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| III. | ナショナリズムの勃興 |
フランスでは、国王が市民階級と連携し地方諸侯をおさえて中央集権をはかり、国家の統一とよびうるような状態を形成していた。イギリスの歴史学者E.H.カーはこれを「前期的ナショナリズム」と称している。
近代ナショナリズムとよぶに値するものがあらわれたのは、市民階級がたちあがり中世の身分制を廃し、主権在民の思想にもとづいて近代国家の建設をおこなって以降のことである。1789年のフランス革命とナポレオンの遠征、その後各地で発生した革命などの一連の出来事が、ヨーロッパ大陸に主権在民による近代国家建設の基礎をもたらしたのである。しかし、これはあくまでも国家建設の基礎であり、これによって国民国家が形成されたわけではない。たとえば、フランスでは地域ごとに言語や習慣などがいちじるしく相違しており、近代における学校教育制度や徴兵制の整備、印刷文化の浸透などをとおして、国語としてのフランス語を普及させることが可能になり、さらに第1次世界大戦が契機となって、しだいに国民としての同胞意識が形成されていった。ヨーロッパ大陸全体においては、第1次世界大戦後、アメリカ大統領のウィルソンが民族自決をとなえ、それによって多くの国々が新しく誕生したこと、およびその当時印刷文化が普及していたことなどが、ナショナリズムの形成に大きな影響をあたえたのである。