| 検索ビュー | セメント | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
もともとセメントとは、やわらかな状態で塗布または充填(じゅうてん)したのち硬化し、強力な接着力をもつ無機質材料すべてをいう。セメントという用語は、糊(のり)や接着剤の同意語としてもつかわれるが、土木や建築では、水と混合すると硬化する石膏(せっこう)プラスターやポルトランドセメントからなる細かい粉末状に加工された製品をさす。一般には、この中でも石灰石を原料とする各種の材料のみをセメントとよぶ。
セメントの硬化は、水やアルコールや石油成分のような軟化剤の蒸発、内部的な化学変化、鉱物と水の化学的結合反応である水和作用、結晶の結合の成長などによる。また、大気中の酸素や炭酸ガスに反応して硬化するものもある。セメントは次のような用途につかわれる。たとえば、ポルトランドセメントと砂や砂利をまぜてコンクリートをつくったり、いろいろな材料の表面を結合したり、化学的な腐食をふせぐために材料の表面をコーティングする。また、用途にあわせてさまざまな材料を配合したものがつくられている。
| II. | セメントの歴史 |
人類がセメントを利用しだした歴史は古く、古代エジプトの建造物として有名なピラミッドなどでもすでに石材の目地に焼石膏(→ 石膏)が利用されている。また石灰岩を焼成した消石灰(水酸化カルシウム)や焼石膏などが古代ギリシャやローマの建築物につかわれていた。これらは、気硬化セメントの一種である。現代的な意味でのセメントは、1756年にイギリスのJ.スミートンが粘土をふくむ石灰岩を焼成したものがセメントに利用できることを発見したのが最初だといわれている。これは従来の気硬化セメントではなく水硬性セメントであった。その後、97年にイギリスのJ.パーカーが粘土質石灰を焼成したのちに粉砕してつくるローマンセメントを開発し、1818年にはフランスのL.J.ピカットが、石灰岩と粘土をこまかく粉砕してまぜあわせ高温で焼成、粉砕する高級ローマンセメントを考案した。現在、もっとも一般的なポルトランドセメントは、24年にイギリスのJ.アスプディンにより発明された。
| III. | セメントの分類と用途 |
セメントには、消石灰や石膏、マグネシアセメントなどのような空気中で硬化する気硬性のセメントと、ポルトランドセメントなど建築土木工事に利用される水硬性のセメントがある。なお、硬化したのちは水中でも利用できる水硬性セメントとちがい、気硬性セメントは水中では使用できない。現在、セメントといえば水硬性セメントのことである。日本では、各種ポルトランドセメント6種と混合セメント3種に関してはJISで規定がもうけられている。
| 1. | 用途に応じたポルトランドセメントの種類 |
一般の土木建築工事やセメント製品など、もっとも多く使用されている普通ポルトランドセメントは、セメントの総生産量の8割近くを占めている。そして、混合物の割合をかえることによって特徴のある各種のポルトランドセメントがつくられている。
普通ポルトランドセメントよりもケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2)を多くふくむ早強ポルトランドセメントは、初期強度が大きいという特徴がある。この特徴を生かし、冬季の工事や緊急工事などに利用されるほか、コンクリート製品工場などにも使用されている。また、水和熱(気体イオンが水溶液となるときのエネルギーの減少)を低くした中庸熱ポルトランドセメントは、普通ポルトランドセメントにくらべてケイ酸三カルシウムとアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al2O3)を少なくし、ケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2)を多くしている。これは乾燥による収縮も少なく、長期強度にすぐれている。そのため、ダムなどのマスコンクリート工事や道路舗装などにつかわれる。このほか、アルミン酸三カルシウムを少なくして硫酸塩に対する抵抗性を高めた耐硫酸塩ポルトランドセメントや、中庸熱ポルトランドセメントよりもさらに水和熱の低い低熱ポルトランドセメント、低アルカリ形のポルトランドセメントなどがある。
| 2. | 混合セメント |
混合セメントとは、ポルトランドセメントにJIS規格でさだめられた、高炉スラグ、フライアッシュ、シリカ質混合材を混合したセメントである。製鉄所から出る高炉スラグの微粉末を混合材につかう高炉セメントは、化学抵抗性にすぐれ、長期にわたり強度がえられることから河川や港湾、ダムなどの土木工事に広く利用されている。石炭の燃焼時に生じる良質なフライアッシュ(微粉状の石炭灰)を混合材につかうフライアッシュセメントは、水和熱が低く、流動性にもとむことからダムのマスコンクリート工事などの大型土木工事につかわれている。シリカ(二酸化ケイ素)分の多い白土や火山灰などを混合材とするシリカセメントは、緻密(ちみつ)で透水率や透気率はひじょうに小さいという特徴があり、ダムや水路などの土木工事につかわれている。
| 3. | 特殊セメント |
上記のJISに規定があるセメント以外の特殊なセメントも利用されている。歯の治療用に使用される歯科用セメントや、耐火物用のリン酸セメントなど多くの種類がある。アルミニウムの原料のボーキサイトと石灰石を主原料にしたアルミナセメントなどは、きわめて短時間で強度を出すことができる。また廃棄物問題の解決策として注目をあつめているエコセメントは、都市ゴミや焼却灰、下水汚泥を主原料としているが、微量の塩素をふくむため鉄筋をつかう工事には不向きだったが、最近ではよりふつうのセメントに近いものも開発されている。
| IV. | ポルトランドセメントの組成と製造 |
普通ポルトランドセメントは、ケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2)とアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al2O3)およびケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2)をいろいろな比率で混合した混合物で、少量のマグネシウムや鉄分をくわえてつくる。石膏は硬化のプロセスをおそくするためにくわえられる。
セメントの中にあるこれらの活性配合物は不安定であるが、水をくわえると構造をくみかえる。セメントを最初にかためるのはケイ酸三カルシウムの水和作用で、ゼリー状のシリカと水酸化カルシウムをつくる。これらの物質は最終的には結晶化し、モルタルやコンクリートにふくまれている砂や石の分子と結合して、かたい塊となる。
アルミン酸三カルシウムは同じように作用して最初のゼリー状態をつくりだすが、最終的に混合物を硬化させる役目ははたさない。ケイ酸二カルシウムの水和作用は同じように進行するが、進行は遥かにおそく数年かかってしだいに硬化する。セメントを混合してコンクリートとし、硬化するまで温度や水分を管理することを養生(キュアリング)という。この期間に熱が発生する。養生が不適切だと強度が低下したり、割れができる。
ポルトランドセメントは石灰分をふくむ材料、通常は石灰石であるが、粘土や頁岩またはアルミナやシリカをふくむ高炉スラグとまぜてつくられる。およその配合比率は、石灰60%、シリカ19%、アルミナ8%、鉄分5%、マグネシア5%、三酸化イオウ3%の割合である。
セメント・ロックとよばれる塊は、適当な比率でまぜあわされたこれらの原料からなり、そのほかの原料はあまりつかわない。セメントの製造工程で原材料はまとめて粉砕され、その配合物はクリンカー(焼塊)になるまで加熱される。そしてクリンカーを破砕して微細な粉末にする。焼成は長さ150m程度、直径4m程度のロータリー・キルンという回転窯(→ 窯)の中でおこなわれる。
キルンは水平よりやや傾斜し、原材料は上端から、乾燥したロック・パウダーの状態か、粉砕したロックに水をまぜてペースト状にして、キルンの中になげこまれる。なげこまれたものはキルンをくだっていく過程で乾燥され、下端で火炎で加熱される。火炎に近づくと炭酸ガスが放出され、火炎付近の1450°Cから1600°Cの高温の中で、原料を溶解する。材料がキルンの一方の端から他方の端まで通過するのにおよそ6時間かかる。クリンカーは、キルンをでると急速に冷却して粉砕され、そして送風機で梱包機械や収納サイロにおくりこまれる。
セメントの品質をチェックするために多くのテストがなされる。一般的な方法は、セメント1に対して砂3の割合のモルタルの標本をつかい、1週間空気と水の中においたのちに、その抗張力を測定するやり方である。良質なセメントはそのような条件で1cm²当たり19.4kgの抗張力をしめす。
| 1. | 性質の改良 |
通常の配合物や添加物の比率をかえることによって、ポルトランドセメントはのぞましい性質がえられる。たとえば、急速硬化、低温水和、耐アルカリ性などである。早強セメントともよばれる急速硬化セメントは、ケイ酸三カルシウムの比率をふやしたり、粒子の99.5%が1cm²当たり1万6370個の穴がある篩(ふるい)を通過するような、より細かな粒子にしたりして、つくることができる。
このセメントは、通常のセメントがじゅうぶんな強度になるまで1カ月かかるのに対して、1日で硬化してしまう。しかし、水和作用の過程で多くの熱を発生するので、熱がクラック(ひび割れ)を生じさせるような大型の構造物には不適当である。通常ケイ酸三カルシウムの割合が多い特別な低温セメントは、大量にそそぎこむ場合につかわれる。
コンクリートの打ち込み作業がアルカリ性の状況下でおこなわれ、ポルトランドセメントでつくられたコンクリートを浸食するような場合には、アルミニウムの含有量をへらした耐アルカリ・セメントがつかわれる。塩水のもとでつかうセメントは5%の酸化鉄をふくんでいる。また、40%の酸化アルミニウムをふくむセメントが、硫酸塩をふくむ鉱泉水にたえるためにつかわれる。