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| I. | プロローグ |
広くは天体一般をさす。厳密には恒星をさす。重力によってまとまっている熱いガスからなる大きな天体を恒星という。惑星は太陽光を反射してかがやいているが、恒星は星の内部でおこる核反応をエネルギー源として、電磁波、とくに光を放出しておのずからかがやいている。太陽は身近な恒星である。太陽という唯一の例外をのぞくと、星は空に固定されていて、つねに空の中で同じパターンをえがいているようにみえる。実際には高速でうごいているが、星までの距離があまりに遠いために、星々の相対的な位置の変化は数世紀たたないと明らかにならない。
地球から肉眼でみえる星の数は約8000個といわれている。そのうち4000個が北半球から、残りの4000個が南半球からみえる。どちらの半球でも一度にみえるのは約2000個だけである。残りの2000個は昼間の空にあり、太陽の強い光によってかくされている。銀河系(→ 天の川)に属する星の数は数千億個と推定されているが、銀河系そのものが、数千億あるといわれる銀河のひとつにすぎない。空にみえる星は、銀河系の中でも太陽系のごく近くにある星だけである。
わたくしたちの太陽系にもっとも近い星は、ケンタウルス座にあるプロクシマ・ケンタウリ(→ アルファ・ケンタウリ)で、地球から約40兆km離れた所にある。光の速度によって距離をあらわす光年という単位をつかうと、この3重星までの距離は約4.29光年の距離にある。光の速度は秒速30万kmだが、この速度でも地球からこの星までいくのに4年3カ月以上もかかる。
| II. | 物理的にみた星 |
太陽は典型的な星で、光球とよばれる表面と、その上の熱いガスの大気、その上にもっと熱いコロナがあり、太陽風とよばれる粒子の流れをつねに放出している。太陽の黒点は光球の中のつめたい部分であるが、ほかの星にも黒点が存在することが、スペックル干渉法で推定されている。星の内部構造を直接観測することはできないが、対流層があること、熱核反応のおこなわれている中心核に近づくほど密度と温度が増大することがわかっている。星はおもに水素とヘリウムで構成され、さまざまな量の重元素もふくまれている。
| 1. | 最大の星と矮星 |
最大の星は超巨星で、直径が太陽の400倍以上もある。いっぽう、白色矮星として知られる星は直径が太陽の100分の1しかない小さな星である。巨星は大きいが密度がうすいので、質量が太陽の40倍くらいしかないが、白色矮星は小さいにもかかわらず密度がひじょうに高く、質量は太陽と同じくらいである。超巨大質量の星は太陽の1000倍以上も重いと考えられている。その一方で、質量が小さすぎて核反応をはじめることのできないガスの熱い塊もあると考えられている。このような星を褐色矮星とよんでいるが、その候補が1987年に最初に観測された。それ以来、ほかにもいくつか候補がみつかっている。
星の明るさは等級であらわされる。もっとも明るい星は太陽の100万倍も明るいと考えられている。白色矮星は太陽の1000分の1程度の明るさしかない。
| III. | 星表とカタログ |
肉眼でみえる比較的少数の星は古くから名前がつけられているが、ふつう、星は天文台が発行したさまざまな星表とカタログの番号でよばれる。最初の星のカタログはエジプトの天文学者プトレマイオスが2世紀に編纂した「アルマゲスト」で、1028個の星の名前と位置が掲載されている。1603年にドイツの天文学者ヨハン・バイエルによって星表がアウクスブルクで出版された。バイエルはプトレマイオスよりもはるかに多くの星を掲載し、星を星座とギリシャ文字や互いの位置関係であらわした。
18世紀にはイギリスの天文学者ジョン・フラムスティードが約3000個の星の星表を出版したが、星を文字ではなく番号と星座の名前でよんだ。1781年、フランスの天文学者シャルル・メシエが「メシエ星表」をつくった。1862年にドイツのボンで発行された最初の近代的な星のカタログ「ボン星表」には30万個以上の星の位置が掲載されている。
1887年、国際委員会が精巧な星のカタログの制作をはじめた。協力した約20の天文台で撮影された約2万1600枚の写真乾板をもとに、くわしい星のカタログが編纂された。このカタログには800万から1000万個の星が掲載されている。
近代の星のカタログは、本ではなく、視野のひじょうにひろい望遠鏡でとられたガラスの写真乾板の複写である。アメリカのカリフォルニア州パロマー山の1.22mmのシュミット望遠鏡をつかっておこなわれた最初の大調査は1950年代半ばに終了した。それぞれの写真乾板1枚には6 × 6度の空の領域がうつっており、パロマー山からみえる全天(北天)を1035枚の図で網羅している。これに相当する南半球(南天)の図が現在、オーストラリアとチリにあるシュミット望遠鏡をつかってつくられている。
| IV. | 星のスペクトルの分類 |
写真撮影による星のスペクトルの研究は、1885年にアメリカの天文学者、ハーバード・カレッジ天文台のエドワード・チャールズ・ピッカリングによってはじめられ、アニー・J.キャノンによってすすめられた。この研究から、スペクトルの中にみられる吸収線の相対的な強度にもとづいて、星のスペクトルを連続した系列にならべることができる、ということがわかった。系列にみられる変化は、星の年齢とその進化の段階について手がかりをあたえてくれる。
星のスペクトル系列は、O、B、A、F、G、K、Mという文字であらわされる。もとは、1890年出版の「ヘンリー・ドレーパー星表」にもとづき、見かけのスペクトルをABC順に分類していたが、温度系列順にならべかえたのである。スペクトル系列は全体にみられる水素の線の強度変化によって特徴づけられる。さらに段階がことなるとほかの元素のスペクトル線が目だってくる。各型はさらに0から9までの数字をつけて各クラス内で準区にわけられている。
| 1. | クラスO |
このグループは、水素以外にヘリウム、酸素、窒素のスペクトル線で特徴づけられる。ひじょうに熱い星で構成され、スペクトルには水素とヘリウムの暗線だけでなく、それらの輝線もふくまれている。
| 2. | クラスB |
このグループでは、準区分B2でヘリウムの線が最大の強度に達し、準区分の数字が大きいものになるにつれて弱くなっていく。水素の線の強度は準区分全体をとおして増加していく。このグループの代表的な星はオリオン座のe(イプシロン)星である。
| 3. | クラスA |
このグループは、強水素の吸収線がみられる。水素星とよばれる星であり、代表的な星はシリウスである。
| 4. | クラスF |
このグループは、カルシウムのHとKの線と、水素の特徴的な線がみられる星で構成されている。代表的な星はわし座のδ(デルタ)星である。
| 5. | クラスG |
このグループは、カルシウムのHとKの線は目だつが、水素の線はあまり目だたない星で構成されている。多くの金属、とくに鉄のスペクトル線もみられる。太陽がこのグループに属しているので、G星はしばしば太陽の星ともよばれる。
| 6. | クラスK |
このグループは、強いカルシウムの線と、ほかの金属の存在をしめす線をもつ星で構成されている。これまでにのべたクラスよりも、スペクトルの赤い光にくらべて青い光が弱い。代表的な星は、うしかい座のアークトゥルスである。
| 7. | クラスM |
このグループは、酸化した金属の分子、とくに酸化チタンの存在によって生じるスペクトル線をもつ星で構成されている。スペクトルの青の端はK星よりも弱い。代表的な星は、オリオン座のベテルギウスである。
これらの特徴は、各クラスの星はすべて似たような化学元素で構成されており、もっとも熱いものから冷たいものへとならべられているという結論と矛盾しない。それぞれのグループの星の表面の絶対温度は、ほぼ次のとおりである。クラスO5:4万5000K、クラスB5:1万5000K、クラスA5:8300K、クラスF5:6600K、クラスG5:5600K、クラスK5:4400K、クラスM5:3300K。平均的な星の中心部の温度は約2000万Kである。
| V. | 連星 |
空にある星の半分以上が、実際には連星系あるいは多重星系の一員である。太陽系の近くの連星のいくつかは望遠鏡をつかうと星が分離してみえることもあるが、多くは分光学的な方法によってのみ連星であることがわかる。連星系は、物理的に互いに近くにあり、共通の重心の周りをまわっている2つの星で構成されている。連星のいくつかは1803年にイギリスの天文学者ウィリアム・ハーシェルによって発見された。
| 1. | 分光連星 |
分光連星は1889年にはじめて確認され、望遠鏡をつかっても視覚的に分離してみえないが、星のペアが回転するにつれてスペクトル線が二重になったりひろくなったりするので確認できる。軌道をまわるにつれて、一方の星が地球から遠ざかり、もう一方の星が近づくと、遠ざかりつつある星からのスペクトル線は赤いほうにずれ、近づきつつある星からのスペクトル線は青いほうにずれる。→ ドップラー効果
| 2. | 食変光星 |
連星のもうひとつのタイプはいわゆる食変光星である。食変光星は明るい星と暗い星で構成され、暗い星が明るい星をかくすような軌道でまわっていると、星からやってくる光の強度が規則的に変化してみえる。
中くらいの大きさの望遠鏡でみえる星2、3個につき、1個は連星であることがわかっている。現在、何千という可視連星と何百という分光連星の研究が集中的におこなわれており、連星系は星の質量を知るうえで重要な情報源となっている。
| VI. | 変光星 |
太陽をふくむすべての星は、多かれ少なかれ周期的にその明るさをわずかに変化させているが、このような変化はほとんど測ることができない。しかし、明るさを大きく変化させる一部の星は変光星とよばれ、それには多くの種類がある。時計のように正確な周期で明るさの変化をくりかえす星もあれば、まったく不規則なものもある。もとの明るさにもどるのにわずか数時間か数日しかかからない星もあれば、何年も要するものもある。明るさが徐々にかわる星もあれば、はげしくかわるものもある。
| 1. | 新星と超新星 |
もっとも壮観な変光星は、新星である。新星は太陽の明るさの20万倍まで明るくなる。そして太陽の1万分の1ないし10万分の1に相当する質量を、秒速960kmにおよぶ速度でふきとばす。一部の新星はこの過程を周期的にくりかえしている。いっぽう、超新星は、名前は似ているがはるかに破壊的な現象であり、星の本格的な爆発であってくりかえすことはない。超新星はときには数日のうちに太陽の100億倍まで明るくなり、その後だんだんと暗くなっていく。そのあとには膨張する明るいガスの残骸(ざんがい)がのこされる。かに星雲がその一例で、1054年に超新星として観測された。残骸の中心にパルサーがのこされることもある。銀河系の中では新星はかなり頻繁にみられ、1年に1、2個観測されるが、超新星ははるかにまれである。銀河系内に出現したもっとも最近の超新星は1604年に観測されたものだが、1987年に近傍の銀河、大マゼラン雲で出現した超新星に多くの関心があつまった。→ 新星と超新星
| 2. | 星の光度と質量 |
多くの変光星は脈動する、つまり風船のようにふくらんだりちぢんだりすることで明るさを変化させている。ケフェウス座のδ(デルタ)星の名前をとってケフェウス型変光星とよばれるタイプの変光星は、明るさの周期を比較的正確にくりかえす。その周期は1日から数百日まであり、そのどれもが太陽の何百倍も明るい。ケフェウス型変光星は周期が長いほどその星の平均光度が高い。この周期と光度が関係することはハーバード・カレッジ天文台のヘンリエッタ・レビットが発見した周期とケフェウス型変光星の平均の見かけの明るさがわかれば、星の距離、とくに近くの銀河の星の距離をはかるのに役だつのである。超新星もまた距離の測定に利用することができる。最大光度がとてつもなく明るいので、宇宙のはるかかなたで出現したものでも観測できるからである。
変光星にとくに興味があつまるのは、星の加齢とともに内部構造に変化が生じ、それが光度の変化の原因となるからである。したがって変光星は星の進化についての情報をもたらしてくれる。たとえば超新星は、星が核燃料を燃やしつくした結果、重力崩壊をおこして爆発にいたったものである。
しかし食変光星は、内的な原因ではなく外的な原因で明るさが変化する。典型的な食変光星はペルセウス座のアルゴルである。アルゴルは、地球からみた角度にちょうど軌道平面がある、明るい星と比較的暗い星で構成された連星である。暗いほうの星が明るいほうの星をかくすと、見かけの明るさが急激におち、逆に明るいほうの星が暗いほうの星をかくすと、明るさがそれほど減少しない。天文学者は何千という食変光星を観測しているが、これらは星の質量を測定するのに役だっている。
| VII. | パルサー |
パルサーとよばれる電波パルス源がいくつも電波望遠鏡で発見された。パルサーの典型的な脈動周期は約1秒であるが、その周期の範囲は数秒から1秒の何十分の1まであり、光学とX線の観測で確認されている。脈動周期があまりに一定なので、正確な原子時計などでなければ、パルサーの脈動周期のわずかな増加を検出することができない。典型的なパルサーの周期が2倍になるのに約100万年かかるといわれている。
パルサーは直径が約10kmの回転する中性子星である。密度はひじょうに高く、ボールペンのボールほどの大きさでも、その質量は9万1000t以上にもなる。
| VIII. | 星の進化 |
星の形成と進化について多くの仮説がたてられてきた。星の進化の理論はおもに星のスペクトルと光度との関係の研究からえられたことを手がかりとしている。観測データから、もっとも明るい星がもっとも熱い星で、もっとも小さい星がもっとも冷たく暗い星である、という規則的な系列に星を分類できる。これらの星はヘルツシュプルング・ラッセル図(HR図)の中で主系列星とよばれている。この図はオランダの天文学者アイナー・ヘルツシュプルングとアメリカの天文学者ヘンリー・ノリス・ラッセルの研究から作成されたものである。主系列星のグループにはいらないのが、赤色巨星と白色矮星である。赤色巨星は直径が比較的大きな明るい星で、白色矮星は小さくて密度のひじょうに大きい暗い星である。
星は大きな比較的冷たいガスの塊として一生をはじめる。このガスが重力によってちぢむにつれて星の内部はしだいに熱くなっていく。星の中心核の温度が約1000万°Cになると核反応がおこり、水素の原子核が結合して不活性なヘリウム原子核を形成する。この反応によって大量の核エネルギーが放出され、重力による収縮の力に対抗できるようになると星の収縮はとまる。
| 1. | 主系列星の熱核反応 |
この熱核反応のあることが主系列星の特徴で、中心核の水素がすべて消費されるまでつづく。水素がもえつきてしまうと星の中心核はふたたび収縮をはじめるが、外層は逆にふくらみだす。星の中心核の温度がじゅうぶんに高くなると、ヘリウム原子核が核融合して炭素がつくられ、さらに炭素とヘリウムが核融合することで酸素もつくられる。この段階では大量の核エネルギーがふたたび放出されるために星の外層は膨張をやめ、収縮に転じる。ヘリウムがもえつきてしまうと、炭素と酸素からなる星の中心核はふたたび収縮をはじめ、外層は大きくふくらんで赤色巨星となる。質量が太陽の8倍くらいまでの星の場合、重力による収縮では中心核の温度があまりあがらず、新たな核反応がおこらないために、外層はどんどんふくらんで、やがて中心核と分離し、惑星状星雲となる。いっぽう、のこされた中心核は白色矮星となって、しだいにひえていく。白色矮星は最終的にはひえきった黒色矮星になると考えられている。太陽のような典型的な星は何十億年も長生きする。
しかし質量が太陽の8倍以上の星の場合は、星の中心核で次々と新たな核反応がおこり、新しい元素がつくられていく。進化が急速にすすみ、もっとも安定した元素である鉄がつくられると、これ以上の核反応はおきなくなり、星は不安定になって超新星爆発をおこす。あとには中性子星がのこされる。しかし中性子星の質量には限界があり、それより重くなると光さえもにげることのできないブラックホールになってしまう。惑星状星雲や超新星爆発によって、星の内部でつくられた水素よりも重い元素が宇宙空間にばらまかれる。したがって、重い元素をふくんだ物質から形成される次の世代の星は、前の世代の星よりも重元素を多くふくんでいる。
| 2. | 星の誕生 |
星の誕生は、オリオン星雲でみられるように、ちりの粒子と分子の存在に密接に関係している。水素分子(H2)は高温・高密度に圧縮されるためにばらばらになってしまう。水素原子はさらに収縮して星の中心核を形成し、それが周りの物質を重力でひきつける。熱い中心核が周りをとりまいていた分子の殻をとりはらうと、新しい星があらわれる。さらに重力収縮がつづくことで、温度は核反応がはじまるほど高くなる。星はふつう、大きな分子雲の端で小さなグループの一員として生まれてくる。新たな世代の星が次々と分子の端で生まれて、年代順にならんだ星の集まりがのこされる。
星の誕生は、何年にもわたって空の領域をとった写真の中で観測された。宇宙からくる紫外線と赤外線の観測と地上からの電波観測によって、星が形成されている場所と実際の過程が明らかになりつつある。→ 原始星