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マグネシウム
I. プロローグ

銀白色の金属元素。アルミニウムよりも軽く、展性や延性にとんでいて、うすい箔(はく)や細長い針金にすることができる。マグネシウムは、アルカリ土類金属に属するが、化学的な反応性はそれほど高くない。1808年、イギリスの化学者デービーが、はじめて金属のかたちで分離した。マグネシウムという名前は、ギリシャのマグネシア地方からマグネシウム鉱石の滑石が産出することからデービーによって名づけられた。

元素記号Mg。原子番号12。原子量24.3050。周期表の2族に属する。モース硬度2.6。融点650°C。沸点1095°C。密度1.738g/cm³(20°C)。

II. 性質と存在

マグネシウムは、リチウム、ナトリウムについで3番目に軽い金属である。室温の空気中では比較的安定で、表面のみが酸化される。約800°Cに熱すると、まばゆい白色光を発して燃焼し、酸化マグネシウムMgOを生じるが、一部は空気中の窒素とも反応して窒化マグネシウムMg3N2となる。常温では水、塩基(アルカリ)と反応しないが、酸にはとけて水素を発生する。また熱水とは徐々に反応し、水素を発生しながら水酸化マグネシウムMg(OH)2となる。塩素などのハロゲン、硫黄、リン、ヒ素とは容易に反応する。マグネシウムの原子価は常に2価である。高温の環境では展性や延性が高まり、もろさがなくなる。

マグネシウムは金属元素としては、宇宙にもっとも多く存在する元素と考えられる。天然には、ほかの元素との化合物として存在し、カーナライトKCl・MgCl2・6H2O、苦灰石(ドロマイト)CaMg(CO3)2、マグネサイトMgCO3などの鉱物として産出する。そのほか火成岩の構成成分である橄欖石(Mg, Fe)2SiO4、滑石Mg3(Si4O10)(OH)2などのケイ酸塩としても存在する(ケイ酸塩鉱物)。海水や鉱泉水の中にも塩化マグネシウムがふくまれ、事実上無限の供給源となっている。

マグネシウムは、動植物の生命活動にとって必要不可欠な成分である。植物の光合成をになう葉緑素の中にもふくまれている。また、動物体内では骨格や体液の中に存在し、各種の酵素作用で重要な役割をはたす(栄養)。マグネシウムが欠乏すると、植物では葉が白くなり、動物では痙攣(けいれん)、刺激過敏などの症状があらわれる。

III. 製法と用途

おもな原料は、苦灰石などの鉱石と海水である。金属マグネシウムの地金は、おもに熱還元法と電解法によりつくられている。熱還元法のひとつピジョン法では、焼成した苦灰石とフェロシリコン(ケイ素鉄)との混合ペレットを高温真空の中で加熱し、ケイ素の還元作用によってできたマグネシウムを凝結させている。電解法では、おもに海水を材料に塩化マグネシウムをつくり、それを電気分解して精製する。熱還元法では高い純度がえられ、電解法は製造コストが安くつく。

炭酸マグネシウムMgCO3は、工業的に広く利用されるマグネシウム化合物で、マグネシウム塩の水溶液に炭酸ナトリウム(ソーダ)をくわえ、塩基性の沈殿物としてえる。耐火材、絶縁材のほか、医薬品、ゴム補強材として使用される。

塩化マグネシウムMgCl2は、工業的には酸化マグネシウムと塩素ガスの反応でつくられ、木綿や羊毛の仕上げ剤のほか、製紙工業に利用される。豆腐の凝固剤である苦汁(にがり)の主成分は、塩化マグネシウムである。

硫酸マグネシウムMgSO4・7H2Oは、肥料や緩下剤としてつかわれる。酸化マグネシウムは苦土ともよばれ、金属マグネシウムや炭酸マグネシウムの加熱でえられ、マグネシアセメント(セメント)の原料、耐火煉瓦、触媒、制酸剤や緩下剤などの医薬品に使用される。

金属マグネシウムを主成分とし、アルミニウムや銅などを添加したマグネシウム合金は、ひじょうに軽く強度がある。アルミニウム合金にくらべると耐食性はおとるが、より軽量であるため、とくに航空機、自動車用部品、義肢の部品など、軽量化が必要なものに利用される。また、酸素との結合のしやすさから、還元剤として金属鋳造に使用されている。