| 検索ビュー | ダイヤモンド | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
4月の誕生石。天然の物質の中でもっとも硬い。金剛石ともいう。みごとな光輝ゆえに、宝石の中でも王座を占めている。純粋な炭素の鉱物で、宝石以外にもさまざまな工業目的につかわれている。
ダイヤモンドdiamondという名は、ギリシャ語で無敵を意味するアダマスadamasに由来する。ギリシャ人はこの単語を、コランダムなどの硬い石すべてをさす言葉としてつかったようである。まちがいなくダイヤモンドだと思われるものについての記述がはじめてあらわれるのは、1世紀のローマの文書である。当時はインドが唯一の産地だったため、ローマ人に知られていたダイヤモンドも、インドからつたえられたものと考えられる。
| II. | カラットとグレード |
ダイヤモンドなど、宝石の重さはカラットという単位をつかう。1カラットは0.2gである。またポイントという単位をつかうこともあり、1ポイントは0.01カラットである。たとえば82ポイントの宝石は、0.82カラットということになる。
宝石としてのダイヤモンドの品質は、一般に「4つのC」によってグレードがきめられる。4つのCとは、カラットcarat、色color、カットcut、透明度clarityのことである。
宝石用のダイヤモンドの色は、無色またはそれに近いものである。ほとんど無色のものと、わずかに青みをおびたものとが最高とされるが、数が少なく高価である。多くは黄色みをおびたもので、価値がさがるのがふつうである。カットは、光が最高に分散するよう正確になされているかどうかが、評価の基準になる。カットの技術については下記参照。透明度については、傷や包有物の存在が重視される。
| III. | カットと仕上げ |
宝石としてのダイヤモンドの美しさをひきだすためには、わる、粗削りする、みがくなど、いくつもの工程をへなければならない。ふつうは、これをひとまとめにしてカットという。カットのおもな目的は、その石の光輝とファイア(後述の「性質と特徴」を参照。)とを最大限ひきだすことにある。しかし、ひび、傷、曇りなどの欠陥をとりのぞくことも大切である。そのうえで、もっとも大きく、うつくしく、あたえられた条件のもとで最大の価値をもつような宝石をつくりだすように、計画的にカットしなければならない。
カット工程のほとんどで、ダイヤモンド工具がつかわれる。「ダイヤモンドはダイヤモンドでカットする」ことが基本となっているのである。
| 1. | 原石の分割 |
はじめに、原石をよく検査する。経験をつんだ職人は、この検査でダイヤモンドの劈開面(へきかいめん:われやすい面)がどこかを判断し、欠陥部分をとりのぞき、できるだけ大きい石をえるのにもっとも適した割り方をきめる。原石を分割するには、クリービング(たたき割り)と、ソーイング(のこ引き)の方法がある。
クリービングでは、わる箇所がきまったら、別のダイヤモンドでそこに刻み目をつける。次にクリーバーズ・ナイフという重い鋼鉄製のにぶい刃をその刻み目にあて、軽くハンマーでたたいて、石をわる。わるための道具は単純だが、その使い方には高度な技術が必要とされる。たたき方が強すぎたり、方向をあやまったりすると、原石を粉々にしてしまうからである。
ソーイングでは、ダイヤモンドの微粒子と油をぬったうすい円盤を高速で回転させて、原石を切りわける。
| 2. | カットと研磨 |
カットの形は原石の形によってきめられるが、もっとも一般的なブリリアント・カットにする場合は、まずブルーティングという方法でまるく整形加工がほどこされる。これは、ダイヤモンドの切削用具をつかって旋盤上でおこなわれる。
次にファセット(切子面)の切出しと研磨をおこなう。この工程には、スカイフという水平に回転している鋳鉄製の円盤に、研磨剤としてダイヤモンド粉末と油とをぬったものをつかう。ダイヤモンドをドップとよばれる道具に固定し、ファセットができるまでダイヤモンドを円盤の表面におしつける。ついで、円盤の別の部分をつかって磨きをかける。この作業をくりかえして、次々に新しいファセットの切出しと研磨をおこなう。
ダイヤモンドは、全部で58面のファセットをもつブリリアント・カットという形にカットすることが多い。カットの形式については宝石を参照。
| IV. | 有名なダイヤモンド |
| 1. | 「偉大なアフリカの星」 |
世界最大のダイヤモンドとして有名なものは、「カリナン」である。1905年に南アフリカのプレミア鉱山で発見され、トランスバール植民地の政府からイギリス国王エドワード7世に献上された。カットする前の原石は3106カラットもあった。これをカットしてえられた105個のダイヤモンドの重量は、あわせて1063カラットになった。
なかでも大きいものは、ペアシェイプの有名な「偉大なアフリカの星」である。重量は530.2カラットあり、カットされた現存のダイヤモンドとしては世界最大である。イギリス王室の笏(しゃく)にセットされ、ロンドン塔内で永久展示されている。
| 2. | 「プレジデント・バルガス」 |
1938年にブラジルで発見された「バルガス」は、原石が726.6カラットあった。1945年に29個の宝石にカットされ、あわせて411カラットになった。その中で最大の48.26カラットでエメラルド・カットのものに「プレジデント・バルガス」の名がつけられた。
1934年、ほとんど同じ重さの726カラットの「ヨンカー」が、南アフリカのプレミア鉱山近くの砂鉱床でみつかった。今までに発見された大きなダイヤモンドの中で、色と純度が最もみごとなのがこの「ヨンカー」である。142.9カラットから3.53カラットまでの13個にカットされ、重量は合計695.10カラットになった。ほとんどがエメラルド・カットをほどこされている。
1967年には南アフリカのレソトで、「レソト」が発見されている。重さはカットする前で601.25カラットだった。これは18個、合計242.5カラットのダイヤモンドにカットされた。
| 3. | のろわれた「ホープ」 |
もっとも古いもので有名なダイヤモンドに、カットして240カラットあったといわれるインド産の「グレート・ムガル」がある。これは1650年ごろ発見されたとされているが、17世紀末までに行方不明になってしまった。これが再カットされて、イギリスの女王の王冠の中心にセットされた108カラットの「コーイヌール」になったとか、あるいはロシアのエカチェリナ2世におくられ、笏(しゃく)にセットされた195カラットの「オルロフ」になったと考える研究家もいる。
また、17世紀にルイ14世が手にいれたブルー・ダイヤモンドの「ホープ」は、不幸をもたらした宝石として知られており、処刑されたマリー・アントワネットもそれを身につけたとする説もある。「ホープ」は、現在ではアメリカ合衆国のスミソニアン博物館の所有になっている。
| V. | 性質と特徴 |
モース硬度で10という最高値をあたえられており、もっとも硬い物質の基準となっている(→ 硬度)。ただし、ダイヤモンドの硬度はどこでも一定というわけではなく、ひとつのダイヤモンドでも、結晶の面の方向によって硬度がかわる。また同じ面でも、けずる方向によって硬度はことなる。
| 1. | 輝きの秘密 |
宝石としてのダイヤモンドの価値を高めている特徴は、光輝(ブリリアンシー)とファイア(7色の光をだす性質)である。これは、光学的性質である屈折率と分散性が、天然の無色透明の石の中でもっとも高いことによる。つまり、屈折率が高いので、適切な角度に面をカットすると、外からはいった光がすべて内部で反射して、ふたたび外にでてくるようにできる。そのために、他の石にはない光輝があらわれるのである。また、光の分散性が高いために、白色光が虹色(にじいろ)に分離されやすく、石をただしくカットしたときに、虹色のきらめき(ファイア)をみせるわけである。
なお、ダイヤモンドの中には、日光や紫外線をあびるとリン光(燐光)をだすものがあり、その色はあわい青であることが多いが、黄、オレンジ、乳白色や赤色の蛍光をはなつものもある。→ ルミネセンス
| 2. | 結晶としての性質 |
ダイヤモンドの結晶は、等軸晶系である。八面体と斜方十二面体の結晶がもっとも多いが、まるくなったり、ゆがんだりしているものもある。ダイヤモンドの結晶は、つねに、八面体の面に平行な平面できれいにわれる。比重は3.515である。天然のダイヤモンドは、透明度や色がさまざまであるが、よい宝石になるものはすべて透明である。色がついたダイヤモンドには、炭素以外の元素が少しふくまれている。
| 3. | 高い熱伝導率 |
ダイヤモンドの重要な性質として、熱をよくとおすが、電気はとおしにくいという性質がある。このすぐれた特徴を利用して、人工のダイヤモンド薄膜の上に集積回路をつくる方法が開発されている。集積回路に電流がながれるときにでる熱を、はやくにがすための放熱板として利用する。
ダイヤモンドは酸やアルカリに強いが、空気中など酸素の存在するところで熱すると800°C程度でもえてしまい、二酸化炭素になる。
| VI. | ダイヤモンドのできかた |
ダイヤモンドができる仕組みは、まだ完全にはわかっていない。しかし、炭素がこのような結晶をつくるためには、高熱と高い圧力とが必要だったことは確かである。おそらく、地下の深い所の、とけた岩石(→ マグマ)の中でできたものと考えられる。その後で、ダイヤモンドをふくんだ物質が上昇しながら、キンバーライトのじょうご形の管状鉱脈であるパイプをつくっていった。ダイヤモンドは橄欖岩の中でできるようだが、できた場所からはなれた砂鉱床でとれることも多い。ときには、砂岩、礫岩(れきがん)などの堆積岩の中からみつかることもある。
| VII. | 産出 |
インドでは紀元前から採掘されている。1867年、南アフリカのオレンジ川の近くで、あるボーア人が子供のあそんでいる石をみて気になり、鑑定してみると、これが21カラットのダイヤモンドの原石だった。このときから南アフリカでの鉱山開発がはじまり、現在では世界最大のダイヤモンド産出地となっている。はじめはオレンジ川とバール川の砂礫層からダイヤモンドを採集していた。その後、今のキンバリーの近くで「イェローグラウンド」が発見され、開発ラッシュに拍車がかかった。イェローグラウンドというのは黄色の粘土の土壌であり、ほぼまるい形をした部分(大きいもので直径1km)からダイヤモンドがみつかった。
さらに、もっと深い部分に青みがかった硬い岩石があることがわかり、これもダイヤモンドをふくんでいた。この「ブルーグラウンド」は、鉱物としては橄欖岩の一種であるキンバーライトといわれるもので、黄色の土はこれが風化したものだった。さらに採掘をすすめるうちに、まるいイェローグラウンドの部分は、キンバーライトのじょうご形のパイプの頂部にあたり、地下深くへとキンバーライトがつづいていることがわかってきた。その深さは、まだ確認されていない。同じようなパイプが、南アフリカの他の場所でも多く発見されているが、そのすべてがダイヤモンドをふくむわけではない。
アフリカの他の地域のダイヤモンド鉱床はほとんどが砂鉱床で、タンザニア、コンゴ民主共和国(旧ザイール)、ガーナ、シエラレオネなどでみつかっている。オーストラリア、カリマンタン(ボルネオ)、ウラル山脈、シベリア、ベネズエラ、ガイアナでも発見されている。インドは、かつては世界で唯一のダイヤモンド産地だったが、今日では、礫岩層と1カ所のキンバーライト・パイプから産出されるだけで、量は少ない。ブラジルでは、ダイヤモンド鉱床がさまざまな場所にちらばっている。ミナスジェライス州ディアマンティナの近郊に1カ所、バイア州に1カ所、その他は中央ブラジル南部である。ブラジルの鉱山は、おもに工業用ダイヤモンドを産出している。
| VIII. | 人工ダイヤモンド |
| 1. | 模造ダイヤモンド |
ダイヤモンドは高価なので、模造品も多くつくられた。古くは、鉛ガラスでつくるものがあった。ガラスの模造品をみわけるのは、簡単である。本物のダイヤモンドは熱伝導性がよいため、さわるとひんやりするが、鉛ガラスの模造品はさわるとあたたかく感じる。本物のダイヤモンドはX線をとおすが、模造品はX線をとおさない。石英の透明な結晶である水晶をブリリアント・カットにしたものも、本物のダイヤモンドでひっかけば傷がつく。
ジルコンは、光の分散が強く、熱処理をすると無色に近くなる。見た目はダイヤモンドによく似ているので、かつてはイミテーションによくもちいられた。これも、やはりダイヤモンドでひっかけば傷がつく。近年では、キュービック・ジルコニアという、ジルコニウムとイットリウムからつくられる合成物質がつかわれる。
| 2. | 合成ダイヤモンド |
1955年、アメリカ合衆国のゼネラル・エレクトリック(GE)社がダイヤモンドの合成に成功した。方法は、炭素粉をタンタル、コバルト、ニッケルなどの溶媒の金属にとかしこみ、高温・高圧下で結晶を生成させる、というものだった。GE社の発表後、スウェーデンのASEA社が、2年前の53年に、やはり高温・高圧法によるダイヤモンドの合成に成功していたことがわかった。
日本では、1962年、ニッケル・ゲルマニウム合金を触媒につかって合成に成功している。
合成法には、高温・高圧法のほかに、石墨に衝撃波を作用させて短時間で合成する衝撃波法もある。また、高温・低圧下で、炭化水素と水素などの混合ガスをつかって種結晶の上にダイヤモンドの薄膜を生成させる方法が開発されている。
現在、大量生産されている合成ダイヤモンドは、数分の1ミリメートルの小さいもので、もっぱら工業用に利用されている。1970年、GE社が1カラットの宝石用ダイヤモンドの合成に、実験室レベルで成功した。現在では、数カラットのものが技術的には合成できるが、コストの面でまだ実用化にいたってはいない。
| IX. | 工業用ダイヤモンド |
もっとも硬い物質であるところから、研磨剤としての用途が多い。研削用砥粒や切削工具などにも多用される。人工のダイヤモンド薄膜は、切削用のほかに、半導体素子(→ 半導体)の放熱材などにつかわれている。