CCl4、二硫化炭素CS2などで溶解する。酸化剤で容易に酸化され、空気中でゆっくりと酸化されて弾性をうしない、もろくなる。そのため、通常のゴム製品に使用されるゴムは、5%程度の硫黄を添加して加熱した加硫ゴムである。
生ゴムではイソプレンの分子が線状に結合しているのに対し、加硫ゴムではゴムの分子間に硫黄原子による架橋結合(橋架け結合)が生じ、全体として網目状の結合をつくっている。そのため加硫したゴムは、強度と弾性が高まり、溶剤にもとけにくくなる。加硫ゴムは温度変化に対しても安定で、気体を透過しにくい。ただし硫黄の量が30~50%になるとゴムの弾性がうしなわれ、エボナイトとよばれるかたい固体になる。