| 検索ビュー | トウモロコシ | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
食糧や家畜の飼料としてひろく栽培されるイネ科の一年草。トウキビともいう。小麦、米とともに世界の三大穀物のひとつ。
| II. | 形状 |
ほかのイネ科の草の茎が空洞なのに対し、トウモロコシの茎は直立して密でかたい。草丈は種によって大きくことなり、矮性(わいせい)種は成長しても60cm以下で、大きくなる種は6m以上にもなる。葉は互生し、長くて細い。主茎の先端には雄性花序すなわち雄花穂(→ 雄花)がつく。穂は小穂(しょうすい)とよばれ、たくさんの小花からなり、小花にはそれぞれ小さな葯(やく)がついていて、そこに雄性配偶子である花粉粒ができる。
雌花穂(→ 雌花)は独特の構造をしていて、穂軸とよばれるかたい核に数千個の小花がつく。穂は、葉が変形した苞葉につつまれている。穂の先端からつきでている絹糸といわれる毛状のものは長くのびた雌蕊(めしべ)の花柱で、それぞれが子房に達している。風ではこばれた花粉は、絹糸の上におちるとそこで芽生え、花柱を下にたどって子房にいたる。受粉した子房は、成長して殻粒となる。
| III. | 歴史 |
トウモロコシは新大陸原産で、ヨーロッパ人がやってくるまで何世紀もの間、主要穀物だった。起源は謎(なぞ)につつまれているが、考古学的および古植物学的成果によると、アメリカ南西部には少なくとも3000年前にはトウモロコシの栽培種が存在していた。野生のトウモロコシは、かつては7000年前にメキシコ南部のテフアカン渓谷に存在したと考えられていた。しかし最近の研究では、4600年前ごろはじめて渓谷に出現したことが明らかになっている。初期の野生種は、基本的にほとんど現代のトウモロコシと同じ構造をしていた。
日本へは16世紀の後半にポルトガル人によってつたえられ、南蛮船がはこんできたことからナンバンキビとよばれた。江戸時代にはいって栽培はひろがり、とくに水田や畑地が少ない地域で、重要な食糧となっていった。まだ稲作ができなかった北海道では、明治初年に開拓使がおかれ屯田兵が移住したとき、トウモロコシの新種をアメリカから導入して栽培を開始した。それが発達し、重要な農産物となって今日におよんでいる。
| IV. | 品種 |
トウモロコシには数多くの品種があり、性質も多様である。ある品種は2カ月で成熟するが、11カ月かかる品種もある。葉は淡緑色から濃緑色まであり、それに茶、赤、紫の色素がくわわる場合もある。成熟した穂の長さは、10cmにみたないものから50cmのものまである。殻粒の列も8列から36列余までさまざまである。殻粒の特徴によって、大きく6つの仲間に分類される。
トウモロコシを栽培する世界各地の農場ではデントコーン(馬歯種トウモロコシ)という品種がもっともよく栽培される。殻粒の側面はかたい角状デンプンからなり、冠部はやわらかいデンプンからなる。粒が成熟するにつれてやわらかい部分がちぢみ、特徴的なへこみができる。
フリントコーン(硬粒種トウモロコシ)は、角状デンプンが殻粒の上部すなわち冠部にまでひろがり、したがってへこみはない。低温でも受粉できるため冷涼な気候に適し、またゾウムシに対して抵抗力があるため熱帯にも適する。
ポップコーン(爆裂種トウモロコシ)は世界の子供や若者に人気の高いスナックだが、ひじょうにかたい小さな殻粒をもつフリントコーンの変種である。熱すると殻粒の水分が膨張し、はじけてひらく。
フローアコーン(軟粒種トウモロコシ)は、やわらかく濃度のうすいデンプンを多くふくみ、粉にひきやすい。南アメリカのインカ帝国があった地方でよく栽培されている。
スイートコーン(甘味種トウモロコシ)は、アメリカでは人間が食用する野菜として一般に栽培されている。糖分はほかの種とことなり、生長過程でデンプンにかわらない。成熟するまで放置すると、種子に特徴的なしわがよる。
ポッドコーン(有ふ種トウモロコシ)は食用されることはほとんどなく、観賞用として栽培される。殻粒は1つずつ小型の殻につつまれている。もうひとつの観賞用トウモロコシは一般にインディアンコーンとよばれ、フローアコーンとフリントコーンの色をあわせた多彩な品種である。
日本で、フローアコーン、スイートコーン、ポッドコーンは、ほとんど栽培されていない。
| V. | 育種と栽培 |
トウモロコシの栽培でもっとも大きな画期は、1933年ごろに交配種がまずアメリカで、ついで世界各地に導入されたことである。植物学者は何千種もの交配種からアメリカの農業地帯のどんな土壌、気候にも適する1、2の品種をつくりだした。長い間、普通種あるいは標準種とされた自然受粉品種は自家受粉するトウモロコシで、のぞましい性質をもつ種をえらんで育種されてきた。自家受粉の系統種は弱いが、慎重にえらんだ2つの系統を交配すると、元の品種よりずっと生産的になることがある。→ 品種改良
缶詰・冷凍業界では、このような2つのことなった系統を交配した一代雑種トウモロコシ(ハイブリッドコーン)をつかっている。農家でつかう交配種の大半は二代雑種トウモロコシで、2つの一代雑種を交配してできた品種である。最近では農家も、より多収量のものができるという理由から、一代雑種も利用するようになってきている。
交配種のすぐれた生長力は子孫にはつたわらないので、新しい交配種をつくるためには親株を毎年交配しなければならない。これをおこなうのが、種苗会社や交配種子の生産を専門とする農家である。交雑育種で種子の価格はあがるが、改良種はそのコストにみあうだけの収量をもたらす。25~50%もの収穫高の増加は、交配種を利用したためである。
また1978年には大きな発見があった。絶滅したと考えられていた野生種の多年生トウモロコシが、メキシコで発見されたのである。これは、毎年種子をまく必要のない品種の開発の母体になる可能性がある。
トウモロコシは炭水化物のすぐれた供給源だが、タンパク質の含有量と質は低い。したがってトウモロコシを主食とする場合、成長を十分なものにするにはタンパク質をふくむ食物で栄養をおぎなう必要がある。ふつうのデントコーンの中にあって粉質内胚乳を変化させるオペーク2、フローリー2として知られる突然変異遺伝子は、2つの必須アミノ酸、トリプトファンとリシンを増加させることが解明されている。これらはトウモロコシのタンパク質に不足しているアミノ酸である。トウモロコシにこの遺伝子のどちらかが存在すると、いわゆる高リジントウモロコシとなり、人間用の脱脂粉乳にも匹敵する栄養価がえられることになる。
この種のトウモロコシを豚にあたえると、ふつうのトウモロコシを食べている豚の3倍の早さで成長する。現在、世界じゅうの育種家が、これらの遺伝子を交配種およびその親株に移植している。これは、交配種の発見にも匹敵するといわれている。
| VI. | トウモロコシの害虫 |
トウモロコシには多くの寄生虫や害虫がある。ある種の菌は根、茎、穂をくさらせ、収穫高や品質に大きな被害をあたえる。黒穂病は寄生細菌(→ 黒穂菌)がひきおこすもので、穂や茎、雄花の穂などに菌糸体(→ 菌糸)の大きなかたまりをつくる。成熟するにつれて、胞子の黒いかたまりが大きくなる。
数種の菌に汚染されると、葉に病変がおこり収穫高がおちる。矮小(わいしょう)モザイク病と萎縮病は、どちらもヨコバイによって感染するウイルス性の病気である。生長初期にこのウイルスに感染した場合、収穫量の減少は深刻となる。ヤガ科のガは殻粒を食べ、アワノメイガはおもに茎をおそう。近年ではウリハムシの幼虫が生長段階の根を食いあらし、大きな被害をもたらしている。
| VII. | 生産と消費 |
1990年代前半のトウモロコシの世界生産量は、年間4億6900万tだった。生産量からみると、トウモロコシはコムギ、米についで第3位である。80年代には約11%の生産量増加が実現したが、それは肥料・除草剤を大量につかった集約栽培によるものである。アメリカはトウモロコシの主要生産国で、世界生産量の40%以上を占める。大部分はコーンベルト(トウモロコシ地帯)とよばれる中西部のオハイオ、インディアナ、イリノイ、アイオワ、ミシシッピ、カンザス、ネブラスカの各州で栽培されている。そのほかの主要な産地は中国、ブラジル、メキシコである。日本の生産量はごくわずかで、作付面積はきわめて少なく、消費のほとんどを輸入にたよっている。
アメリカの農家が出荷するトウモロコシの61%が、飼料として利用されている。その約半分は直接、豚や牛、鳥にあたえられ、残りの半分は混合飼料につかわれる。その他、アメリカが生産するトウモロコシの22%は輸出用である。残りの17%が食物として売られ、またアルコールや蒸留酒、シロップ、砂糖、コーンスターチ、乾燥加工食品の製造につかわれる。
トウモロコシの穂軸は、合成繊維、プラスチックの製造などにつかう液体フルフラールの重要な原料である。穂軸をすりつぶしたものは、やわらかめの研磨剤として利用される。特種なタイプのトウモロコシ、コブパイプコーンの大きくまるい穂軸は、タバコ用のパイプとしてつかわれる。コーン油は胚芽から抽出したもので、調理油やサラダ油として利用され、マーガリンにも加工される。その他、ペンキ、石鹸、リノリウムの製造にも利用される。
新しいエネルギー源をさぐる研究では、トウモロコシが燃料源として注目されている。糖分が高いトウモロコシを発酵させてアルコールをつくり、ガソリンとともにガソホールとしてもちい、また乾燥した茎はバイオマスとして重要性をもつ。
分類:イネ科トウモロコシ属。トウモロコシの学名はZea mays。絶滅したと考えられながら、メキシコで発見された多年生の野生種はZ. diploperennis。