| 金管楽器 | 項目ビュー | ||||
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| II. | 歴史 |
自然界の貝や角から出発したラッパは、やがて金属の管をもちいるようになる。当初は管も直線の単純なものだったが、倍音が簡単に出せるように長さを長くするうちに、しだいにもちやすいように管をおりまげた形に変化していく。その過程で、唇があたる部分をより吹きやすく、滑らかにするためにマウスピース(吹口)が誕生した。初期のマウスピースは、象牙製であった。
| 1. | ナチュラル・トランペット |
14~15世紀ごろのラッパは管を二重におりまげたナチュラル・トランペットが主流で、大小さまざまな楽器があった。しかしC管(ハ調が基本の管)とこれを少し短くしたD管(ニ調が基本の管)の楽器が一般的で、さらに完全4度高いF管(ヘ調が基本の管)ももちいられるようになった。ナチュラル・トランペットは、唇のしめ具合によって、自然倍音列を吹くことができた。また、ナチュラル・トランペットは神や天使、騎士や王などの高い地位をしめす、高貴な楽器としてあつかわれた。
| 2. | ホルンとトロンボーン |
一方、角笛から発達した楽器がホルンである。ホルンは狩猟の合図の楽器としてもちいられ馬上で吹くことが多かったため、肩にかけたり身体にまいて吹けるように管を大きく巻いた大型の楽器がもちいられた。また、ホルン吹きは馬にのって狩人たちを獲物の方向に先導する必要から、ラッパの朝顔(ベル)部分が後方をむくようになっている。
14世紀ごろ、教会でより明確なメロディの吹ける金管楽器がもとめられるようになり、管を二重にしてスライドさせ、管の長さをかえることでメロディを演奏するトロンボーンが生まれた。トロンボーンは教会のミサの伴奏につかわれ、また木管アンサンブルの低音楽器としても大切な役割をはたした。
また、ナチュラル・トランペットよりも自由に音階が吹ける楽器として、木管を円錐形に加工して指穴をあけ、象牙のマウスピースをつけた、唇と指の両方で音程を調節するツインクが誕生する。この楽器は当初は木管楽器としてあつかわれ、コンソート(同種の楽器による合奏)楽器の一種とされた。16世紀にイタリアのベネツィアのサン・マルコ教会のためにジョバンニ・ガブリエリが数多く作曲したアンサンブル曲は、このツインクとトロンボーンの合奏曲で、オルガンに伴奏されることも多かった。ツインクとトロンボーンは教会音楽用の楽器として密接な関係となったが、ホルンは狩の楽器としてホルンだけのアンサンブルを形成するようになった。
17世紀末から18世紀初頭にかけて、小型のホルン(ナチュラル・ホルン)がつくられると木管楽器とのアンサンブルがはじまり、18世紀には、クラリネット、オーボエ、ファゴット、ホルン各2本による管楽アンサンブルがハルモニー・ムジークとして流行した。ナチュラル・トランペットは17世紀から18世紀半ばにかけて黄金時代をむかえ、多くのアンサンブル曲がつくられたほか独奏楽器としても活躍し、18世紀後半にはオーケストラでもつかわれるようになった。しかし、教会音楽のために誕生したトロンボーンは、宗教的背景が18世紀の王宮のサロン音楽になじまなかったため衰退し、モーツァルトやハイドンの作品ではほとんど使用されなかった。
トロンボーンの価値をみとめたのはベートーベンで、1808年初演の交響曲第5番「運命」にとりいれ、それ以来、しだいにオーケストラでもつかわれるようになった。18世紀には低音の金管楽器としてツインクを大きくしたセルパンがつかわれた。また、ナチュラル・トランペットにスライドをつけて調をかえやすくしたものや、小型のラッパの本体に、現在のサクソフォーンについているようなキーをつけて音階を吹けるようにしたキー・ビューグルなどもあらわれた。ハイドンが1796年に作曲した「トランペット協奏曲」は、このキー・ビューグルのためにつくられた曲である。
| 3. | 産業革命による楽器の変化 |
このように金管楽器はさまざまな背景のもとに発達してきたが、18世紀末におこった産業革命で金属加工が容易になったため、19世紀には機構的に大きく変化する。もっとも重要な変化はバルブとピストンの発明で、これによって、すべての金管楽器が半音階を自由に演奏できるようになった。
バルブはまずツインクにつけられ、現代のコルネットが誕生した。しかし、伝統を重んじるオーケストラのナチュラル・トランペットやホルンの奏者はバルブをつけたがらなかったため、現代的なトランペットやホルンが普及するまでにはかなりの時間を要した。
また、サクソフォーンをつくったベルギーの楽器製作者アドルフ・サックスは、1842年から45年の間に太い円錐管とバルブをもつ金管楽器群、サクソルン属を完成させた。この楽器群は比較的円錐の度合が大きいビューグルを基準に、Eb管とBb管を交互に大きくしたもので、次のような種類がある。
ソプラノ・フリューゲル・ホーン Eb(実音より短3度高い)、フリューゲル・ホーン Bb(実音より長2度低い)、アルト Eb(実音より長6度低い)、バリトン Bb(実音より長9度低い)、ユーフォニアム(小バス) Bb(実音より長9度低い)、中バス Eb(実音より1オクターブと長6度低い)、大バス BBb(実音より2オクターブと長2度低い)。アルト以下の楽器は胸にかかえて吹く形式で、バリトンとユーフォニアムは管の長さは同じだが、ユーフォニアムのほうが管が太く豊かな音が出る。
イギリスではこれらサクソルン属の楽器を主体に、トロンボーンと打楽器をくわえた金管アンサンブル(ブラス・バンド)が19世紀後半に炭坑など職場バンドとして普及し、現在でも多くのバンドが活動している。このほか19世紀初めに前述のセルパンを金管にした低音楽器オフィクレイドがつくられ、軍楽隊などで幅広く使用されたが、現在は消滅した。
| 4. | 現代の金管楽器 |
| 4.A. | トランペット |
ナチュラル・トランペットを短くしてバルブをつけた現代のトランペットは、1830年ごろにつくられたが、オーケストラでの普及はおくれた。しかしベルリオーズは1840年に作曲した曲の中で古いナチュラル・トランペットとピストンのついたコルネットの両方を使用。チャイコフスキーも「白鳥の湖」にやはり両方使用し、しだいにバルブのついた楽器の便利さがみとめられ、20世紀にはほとんどのオーケストラでモダンなトランペットがつかわれるようになった。アメリカの初期のジャズでコルネットがもちいられたのも、同じ理由による。
現在のトランペットは円筒管の部分の長い円錐管で、管長は約160cm、音色は明るくするどい。楽器には一般的な変ロ調の管(B管)のほか、高音用のピッコロ・トランペットやC管、D管、Eb管などがある。ドイツやオーストリアでは低音のバス・トランペットもつかわれるが一般的ではない。
| 4.B. | ホルン |
現在はロータリーバルブ付きのホルンが広くつかわれ、調はF管が一般的である。それより完全4度高いBb管もつかわれるほか、F管とBb管の2つの機能をあわせもったダブル・ホルンも普及している。管が約3m73cmと長く、またベルも大きいため、音色はおちついてやわらかい。倍音が出やすく音がはずれやすいため、トランペットより吹奏はむずかしい。オーケストラや吹奏楽では4本を一組としてつかわれ、和音を担当する重要な楽器である。
| 4.C. | トロンボーン |
トロンボーンという名称は、トランペットのイタリア語であるトロンバ(Tromba)に拡大をあらわすオーネ(one)がついたもので、「大きなトランペット」の意味がある。イタリアではバルブのついたトロンボーンがつかわれるが、現在一般的にトロンボーンといった場合はスライド・トロンボーンをさす。ベートーベン以後、オーケストラ楽器として定着している。
基本となるテノール・トロンボーンはBb管だが、低音部譜表での記譜上はC管としてあつかわれる。また、Fアタッチメントという管をつけて、完全4度低く音域をかえられる楽器などいくつかのシステムがあり、管の太さも多少ことなる。そのほか、ソプラノ、アルト、テノール・バス、バスなどの種類がある。この楽器もトランペット同様円筒管の部分が長い円錐管で、シャープな響きも出せるが、最近は深いマウスピースを使用した厚味のある豊かな響きもこのまれている。
| 4.D. | チューバ |
チューバはドイツ語で「管」という意味で、サクソルン属のバスとは別に、1834年にドイツでオフィクレイドをもとにしてつくられたときにつけられた名称である。楽器そのものはサクソルン属のバスとドイツのチューバでは形が少しことなり、チューバのベルのほうがやや丸みに欠けていたが、現在はあまり区別がつかなくなっている。ベルリオーズやワーグナーによってオーケストラでもつかわれるようになった。Bb管、C管、F管、Eb管などがある。
| 4.E. | その他の金管楽器 |
吹奏楽やブラス・バンドでは、サクソルン属の楽器が多くつかわれており、とくにユーフォニアムは中低音の旋律楽器として重要で、広くもちいられる。しかし、以前は吹奏楽にももちいられたアルトやバリトンは、現在のアメリカ式の編成ではもちいられず、一時期、アメリカや日本でホルンの代用としてつかわれたメロフォーンも現在ではほとんどつかわれていない。