アリストテレス
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アリストテレス
III. 方法

あるものが何であるかということと、何からできているかということは、同じではない。前者が形相、後者が質料である。アリストテレスは、形相と質料が個物の中で密接にむすびついていて、両者は切りはなすことができないと考えた(形相と質料)。プラトンのイデアは、いわば質料から切りはなされた形相だから、アリストテレスはイデアをみとめない。たとえば、プラトンは個々のニワトリに共通するニワトリのイデアが、個物とは別に超感覚的な世界に存在するというが、アリストテレスはこうしたイデアの世界をみとめないのである。むしろアリストテレスはニワトリに共通の本性は、個々のニワトリの中に種の特性として存在していると考えた。それが形相である。

個体は、自分のうちにくみこまれた固有の型(形相)を実現するように成長変化する。たとえばニワトリの卵は、もちろんまだニワトリではないが、ニワトリになる可能性をもっている。自分の中にあるニワトリという形相を実現することが、個体の成長変化である。こうして、あらゆる自然物が、目的をもち目標をめざしながら変化していく。科学はたしかに一般的な種を研究するが、これらの種は個々の個体のうちでしか存在しえない。だから科学と哲学は、のちのいわゆる経験主義と合理主義のつり合いをとるべきで、どちらか一方の方法をえらぶべきではない、とアリストテレスは考えた。

アリストテレスの最大の哲学的業績のひとつは、原因について新しい考え方をしたことである。ソクラテス以前の思想家たちは、1種類の原因しかみとめなかったが、アリストテレスは4種類のアイテイオン(原因)があると考えた。ただし、アリストテレスがつかうアイテイオンという語は、日本語の「原因」とまったく同じ意味ではない。

これら4種の原因とは、質料因、動力因、形相因、目的因である。ものが何からできているかにこたえるのが質料因、何がそれの運動や発生や変化をひきおこしたのかにこたえるのが動力因、そのものが何であるかにこたえるのが形相因、何をめざすのかにこたえるのが目的因である。たとえば、1頭の小馬は、細胞組織と器官という質料因からできている。作用因はこの馬を生んだ両親である。形相因はその種、つまり馬ということである。目的因は、この小馬にくみこまれていて、それは大人の馬になろうとする本能である。

こうした例は人工物にも類比的に応用される。たとえばある彫像の質料因は大理石であり、作用因は彫刻家であり、形相因は彫刻家がいだいているヘルメスやアフロディテなどの形であり、目的因はできあがった芸術作品である。