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甲状腺
I. プロローグ

ほとんどすべての脊椎(せきつい)動物にみられる内分泌腺。喉頭の甲状軟骨の前面両側にあるので甲状腺とよばれる(内分泌系)。代謝と成長をコントロールするホルモンを分泌する。

II. 構造と分泌

ヒトの甲状腺は、赤褐色の器官で、重さはふつう約20g、右葉、左葉とそれをむすぶ峡部からなりたっている。立方体の上皮細胞(上皮)が、小胞あるいは濾胞(ろほう)とよばれる小さな袋をつくるようにならんでおり、結合組織が甲状腺全体の枠組みをつくってこの小胞をささえている。正常な甲状腺では、小胞の中にコロイド状の物質がつまっている。このコロイド状の物質はチログロブリンと、これにむすびついた2つの甲状腺ホルモン、すなわちテトラヨードチロニンともよばれるチロキシン(T4)と、トリヨードチロニン(T3)をふくむ。これらはアミノ酸であるチロシンに、ヨード原子がチロキシンでは4つ、トリヨードチロニンでは3つついてできている。

甲状腺から分泌されるチログロブリンの量は、脳下垂体の甲状腺刺激ホルモン(TSH)によってコントロールされる。TSHはさらに、視床下部から分泌される甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン(TRH)の調節をうける。チログロブリンにはとくにヨードがたくさんふくまれている。甲状腺は、重量はヒトの体重の約0.5%であるが、ヨード量では体全体の約25%を占める。これらのヨードは食物や食物中の水分から体にとりこまれ、無機ヨードとして血液中を循環し、甲状腺で血液濃度の500倍に濃縮される。

III. 甲状腺の病気

甲状腺の機能をテストするために、チロキシンとトリヨードチロニンの直接測定など、数多くのさまざまな臨床検査法がもちいられている。臨床的には甲状腺の結節の触診やこぶの有無をみる。甲状腺癌の発見、診断には放射性ヨードかテクネチウム99m(アイソトープの1種)による甲状腺スキャンがとくに役にたつ。甲状腺癌は進行がおそく、予後はよい。甲状腺は放射線に敏感だといわれている。1970年代には、若いころニキビ、たむし、扁桃腺炎などをX線で治療した人たちに甲状腺癌が多くみられた。

1. 甲状腺機能亢進症

甲状腺ホルモンが過剰につくられる病気は、甲状腺機能亢進症あるいはグレーブス病(バセドー病)とよばれ、代謝が高まり活動は活発になる。ときに眼球突出など眼の異常をともなう。治療には、メルカゾールやプロピルチオウラシルなど、抗甲状腺剤か少量の放射性ヨードを投与すると効果がある。放射性ヨードは、甲状腺に蓄積すると甲状腺組織をこわして効果をあらわす。見かけの甲状腺機能亢進症は、甲状腺細胞がこわれ多量の甲状腺ホルモンが放出されて生じることがある。橋本病では、甲状腺組織に対する自己抗体がつくられて甲状腺細胞がこわされる。自己免疫疾患

2. 甲状腺機能低下症

甲状腺ホルモンが欠乏する甲状腺機能低下症の特徴は、不活発、あるいは代謝の低下である。脳下垂体の病気が原因のこともあり、また甲状腺そのものの病気が原因のこともある。以前、アメリカの五大湖や内陸の山岳地帯でみられた甲状腺腫は、食事にふくまれるヨード不足がおもな原因となって、甲状腺機能低下症をおこしていたためとされている。いまでは予防のため食卓塩にヨードが添加されるようになっている。クレチン症という先天性甲状腺機能低下症は、遺伝的に甲状腺機能に欠陥のある病気で、およそ数千人に1人の割合で生まれる。