| 紙 | 項目ビュー | ||||
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| V. | 新しい機能をもつ紙 |
紙を機能や用途から分類すれば、印刷・情報用紙(印刷用紙やOA機器用紙など)、包装用紙(種々のクラフト紙)、衛生用紙(ティッシュペーパー、生理用品、紙おむつなど)、さまざまな工業用や家庭用の雑種紙、板紙(段ボールなど)の5つに大別することができる。最近では、基本的にはこの5つの分類のどれかに属しながら、これまでにはなかったまったく新しい機能や用途をもった紙が研究・開発されている。
| 1. | 高分子をつかう紙 |
1955年(昭和30)になって、ナイロン、ダクロン(→ ポリエステル繊維)、オルロン(→ プラスチック)をもとに、これらの繊維を木材パルプと混合したもので紙がつくられた。このような紙は従来の製紙機械で製造でき、ふつうの紙に似たものから織物に近い材料まで、幅広く利用されている。これらは、特異な性質をもっており、電気の絶縁体、空気清浄器のフィルター、録音用のテープ、作業靴、衣服の裏打ちなど、天然繊維の紙にはない多くの応用分野がある。
| 1.A. | 有機合成紙(プラスチックペーパー) |
プラスチックをつかう紙のうち、フィルム合成紙は、ポリスチレンやポリプロピレンなどを押し出し成型したのち、表面に白色顔料などをぬり、印刷や筆記をしやすくしたものである。耐水性、強さ、無塵性、防湿性などにすぐれ、多くの特殊分野で応用されている。水にぬれてもやぶれないという特質から、ポスター、地図、封筒などに利用されるほか、おりまげても広がりやすいフィルムでできているため、選挙の開票作業の効率化に、投票用紙としてもつかわれている。
高密度ポリエチレンの繊維を不規則につみ重ね、加圧熱接着するスパンボンド法による合成紙は、とくに耐水性があり、引き裂きに強く、耐磨耗性があり、軽く、不透明で発塵がないため、特殊な封筒やフロッピーディスク用の袋などにつかわれている。また、ポリプロピレン繊維を原料として、スパンボンド、メルトブローなどの方法でつくられる不織布(紙)は、強い耐水性とすぐれたドライ感があるため、紙おむつの表面材料に利用されている。
| 1.B. | 水解紙・水溶紙 |
通常のパルプを化学的に改質した、カルボキシメチルセルロース(CMC)は、パルプと糊の中間的な物質で、酸とアルカリでの処理をくりかえして紙にすることができる。こうしてできた紙は、印刷も加工もでき、水によくとける。
パルプや合成繊維などを、接着剤(バインダー)で結合させたものが不織布である。製法は紙と同様に、水を媒介させてつくる湿式不織布と、直接バインダーや熱処理で繊維を接着する乾式不織布の2つがある。バインダーが水などの溶剤に溶解するものであれば、水解紙や水溶紙ができる。このような紙は、医療分野あるいは機密保持用など、広い用途が考えられる。
| 1.C. | 高吸液性紙 |
紙タオル、紙ナプキン、ティッシュペーパーなどは、吸水性・吸液性をもっていなければならない。このような吸水性を高めたものが、紙おむつや女性の生理用品につかわれる高吸液性紙である。
ふつうの紙おむつは、肌にふれる部分がポリプロピレンやポリエステル繊維の多孔質不織布で、その下に綿状のフラッフパルプの層が、さらにその下に高吸水性高分子膜の粒子をまぜた層がある。次に薄葉紙があって、外もれをふせぐポリエチレンシートが重ねられる。紙おむつの高吸液性は高分子膜に秘密があり、これが自重の400倍以上もの液体を吸収する。→ ハイドロゲル
最近の紙おむつは、肌にふれる部分にはポリマーが使用され、吸収した液体を逆もどりさせないようになっている。この材料は、入り口の孔径が約1000µm(マイクロメートル:1000分の1mm)と大きく、出口の孔径が約300µm程度の漏斗型の孔を多数もつ疎水性の不織布をつかい、これをさらに表面処理して、吸液特性を高くしている。
| 2. | 無機材料を混入した紙 |
紙には、製紙の工程で填料(てんりょう)がくわえられるが、特殊な機能をもたせるために、特別な無機材料を混入したものもある。
| 2.A. | 鮮度を保持する紙 |
石灰とケイ酸を高温で焼成するか、機密容器にいれて高圧の水蒸気で熱すると、直径0.5µm以下、長さ10µm程度のゾノライト(ケイ酸カルシウム)の結晶が、鳥の巣のような形になる。このゾノライトは、800°C以上の耐熱性をもち、消火性があり、赤外線の放射率が高いほか、植物の成長と老化を促進するエチレンを吸着する。そのため、野菜や生花の鮮度保持に利用される。このほか、ゼオライトを添加した紙もエチレンの吸着性が高く、生鮮食料品の鮮度保持用にもちいられている。
| 2.B. | 酸化チタン内添紙 |
酸化チタンは、紫外線があたると自由電子を放出し、有機物を分解する光触媒機能をもっている。酸化チタンの微細な粒子を繊維表面に分散し定着させた紙は、タバコのヤニなどの汚れを分解するところから、内装材に利用されている。
| 2.C. | 無機繊維紙 |
ガラス繊維やセラミックス繊維(→ セラミック)、カーボン繊維、金属繊維などの無機繊維を応用した紙が開発され、高温や腐食性ガスの中でも耐久性のある、無機繊維紙がつくられている。ガラス繊維紙は、架橋型アクリル樹脂やエポキシ樹脂をバインダーとしてガラス繊維を結合させたもので、強度と電気絶縁性にすぐれ、加工が容易であるところから、プリント基板に利用するほか、床材や屋根材としてつかわれている。また、セラミックス繊維紙を段ボールのように加工したものは、触媒の坦体、熱交換機、除湿器、脱臭機などに利用される。→ 複合材料
| 3. | 記録紙 |
コンピューターなどの情報機器でつかう紙を記録紙といい、広い意味では、普通紙コピーの用紙や各種のレコーダーにつかう連続用紙もふくまれる。これらの紙は、機械で文字や画像を定着させるもので、寸法精度や特殊な性質が要求される。
| 3.A. | 感熱紙 |
コンピューターのプリンター出力やファクシミリの受信用につかわれる感熱紙は、表面に熱に反応して発色する材料を塗布し、印字装置にあるサーマルヘッドで、画像や文字を印刷する。サーマルヘッドは、微小な発熱体が集合した素子で、信号に対応して必要な部分が発熱する。
感熱転写紙というのは、クレヨンのように色のついたワックスを塗布した紙で、サーマルヘッドで裏から熱をくわえて、紙に印字したり、あらかじめ印刷してある画像などをアイロンで転写する。
| 3.B. | 感圧紙 |
感圧紙は別名ノーカーボンペーパーともいい、紙の裏に、マイクロカプセルという直径1~30µm程度の樹脂に発色剤をいれた粒子を塗布してある。ボールペンなどで文字を書くと、圧力でカプセルがやぶれ、下の紙に発色剤がつく。下にある紙の表面には、活性白土などの顕色剤という物質がぬってあり、発色剤にふれて色がでる。数枚重ねたものを、ドットマトリックス・プリンターで印字すると、一度で複写がつくれる。
インクジェット方式のプリンターは、水溶性のインクで印刷する。この装置につかう紙は、インクの吸収がはやく、耐水性があり、ドットを構成するインクの粒が、真円になることが要求される。インクが真円でないと、文字や画像の輪郭がくずれる。
| 4. | アラミド紙 |
ゴルフクラブや防弾チョッキなどに利用される、芳香族ポリアミド繊維は、高強度、高弾性率をもつ。その仲間のポリ・メタ・フェニレンテレフタルアミド繊維をつかったアラミド紙は、短繊維と微小結合分子(ファイブリッド)をまぜてすき、さらに高温高圧下で紙にしたものである。このアラミド紙には、高強度、耐熱性、難燃性があり、高い絶縁性もあるので、衣料用繊維に混紡し、消防服やカー・レース用スーツに利用するほか、絶縁材料、航空機のハニカム構造材としてつかわれている。
| 5. | 生体融合性のある紙 |
紙の繊維であるセルロースとよく似た構造をもち、昆虫や甲殻類の外殻成分であるキチンから繊維をつくり、これをすいた紙は、生体融合性がよく、薬理作用をもつため、医療用の紙としての用途が期待されている。コラーゲンなどからもこのような生体融合性繊維をつくることができ、人工皮膚から絆創膏(ばんそうこう)用のシート、臨床試験用の試験紙にいたるまで、さまざまな応用が考えられる。
| 6. | 電気・磁気特性をもつ紙 |
紙やフィルムシートに、酸化鉄などの磁気記録層を形成したり、すきこんだりした磁性紙はプリペイドカードなどにする。さらに、圧電フィルムを紙ではさんだペーパースピーカーも開発されている。超伝導物質になる粉末を、木材パルプや合成パルプとまぜてすき、焼結した超伝導紙は、実現すれば多孔質で大面積の超伝導体がえられる。また、ステンレス繊維、ニッケルめっきカーボンファイバー、銅とニッケルを2層コーティングした導電性繊維などをシート状にした電磁波シールド紙は、高いシールド効果をしめし、コンピューターをはじめとする電磁波の防護用になる。
| 7. | その他の新しい機能性紙 |
空気中の水分を可逆的に吸収・放出したり、アルカリを吸着する機能をもつ調湿紙が開発されれば、閉鎖空間で一定湿度を保存する能力が、博物館などの文化財保存に利用できると考えられている。また、極細ガラス繊維をもちいた高機能フィルター紙は、空気や液体の濾過(ろか)機能が期待できる。油と親和性のある繊維とない繊維で構成される油水分離紙は、その濾過機能が、油の精製、海洋汚染などの環境対策に応用できる。さらに、紙またはその繊維に酵素を吸着させ、それを化学結合によって固定させた酵素固定紙は、尿や血清など臨床化学検査での用途が考えられている。
このほか、感熱性液晶やクロミック材料を紙に混合し、一定温度で色が変化するサーモクロミック紙(温度感知紙)、光エネルギーをうけて発色するフォトクロミック紙、色相の変化で紫外線照射量を感知する紫外線感知紙などは、工業や農業の分野、医療分野、日常生活分野で、さまざまな用途が考えられる。また、パルプの3次元網目構造に無機粉末や金属粉末をポリマーなどのバインダーによって、多量に含有させた填料高含紙という紙があるが、これは含有させる粉末によって耐熱、脱臭、電磁波シールドなど、さまざまな機能を発揮することができ、今後さまざまな分野での用途が考えられている。
| 8. | 紙と資源、環境問題 |
原料がほとんど木材であるところから、大量の紙を消費することは、森林破壊をまねく。また、都市のゴミのうち70~80%はオフィスからといわれ、その処理も大きな問題である。
| 8.A. | 再生紙 |
ほとんどの紙は、利用後はゴミとしてすてられる運命にある。しかし、限りある資源からつくられた紙の中には、新たな製紙原料として再利用できるものも多い。森林破壊や地球環境の汚染をこれ以上増大させないためにも、古紙は重要な製紙原料として位置づけられる必要がある。現在、日本における古紙回収率は50%弱、オランダ、ドイツについで世界第3位。紙・板紙生産量に占める古紙配合率は50%をこえている(板紙だけでは84%程度)。
現在、日本でもっとも多く生産される新聞用紙の原料パルプのうち、40%程度は古紙の脱墨パルプである。この古紙脱墨パルプの製造では、まずプラスチック、金属片、石などの異物をのぞいた古紙をパルパーにいれ、アルカリと界面活性剤(脱墨剤)をとかした水をくわえ、撹拌(かくはん)する。つまり離解である。そしてパルパーの底からクリーナーにおくり、ふたたび金属片や砂などを除去し、熟成塔にいれる。この段階で、繊維が水をふくんでふくらみ、印刷インキや異物などがとれやすくなる。くりかえし、ターボセパレーターで異物をのぞき、フローテーター内で界面活性剤によって印刷インキを繊維と分離させ、最後に繊維を洗浄・漂白(過酸化水素による漂白)して脱墨パルプをつくる。
| 8.B. | 非木材紙 |
森林資源を保護するため、木材パルプを原料としない非木材紙が開発され、実用化されている。繊維をふくむ物質は、すべて紙の原料となる可能性があるが、木材パルプに匹敵する非木材繊維には制約がある。その条件は、資源としての安定性、製紙用の繊維としての適性、収率の良さなどである。現在、非木材紙として利用されているものには、古来つかわれてきた綿や麻のほかに、ケナフ(アオイ科の一年生草本)、バガス(サトウキビのしぼりかす)、海藻、竹、トウモロコシ、バナナなどがある。なかでもケナフとバガスは、すでに実用化されている。しかし、原料繊維に適合するよう抄造設備を整備する必要があり、生産量が少ないと、既存の原料にくらべコスト高になるという問題もある。