栄養
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栄養
II. 栄養素の働き

それぞれの栄養素の働きについてのべてみよう。

1. タンパク質

おもに体の組織や酵素やホルモンなどをつくる。消化酵素によってアミノ酸に分解され、小腸から吸収されて血液によって体の組織へはこばれる。

タンパク質は20種類のアミノ酸でできている。そのうち8種類は必須アミノ酸といわれ、体の中で合成することができないため、食物からとらなければならない。

さまざまな病気や感染症にかかると、体からでていく窒素の量がふえるので、タンパク質を多くとる必要がある。また、成長過程にいる赤ん坊や子供は、大人よりも体重1kg当たりにしてたくさんのタンパク質をとらなければならない。エネルギーとタンパク質の両方が欠乏するとクワシオルコルとよばれる栄養失調をおこし、体の脂肪や筋肉がうしなわれる。

2. 無機質(ミネラル)

体の構造をつくっている、かたい組織や、やわらかい組織をつくり、酵素系の働き、筋肉の収縮、神経の反応、血液の凝固などにも関係する(血液:神経系)。これらの無機質はすべて食事からとらなければならず、カルシウム、リン、マグネシウム、鉄、ヨウ素、カリウムなど体内での量が多いものと、微量元素とよばれる銅、コバルト、マンガン、フッ素、亜鉛などごく少量のものとの2種類にわけられる。

2.A. カルシウム

カルシウムは骨をつくってその硬さをたもったり、神経の興奮や筋肉の収縮を調節する。約90%以上が骨にたくわえられていて、そこからさらに血液や組織に吸収される。カルシウムは牛乳や乳製品に多くふくまれる。

リンも多くの食品、とくに牛乳にふくまれていて、カルシウムと結合して骨や歯をつくる。エネルギー代謝に大切な働きをしていて、炭水化物や脂肪やタンパク質の代謝にも関係する。

2.B. マグネシウム

マグネシウムはたいていの食品にふくまれ、代謝に欠かすことができない。神経と筋肉の細胞膜の電位をたもつのにも大切な働きをしている。栄養失調になっている人、とくにアルコール中毒症患者ではマグネシウムの欠乏により、震えや痙攣(けいれん)をおこすことがある。

2.C. ナトリウム

ナトリウムはほとんどの天然食品に、少しではあるがふくまれており、塩で味付けされた調理済み食品にはじゅうぶんな量がふくまれている。ナトリウムが多すぎると細胞外液がたまって浮腫をおこしたり、高血圧の原因となる。

2.D.

鉄はヘモグロビンをつくるのに必要だが、消化管からあまり吸収されない。女性には月経による出血があるため、所要量は男性より多く、欠乏症(貧血症)もよくみられる。

2.E. ヨウ素

ヨウ素は甲状腺ホルモンをつくるのに必要で、欠乏すると甲状腺腫になる。妊娠中の摂取量がたりないとクレチン症の子供が生まれることがある。世界で約1億5000万人の人がヨウ素欠乏症にかかっているといわれる。

2.F. 微量元素

微量元素は体の中にごく少量しかないが、健康をたもつためには絶対に必要な無機質である。どのような働きをしているか、くわしくはわかっていない。

銅は大切な微量元素で、多くの酵素の成分となっている。血液や脳や肝臓にふくまれ、また、不足するとヘモグロビンをつくるときに鉄を利用できない。亜鉛も酵素の重要な成分となっていて、欠乏すると成長がさまたげられ、ひどいときには小人症になる。フッ素はとくに歯と骨にたくわえられ、動物では成長に必要な元素となっている。また、フッ化物は骨からカルシウムが過剰にとけだすのを予防する。その他の微量元素にはクロム、モリブデン、セレンなどがある。

3. ビタミン類

酵素系にはたらいてタンパク質、脂肪、炭水化物の代謝をたすける。血液細胞やホルモンや神経系の化学物質や遺伝物質をつくるのに関係するビタミンもある。脂溶性ビタミンと水溶性ビタミンに分類され、脂溶性ビタミンにはビタミンA、D、E、Kが、水溶性ビタミンにはビタミンCおよびB複合体がある。

ビタミンAは上皮細胞の健康をたもち、正常に成長するために必要で、欠乏すると皮膚疾患、暗やみに目がなれない夜盲症、眼球乾燥症をおこす。眼球乾燥症は目が乾燥して結膜や角膜が厚くなる病気で、とくに子供では治療をしないと失明することもある。

ビタミンDはカルシウムとリンの吸収と代謝を調節するホルモンのような働きをする。欠乏すると子供ではくる病になり、大人では骨粗鬆症になる。

ビタミンEは多くの脊椎動物で欠かすことのできない栄養素であるが、ヒトでの役割ははっきりしていない。

ビタミンKは血がかたまるために必要なビタミンで、腸内の細菌によってつくられ、食物からも摂取される。

ビタミンCは結合組織をつくり、壊血病を予防する。

重要なビタミンB複合体はチアミン(B1)、リボフラビン(B2)、ニコチン酸(ナイアシン、B3)、ピリドキシン(B6)、パントテン酸、レシチン、コリン、イノシトール、パラアミノ安息香酸(PABA)、葉酸、シアノコバラミン(B12)などで、皮膚炎、下痢、中枢神経症状などをおこすペラグラや、脚気(かっけ)を予防する。

4. 炭水化物

ヒトでは、炭水化物はいちばん大きなエネルギー源で、デンプンと糖の2種類がある。余分な炭水化物はグリコーゲンかトリグリセリドに変換されて貯蔵され、炭水化物をあまり食べないときに利用される。

5. 脂肪

脂肪はエネルギーをたくわえるのに適しているが、先進国ではたくわえられすぎて肥満が深刻な問題となっている。動物性脂肪にたくさんふくまれている飽和脂肪酸はコレステロール値を高くし、植物性油や魚油にふくまれる不飽和脂肪酸はコレステロール値をさげるようにはたらく。

6. 食品の種類

食品は穀類、豆類、イモ類、野菜と果物、肉と魚と卵、牛乳と乳製品、油脂、糖類などの食品群にわけられる。

6.A. 穀類、豆類、イモ類

穀類には米、パン、麺類などがあり、デンプンを多くふくんでいてカロリー源になる。製粉した小麦や精米では栄養素は少ししかふくまれないが、胚芽をとっていない全粒の小麦や玄米には、繊維質やチアミン、ナイアシン、リボフラビンなどのビタミンB群、亜鉛、銅、マンガン、モリブデンなどの無機質がふくまれている。

豆類は、デンプンのほかにかなり多くのタンパク質をふくむ。イモ類はデンプンを多くふくみ、タンパク質は少ないがさまざまな無機質やビタミンをふくんでいる。

6.B. 果物と野菜

果物(果実)と野菜には、無機質やビタミンが多くふくまれる。また、野菜にふくまれるセルロースは、ほとんど消化されずにそのまま消化管を通過するので、腸の蠕動(ぜんどう)運動を刺激して食物の通過を促進する作用がある。野菜と果物にふくまれる水溶性のビタミンはこわれやすく、調理しすぎると簡単にうしなわれてしまう。

6.C. 肉、魚、乳製品

肉や魚や卵はすべての必須アミノ酸をふくみ、内臓にはビタミンや無機質もふくまれる。魚はタンパク質を多くふくみ、ビタミンDとAにも富んでいる。牛乳や乳製品は、タンパク質、リン、カルシウムを多くふくむ。牛乳にはビタミンは多いが、鉄はふくまれない。また殺菌によってビタミンCもうしなわれる。

6.D. 油脂と糖類

油脂はカロリーは高いが、バターと植物油以外は、無機質やビタミンなどの栄養をほとんどふくんでいない。糖類は、経済的に豊かな国では取り過ぎの傾向がある。ほとんど栄養素をふくまず、虫歯の原因となったり中性脂肪を増加したりする。

7. 食生活指針
7.A. 日本人の栄養所要量

現在の国民の健康がどのような状態にあり、栄養素がどのように摂取されているかを知るために、国民栄養調査を毎年おこなっている。厚生労働省はまた、「日本人の栄養所要量」を発表し、どのような栄養素を毎日どれだけ摂取すればよいかを性別、年齢別、生活活動強度別、妊産婦・授乳婦別にしめしている。5年ごとに改定がおこなわれ、最近では1999年6月に第6次改定がなされて(2000年4月~2005年3月まで使用)、従来の栄養欠乏症を主眼としたものから、過剰摂取にも対応した策定がおこなわれた。食事摂取基準として、必要量(所要量)とともに、過剰摂取による健康障害を予防するための栄養摂取量の上限値(許容上限摂取量)をさだめた。

生活習慣病を予防し、積極的に健康作りをするためには、ふだんから調和のとれた食生活をおくる必要がある。調和のとれた食生活とは、体に必要でバランスのとれた栄養素と、運動量にみあったエネルギーを食事をとおしてとりいれることである。そのためには、いろいろな食品を栄養のバランスよく食べる、必要なエネルギーだけをとるようにして太り過ぎを防ぎ体をよくうごかすようにする、脂肪をとりすぎないようにして動物性の油より植物性の油をとる、食塩をとりすぎない、食事はみんなでたのしく食べる、などが大切である。