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ミサイル
I. プロローグ

内蔵の装置または遠隔操作によって、航路を修正しながらみずからの推進力で目標にむかう無人の飛行物体。誘導ミサイル、誘導弾ともいう。誘導装置をもつものがミサイル、無誘導のものがロケット兵器と区別されるが、国によっては総称してロケットの用語をつかう場合もある。ミサイルには核兵器を搭載した巨大な戦略ミサイルから歩兵携行の対空ミサイル、対戦車ミサイルまで、大きさ、目的などに多種多様なものがある。

II. ミサイルの構造

ミサイル本体は通常、ペンシル(鉛筆)状の外形をしており、動力源、誘導制御機構および弾頭からなる。動力源にはロケットエンジンとジェットエンジンがある。ロケットエンジンは燃料と酸化剤をともに内蔵し、これを燃焼させて推進力をえる。初期の弾道ミサイルでは液体燃料がつかわれていたが、現在はほとんどが取り扱いの容易な固体燃料である。ジェットエンジンは空気を吸入して燃料を燃焼させ、推進力をえる。種類によっては翼を利用するもの、発射機から発進するときにブースターなど外部の補助をうけるものがある。

III. ミサイルの誘導

ミサイルの誘導は内蔵された誘導制御装置または外部の遠隔制御装置でおこなわれる。弾道ミサイルなどの長射程のミサイルは内蔵された誘導装置で経路を算定し、修正をおこなって飛行する。一部には内蔵レーダーで目標を探知して終末誘導をおこなうものもある。また最近では、人工衛星を利用した航法システム(GPS)を利用して経路を修正するものもある。

中射程、短射程のミサイルでは外部の誘導員が目標をとらえて、ミサイルを誘導する指令誘導方式、ミサイル自身がレーダーをもつアクティブホーミング、誘導装置からレーダー波やレーザーを放射してその反射波をとらえるセミ・アクティブホーミング、目標の出す電波や赤外線を感知して追跡するパッシブホーミング方式などがある。

ミサイルの弾頭は炸薬(さくやく)をつめた通常型弾頭が一般的だが、コンクリートや装甲貫徹用の特殊弾頭などもある。また、弾道ミサイルでは生物化学兵器を搭載した化学弾頭、核弾頭などがある。

IV. ミサイルの分類

ミサイルの分類法には、発射母体、使用場所によるもの、射程や運用法によるもの、飛行形態によるものなどがある。

1. 発射母体、使用場所などによる分類

地対地ミサイル(SSM:Surface-to-Surface Missile)、地対空ミサイル(SAM:Surface-to-Air Missile)、空対地ミサイル(ASM:Air-to-Surface Missile)、空対空ミサイル(AAM:Air-to-Air Missile)などにわけられる。この場合、「地」には艦船もふくまれる。

地対地ミサイルでは湾岸戦争でイラクが使用したスカッド、地対空ミサイルではスカッド迎撃に活躍したアメリカのペトリオット(ペトリオットPAC-3)、空対地ミサイルでは対レーダーミサイルのハーム、空対空ミサイルではアメリカのサイドワインダーやスパローなどが知られている。

2. 射程や運用法による分類

戦術ミサイル、戦場支援ミサイル、戦略ミサイルにわけることができる。戦術ミサイルは地上、空中の戦闘行動の直接支援をおこなう。歩兵携行または、航空機やヘリコプターが搭載する対戦車ミサイル(対戦車兵器)、歩兵携行や地上設置の対空ミサイル(対空兵器)などがあげられる。戦場支援ミサイルは後方地域から戦闘地域に攻撃をくわえるもので、短距離、中距離ミサイルが相当する。戦略ミサイルは大陸または海中から別の大陸を攻撃するもので、地上サイロの大陸間弾道ミサイル、潜水艦搭載の潜水艦発射弾道ミサイルなどがある。

3. 飛行形態による分類

空気力学ミサイルと弾道ミサイルにわけられる。空気力学ミサイルは翼面と機体表面にかかる空気圧にささえられて飛行し、地面と水平に飛行して目標にむかうが、弾道ミサイルはロケットエンジンの推進力で姿勢をたもち、放物線をえがいて目標に到達する。

4. 巡航ミサイル

空気力学ミサイルの代表で、アメリカのBGM-109トマホークなどがある。トマホーク巡航ミサイルは小型のターボファンエンジンに小翼をそなえ、地上、水上艦、潜水艦から発射できる。敵の艦船などの中距離目標や数千キロメートル先の戦略目標を攻撃し、湾岸戦争で使用された。

また、フォークランド紛争でイギリスの軍艦を撃沈したフランス製のエグゾセや世界各国でつかわれているアメリカのハープーンなどの対艦ミサイルは、海面上数メートルをはうようにしてとび、目標に近づくと上昇して内蔵されたセンサーで敵艦船を発見して攻撃をおこなう。

5. 地対地ミサイル

弾道ミサイルの代表は地対地ミサイルである。これはその射程によって、5500km以上の大陸間弾道ミサイル(ICBM)、2400~5500kmの中距離弾道ミサイル(IRBM)、800~2400kmの準中距離弾道ミサイル(MRBM)、800km以下の短距離弾道ミサイル(SRBM)にわけられる。ただし1987年の中距離核戦力全廃条約(INF全廃条約)では、射程1000~1500kmを中距離ミサイル、500~1000kmを短距離ミサイルと定義している。

V. ミサイルの歴史

最初の実用ミサイルといえるのは第2次世界大戦中にドイツが実用化したV-1号とV-2号である。V-1号はパルスジェット(間欠的に燃料を圧縮、爆発させるジェットエンジンの一種)を動力とする巡航ミサイルで、V-2号はロケットエンジンを装備した弾道ミサイルであった。

V-1号とV-2号はロンドン爆撃やアントワープの攻撃に使用されて一定の戦果をあげた。V-1号は飛行機並みの速度でかなりの数が撃墜されたが、V-2号は高速で落下するため、迎撃することはできなかった。また、ドイツは空対地ミサイルの元祖といえるHs-293やフリッツXを実用化した。フリッツXは1943年にイタリアの戦艦ローマを撃沈した。

1. ミサイルの発展

戦後、連合国はドイツの技術資料を接収し、またアメリカがV-2号の開発者フォン・ブラウンをよびよせたのをはじめ、各国はきそってドイツの技術者をまねきいれて自国のミサイル開発をすすめた。アメリカとソ連が開発した大型ミサイルはV-2号を参考にしたものである。

世界初の大陸間弾道ミサイル(ICBM)はソ連が1957年に完成させたSS-6である。多数の戦略爆撃機(爆撃機)をもっていたアメリカはでおくれて、59年にアトラスを完成した。潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)では、アメリカのポラリスが60年に原子力潜水艦からの初の水中発射に成功している。以後戦略弾道ミサイルは米ソ対立の中で核戦力の中心となり、次々と新型ミサイルが開発された。

また、V-1号はアメリカのレギュラスやソ連の各種対艦ミサイルの原型にもなっている。現在使用されているトマホーク巡航ミサイルは最新技術をもりこんだV-1号の遠い子孫といえるだろう。1950年代から60年代にかけて実用化された地対空ミサイルや対戦車ミサイル、空対空ミサイルも第2次世界大戦中のドイツの技術開発を基礎としてつくられたものが多かった。

2. ミサイルの使用

ベトナム戦争では北ベトナムのソ連製対空ミサイルが、アメリカ軍機を多数撃墜し、その威力をしめした。一方、アメリカ軍機は北ベトナム軍機との空中戦で、空対空ミサイルを多数使用している。1967年の第3次中東戦争(中東戦争)ではソ連製対艦ミサイルを装備したエジプト軍のミサイル艇がイスラエルの駆逐艦を撃沈し威力をしめした。73年の第4次中東戦争ではエシプト軍の装備するソ連製対戦車ミサイルがイスラエル軍戦車を多数撃破し、一時は戦車無用論がささやかれるほどになった。

現在、ミサイルは各国の軍隊で欠くことのできない装備となっており、各国は新型ミサイルの開発、生産に余念がない。

VI. 日本のミサイル

太平洋戦争中、日本も誘導兵器の研究をおこなったが実用化にはいたらなかった。戦後、自衛隊は1960年代に射程1600mの有線誘導の対戦車ミサイル64式対戦車誘導弾を開発し、70年代には79式対舟艇対戦車誘導弾を実用化した。さらに80年代にはレーザー誘導式の87式対戦車誘導弾を完成させている。また90年代に部隊配備された射程120kmの対艦ミサイル88式地対艦誘導弾は、最初地上をプログラミング誘導でとんだのち、海面に出て内蔵のレーダーと赤外線シーカーで目標を探知する国産の巡航ミサイルである。

なお、近年装備がすすめられている96式多目的誘導弾システムや01式軽対戦車誘導弾には、赤外線画像誘導方式が採用されている。

中距離対空ミサイルでは、1960年代にアメリカのナイキJとホークを導入した。その後、70年代にホークは改良ホークに、80年代にはナイキJがペトリオットに更新されている。また、海上防空用には60年代にアメリカのターターミサイルを導入し、70年代にスタンダードミサイルに更新した。その後、80年代末からアメリカ海軍の高性能防空システムであるイージス・システムを採用している。

携行式対空ミサイルはアメリカのスティンガーを導入したが、国産の91式携帯地対空誘導弾が開発された。また短距離対空ミサイルとしては国産の81式短距離地対空誘導弾と93式近距離地対空誘導弾が配備されている。空対空ミサイルではサイドワインダーに相当する90式空対空誘導弾が実用化され、スパローに相当する99式空対空誘導弾が開発されている。空対艦ミサイルでは91式、93式空対艦誘導弾、艦対艦ミサイルでは90式艦対艦誘導弾が実用化されている。