| 検索ビュー | 受精 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
2つの配偶子の核物質の融合の結果、接合子あるいは胚を形成すること。細菌、藻類、および他の一部の下等生物では、この種の融合は接合とよばれ、2つの細胞間の遺伝物質の交換あるいは転移によるか、2つの細胞が1つに融合することによって生じる。大半の高等生物では、生殖はことなる配偶子つまり雌雄の異性配偶子の結合の結果である。受精という言葉は、ふつうこの過程を記述するのにつかわれる。
雌性配偶子は卵(らん)、卵子、または雌性胚細胞などとよばれ、比較的大きく、栄養(卵黄のほか卵白をもつこともある)を貯蔵し、ふつう自動力はない。雄性配偶子は、精子、精虫、雄性胚細胞などとよばれ、小さくてほとんど栄養の蓄えはなく、中心体をもっていて一般に自動力がある。典型的な配偶子は1揃いの染色体をもち、単数体または半数体とよばれる。融合から生じる接合子は2組の染色体をもち、複相体または2倍体とよばれる。
| II. | 他家受精、交雑受精、交配 |
ことなる個体が生じた精子と卵による受精は、大部分の種類の動植物の特徴となっている。この型の受精は、遺伝子の組み換えによって幅ひろい多様性がえられる点でひじょうに重要である(→ 遺伝学)。自家受精、つまり同一個体に生じた精子と卵による受精では、新しい遺伝形質が導入されないため多様さが限定される。動植物の大半の種は雌雄異体で、精子と卵は別々の個体で生産される。雌雄同体種では精子と卵は同一個体でつくられるが、このような種では精子と卵の発達時期がことなっていたり、ミミズなどにみられるように、生殖器官の配列と交尾方法によって自家受精しないようになっている。
雌雄両方の遺伝細胞は、受精がうまく実現されるような成熟段階になければならない。同一種あるいは近縁種の成熟した精子と卵がであうと、精子細胞は卵に進入する。哺乳類や他の多くの動物の卵は、表面のどこからでも進入できる。一部の魚類、軟体動物、昆虫その他の特定種の卵は、厚い膜におおわれている。こうした卵は、膜の表面にある卵門または受精孔とよばれる特殊な開口部をとおって、進入しなければならない。
ふつう、1つの卵に進入できるのは1つの精子細胞のみである。2個以上の精子が卵に進入する多精子受精は、大半の種では異常なことである。そうした場合でも、実際に卵の受精にあずかるのは1個の精子のみである。胚の細胞分裂がはじまり、精子と卵の核がならぶと、それぞれの区別がつかなくなる(→ 細胞)。雄性胚細胞と雌性胚細胞は、多くの点で相補的である。卵は大部分の細胞質と栄養物質を胚に提供する。精子は機能的な中心体と有糸分裂の最初の起動力を提供する。胚のその後の発生過程については、発生学を参照。
実際上、すべての卵が胚を生じるには、精子による受精を必要とする。ただし特定の無脊椎動物の卵では、受精なしの発生が通則である。この型の生殖を単為生殖という。ことなる種の両親から生じた子を雑種といい、ふつう繁殖能力はない。ただし雑種として生じた子は、どちらの親よりも体が大きく丈夫であることも多い。
| III. | 受精の条件 |
生殖は、胚の正常な発生と未成熟な子の発達をうながす条件を必要とする。親はこうした発生と条件をうながす行動をとることが多い。
クラゲなどの多くの水生動物は、多数の精子と卵を水中に放出することで受精の確率を多少高めるだけで、あとは運にまかせる。サケなどでは、繁殖期間中に雄と雌があつまり、体を接近させて卵と精子を放出し、受精の確率を高める。一部のサンショウウオでは、雄は精子のはいったゼリー状の塊を放出し、雌はそれを排出腔の縁でひろいあげ、卵は体内で受精される。カエルの場合、受精はふつう雌の体外でおこり、雌のうんだ卵に雄が精子をかける。
一般に、交尾あるいは接合では、雄の生殖細胞がメスの生殖管内に放出される。雌の体内への精液の放出を射精とよぶ。交尾は多くの寄生虫、巻貝類、昆虫にみられ、爬虫(はちゅう)類、鳥類、哺乳類のすべてにみられる。生殖習性の発達を、筋道だてて説明する理論はまだない。多種多様な動物群が同じ受精方法をとるいっぽうで、近縁群の方法がひじょうにことなっていることもある。一般に、体外受精は陸生動物よりも水生・両生動物に多くみられる。受精は水を媒介とする必要があり、その結果生じた胚を乾燥からまもる必要があるからである。
植物の受精は本質的には動物の受精と似ている。陸生植物は自動力がないため、大部分が受精のため世代交代とよばれる複雑な方法を、進化させてきた。葉・根・茎・花をもつ植物は胞子体(造胞体)で、球根の形で無性で子植物を産出できる。この胞子体世代は次に配偶体世代を生じ、この世代は有性で繁殖する。2種類の胞子が胞子体の花で生産される。一方は花粉とよばれ、数個の細胞からなり、雄性配偶世代となる。他方は雌性配偶体となり、卵を1つふくんでいる。
雌性配偶体は、雌性胞子体の花の中で保護されている。風や昆虫は花粉を花から花へはこぶ主要な媒介者である(→ 受粉)。花粉は、雌蕊(めしべ)の柱頭に到達してから花粉管をのばし雌性配偶体に達する。その際、胚子嚢(はいしのう)の中の卵のわきにある2個の助細胞は、なんらかの物質を放出して花粉管を胚子嚢にひきよせている。そして1つの精子核が花粉管を通じて胚子嚢に注入され、受精がおこなわれる。その後、生じた胚のまわりで胚珠が拡大し、種子を形成する。この胚は若い胞子体で、風、雨、あるいは動物によって、発芽に適切な場所にはこばれるまで休眠する。
→ 品種改良:生殖:性:精子競争