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木材
I. プロローグ

本来は樹木の樹皮の内側につくられる木質化した部分をいうが、伐採した樹木の幹をさすことが多い。材木とはこれを製材したもので、商取引の対象とされる。

II. 木材の種類

地球上には、数百種の針葉樹と数万種の広葉樹があるといわれているが、大きな樹木になって木材が利用できる樹種は、これよりはるかに少ない。日本で一般に利用されているのは針葉樹材、広葉樹材いずれも30~50種程度であろう。森林:林業

針葉樹材は、一般にやわらかいので軟材(ソフトウッド)とよばれ、広葉樹は、一般に重硬なので硬材(ハードウッド)ともよばれる。しかし、例外もあって、たとえばキリ材は広葉樹であるが針葉樹より軽い。

日本産でもっとも主要な針葉樹材はスギ、ヒノキであり、これにつぐものとしてアカマツ、カラマツ、ヒバ、エゾマツ、トドマツなどがあげられる。

広葉樹材では、ミズナラ(ナラ)、マカンバ(ウダイカンバ)、ブナ、ケヤキなどが主要であり、カシ、ヤチダモ、シナノキ、ハリギリ、カツラ、ホオノキ、トチノキなどが多くつかわれる。

また、輸入材のうち、針葉樹は北米からの米松(ダグラスモミ)、米ツガ(アメリカツガ:ツガ)、スプルース、米ヒバ(ローソンヒノキ)など、そのほかの地域からの北洋カラマツ(ダフリアカラマツ)、オウシュウアカマツ(ドイツトウヒ:トウヒ)、ラジアータパインが、広葉樹では東南アジアからのラワン・メランチ類、アピトン・クルイン類、カプールなどが主要である。

一般に、針葉樹材は、材質が均一で狂いも少ないため、建築構造材、造作材に多く利用され、広葉樹材は、かたく、木目がうつくしいため家具、床板、各種木工品などへの利用が主である。

III. 木材の組織構造

樹木の幹の構造は、最外層に樹皮が、内側に木材部分が、その境界に形成層がある。この形成層で年々細胞分裂し、内側に木材細胞を、外側に樹皮細胞を生産し、これによって木材が肥大成長していく。

1. 柾目、板目

木材の木口(こぐち)面(輪切り面)を肉眼でみると、樹心から同心円状に年輪があり、また樹心から外周にむかって放射組織がある。木口面全体では、外側の比較的あわい色の辺材(白太)、と内側の着色した心材(赤味)、に区別されるのが一般である。樹木が太くなっていくことで、辺材はしだいに心材にかわっていき、その樹種本来の色や特性をもってくる。なお、樹心から外周にむかう半径方向(放射方向)の面を柾目(まさめ)、年輪に接する接線方向の面を板目(いため)とよぶ。

2. 木口

木材の木口面を顕微鏡でみてみると、針葉樹材は同じような円形ないし角張った仮道管がならび、春から夏にかけて生長した、大きめで壁の薄い細胞群(早材)と夏から秋にかけて生長した、小さく壁の厚い細胞群(晩材)が交互になっている。これが年輪である。樹種によっては樹脂のはいった樹脂間道が散在するものもある。アカマツ、カラマツ、エゾマツなどは樹脂間道をもつ樹種である。

いっぽう、広葉樹材は、小さな細胞(木繊維)の中に、径の大きい管のような道管が多数みられる。この道管の配列の仕方によって広葉樹は、大きい道管が年輪にそって規則正しくならぶもの(環孔材)と、比較的小さい年輪が全体にちらばってあるもの(散孔材)、さらに放射状にならぶもの(放射孔材)にわけられる。さらに樹種によっては、放射組織が大きくめだつものがあり、道管の状態とあいまってその樹種特有の木目を形成する。代表的な環孔材がミズナラ、ケヤキ、ヤチダモ、散孔材がブナ、マカンバ、カツラ、ホオノキ、放射孔材がアカガシ、シラカシなどである。この中でミズナラ、シラカシおよびブナなどでは、放射組織が大きく、材面に樹種固有の斑点があらわれる。

3. ハニカム構造

これらの組織の中で、針葉樹の仮道管は、樹体をささえる役割と同時に、生育時には水分や養分をはこぶ役割をはたしている。これに対し広葉樹では、木繊維が樹体をささえ、道管が水分や養分の運搬をうけもち、役割を分担している。

樹体をささえる針葉樹の仮道管、広葉樹の木繊維は、いずれも径が0.01~0.05mm程度、長さがその数十倍あるいはそれ以上もある細長いもので、材の縦方向(繊維方向)につながり、木口面では整然とならんで年輪を構成し、全体としていわゆるハニカム構造になっている。しかも1個の細胞は、セルロースの束(ミクロフィブリル)が、何層もかさなった強い壁からできている。

木:木部

4. 木材の化学成分

木材の化学成分についてみると、細胞壁はセルロース、ヘミセルロース、リグニンの3成分からなっており、それぞれの構成割合は50%、20~30%、20~30%とされる。針葉樹はリグニンが多く、ヘミセルロースが少ないのに対し、広葉樹は逆である。細胞壁では、糸状のセルロースの束の隙間(すきま)をリグニンとヘミセルロースがうめ、細胞と細胞との間はリグニンによってしっかりと接着されている。さらに、樹種によってそれぞれ各種の抽出成分をもち、それが樹種特有の匂いや、耐久性などの特性に関与している。

5. 工業原料

木材の多くは、その繊維を紙の原料として利用するほか、樹種によっては、樹液に、工業原料として重要なタンニンや天然ゴム(ゴム)、ウルシなどの成分をふくんでいるものもある。

直接に樹皮を染料につかったり、乾留(蒸し焼き)して、染料や塗料、防腐剤、アルコール類、酢酸などの工業原料もえられる。

IV. 木材の性質

木材はうつくしい材色、木目をもち、加工しやすいこととあいまって、建築、家具などにひろく利用されている。木材は、ほかの材料にはみられない特性をもち、それらにもっとも大きな影響をあたえるのが、比重と含有水分(含水率)である。

1. 比重

木材の比重は、樹種によって、大きくことなる。一般に針葉樹は0.3~0.5、広葉樹は0.5~0.7程度のものが多い。もっとも軽いというバルサ材が0.17、もっとも重いとされるリグナムバイタ材が1.23といわれている。

木材を構成する細胞壁実質の比重(真比重)は約1.5であって、空隙(くうげき)が少なく空気の割合が少ない構造の材ほど、比重が高いことになる。さらに、含有水分が多ければそれだけ高い値になる。つまり比重の高い材ほど細胞壁が厚く多い材であり、それだけ強い材といえる。軸受

2. 水分

木材は伐倒した生材状態では、大量の水分をふくんでいる。木材の場合、水分状態を、水分のまったくない(全乾)材の重量に対する水分割合を、含水率(%)としてしめすが、生材ではこの値が50%をこえ、ときとして100%をこえる。これが乾燥していくとき、はじめに細胞の空孔にある自由水がぬけ、含水率が30%以下になると細胞壁にある結合水が減少しはじめ、これにともなって木材は収縮し、強度も大きくなっていく。最終的には外気の温度・湿度にみあった状態まで乾燥して平衡する。このときの含水率が日本の全国平均は15%で、気乾含水率とよぶ。

3. 収縮・膨張

木材は水分の増減によって細胞壁の寸法が増減し、全体として伸縮する。その程度は、接線方向がもっとも大きく、含水率1%当たり0.2~0.4%程度で、放射方向がその約1/2、繊維方向がその約1/20であり、これらの値は比重の大きい材ほど大きい。このような方向による収縮・膨張の違いが狂いや割れの原因になる。心持ち材では割れをさけるために、あらかじめ背割りをいれる。

4. 強度

木材は細胞構成がハニカム構造であることから、繊維方向の強度がきわめて大きく、しかも軽いという構造材としてすぐれた特徴をもっている。ただし横方向の強度は縦方向の強度の1/10ないし1/20程度である。ヒノキ材について無欠点材の繊維方向における強度値を例示すると、曲げ750kg/cm²、圧縮400kg/cm²、せん断強さ75kg/cm²、曲げヤング率9.0t/cm²である。実際につかわれる木材は欠点もあり、材質のばらつきを考慮してかなり低い許容応力度がさだめてある。

5. 耐久性

木材は、老化に対してはきわめて強い材料だが、多くの樹種は腐朽や虫害などの生物劣化には弱い。腐朽は腐朽菌の侵入により、木材が分解される現象で、温度20°C以上、含水率30%以上で活発におこる。しかし、ヒノキ、ヒバ、クリなどの樹種は、心材に抗菌性をもつ成分があって耐朽性が高い。また、アカマツ、エゾマツ、ブナなどの耐朽性はきわめて低く、辺材は樹種に関係なく腐朽しやすい。虫害のおもなものはシロアリで、水分が多く腐朽している木材にひきよせられる。ヒバ、コウヤマキなどは耐蟻性が高く、アカマツ、カラマツなどは低い。

6. 熱その他

木材は熱伝導率が非常に小さく、しかも比熱が大きいので断熱的にきわめてすぐれた材料といえる。さらに木材は外気の湿度に対応して、吸湿したり放湿する性質があり、熱をつたえにくい性質と相まって、結露しにくい特性をもつ。電気に対しては乾燥状態で高い絶縁性をしめすが、しめった状態ではよく電気をつたえる。なお、この性質を利用して、木材の含水率をはかる、木材水分計が普及している。

V. 製材品

木材を建築・家具などにつかうとき、もっとも一般的なのは、丸太を鋸びきした製材品の形である。国内での製材丸太のうち、針葉樹材が90%以上をしめる。製材品の種類として形状により板類、ひき割類、ひき角類(辺長7.5cm以上)の区分がある。住宅につかわれる柱、土台などは正角、たる木、根太などは正割、敷居と鴨居などは平割で、丸太の径級、品質に対応し、材種をくみあわせて、高い歩どまりで木取りする。

さらに、これら製材品は、節の大きさや欠点の程度で、特等、1等、2等および無節、上小節、小節などに区分し、構造的、化粧的に有効につかいわけられる。また、針葉樹構造用製材のJAS(日本農林規格)では、建築構造部材としての利用を明確にし、甲種構造材(曲げ)Ⅰ、Ⅱ、乙種構造材(圧縮)にわけ、等級をそれぞれ1~3級に区分している。

VI. 接着加工製品

製材品の場合、原木の形質によって採取できる寸法、形状に制約があり、用途面からの要望にこたえて、さまざまな形状の木材(エレメント)を接着・再構成した材料が製造されてきている。

1. 集成材

集成材は、厚さ2~3cmのひき材(ラミナ)を大きな節、腐れなどを切除し、縦つぎ、幅矧ぎ(はばはぎ)あるいはさらに積層した材料で、長く、大きい断面の材が自由につくれる。欠点が少なく分散するので強度的に安定している、乾燥材であるためその後の割れ、狂いがない、など多くの長所をもっており、建築の構造、造作にひろく利用されてきている。とくに最近では、大断面集成材を利用した、大型木造施設が多く建設され、話題になっている。

2. 合板

合板は、丸太を丸剥(む)きした単板(ベニヤ)を、繊維方向が互いに直交するように、奇数枚積層接着した材料である。ひろい面材が得られ、収縮・膨張が少なく、必要により厚く丈夫なものもつくれることから、建築の壁面、床はじめ家具材としても多用されている。

これまで原木のほとんどが、ラワン・メランチ類が主体の南洋材であったので、針葉樹材への転換が大きな課題になっている。同じ単板を繊維と平行方向に積層接着したのが「単板積層材・LVL」である。短い単板からでも長い材料がつくれ、しかも集成材と同様、木材の長手方向に強い特性をもっており、最近注目されている材料である。

3. パーティクルボード

次に木材をけずったり、破砕した小片を板状に成形接着した材料が、削片板・パーティクルボードである。工場廃材、建築解体材など、どのような形状の材も原料として利用でき、建築の下地材、家具心板などで、利用がふえてきている。近年話題になっている「配向性ボード・OSB」は小片がある程度方向性をもってならんでいるボードで、強度性能の向上をはかったものである。

4. ファイバーボード

繊維板・ファイバーボードは、木材をさらに繊維の状態にまでほぐし、再成形した板材料で、製品の比重によって軟質(インシュレーションボード)、中質、硬質(ハードボード)にわけられ、用途も広範で多岐にわたる。このなかで中質繊維板はMDFとよばれ、均質で加工性もよいため、建材・家具の分野で大幅に需要がのびてきている。パーティクルボードと同様、原料の形状の制約をあまりうけないので、資源の有効利用という意味からも重視されている。

5. 接着加工材の利用

以上のいずれもが接着した材料であるため、ときには耐久性に不安がもたれるが、使用条件、とくに湿気に対して、それぞれ適合する性能の製品が生産されており、正しく選択して利用すれば心配はない。各製品の特徴をじゅうぶんに理解し、長所を生かした使い方が肝要である。

VII. 木材の乾燥

木材は乾燥することによって、狂いを生じたり、割れが発生したりすることが、欠点とされるが、あらかじめ適切に乾燥して使用すれば、問題は少なくなる。そのほかに乾燥の効果としては、木材の重量が減少し、輸送や取扱いが容易になる、湿潤状態で腐敗(腐敗と分解)しやすい樹種も、耐久性が増大する。安定した接着ができるようになる。含水率の低下につれ強度が大きくなる。鉋削(ほうさく:かんなで加工すること)や研削などの加工性が向上するなどの利点がある。

1. 人工乾燥

古くから木材を利用するときには、材を立てかけたり、桟積みしたりして相当期間「枯らし」てつかう、いわゆる天然乾燥がおこなわれてきた。これだと長時間を要し、しかも、ある断面以上の材ではせいぜい含水率20%程度までしか乾燥しない。木材が空調した室内で利用されるときは、最終的には10%前後にもなるので、建築につかうと、収縮や狂いがおこる。これを防止するにはどうしても、人工的に温度・湿度を調整してさらに低い含水率にする、いわゆる人工乾燥が必要になってくる。

乾燥装置には多くの種類があるが、現在もっとも一般的なのは、「蒸気式内部送風機型乾燥室」によるものである。材を桟積みして乾燥室にいれ、室内の空気温度を蒸気管によって加熱し、室内に設置した送風機により、全体の条件が均一になるように熱風を循環して乾燥する。

VIII. 木材の防腐、防蟻加工

古い寺社建築だけでなく、一般の住宅にも100年以上たっても、りっぱに使用されているものが少なくないが、条件によっては、腐朽菌やシロアリなどの生物によって、大きな被害をうける。しめった状態になりやすい場所には、耐朽性の高い樹種を利用することがのぞまれる。いっぽう、どのような樹種あるいは辺材であっても、きちんと防腐処理をすれば、耐朽性はいちじるしく改善される。近年の住宅では防腐土台といい、ベイツガ材に工場で水溶性防腐剤(CCA)を加圧注入した材が多くつかわれている。防腐・防蟻剤としてはCCA、クレオソート油のほか、最近では、DDAC、ACQなどが注目されている。

IX. その他化学加工

難燃処理も、古くからおこなわれてきた。木材を燃焼しにくくするために、燐酸アンモンやハロゲン化合物などを注入した材料が生産されている。また、木材の寸法安定性の向上のために、膨潤時の寸法を保持しようとするPEG処理と、乾縮状態を保持しようとする、アセチル化処理などが実用化され、硬化と美化をねらったWPCが、床板のような用途では、高く評価されている。立木染色材・人工杢(もく)単板などのカラーウッドも製品化され、さらにセラミックウッド、木材のリキッド化などが話題になっている。

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