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| IV. | 対位法の学習と実践 |
どんな様式で書くにせよ、対位法の作曲で失敗しないためには個々の声部と声部間の相互関係に細かく神経をつかう必要がある。手本としては、今日でも16世紀様式の対位法がもっともすぐれている。この様式では、全声部の音域が最大1オクターブと5度以内であり、隣接する2声部が4~5度以上にひらくことはない。各声部の旋律は順次進行したり、ある程度の跳躍進行をしたりする。跳躍は3度(たとえばハからホへの上行、イからヘへの下行など)、完全4度、完全5度の上行・下行、短6度の上行がゆるされるが、1オクターブ以上の跳躍はひかえなければならない。
各声部の音程は、特定のパターンにあらわれる不協和音(経過音、刺繍(ししゅう)音、先取音、掛留(けいりゅう)音など)をのぞいて、つねに調和的で安定した協和音程をたもつ。不協和音は、きめられた場合でのみ使用することができる。掛留以外の不協和音は、たいてい短い音価のリズムか弱拍、分割された拍の中でつかう。対位法では、協和音程をたもっている音の進行にも規則があり、完全5度とオクターブの跳躍は、2つの声部が斜進行ないし反進行する場合にのみゆるされる。各声部のリズムの流れはスムーズでなければならず、唐突な開始や終止、あるいは短いシンコペーション(アウフタクトのリズム)は、けっしておこなってはならない。
対位法は、しばしば多段譜表をもちいて段階的におしえられる(譜例3)。この方法は18世紀ドイツの作曲家フックスが考案したもので、彼の1725年の音楽理論書「グラドゥス・アド・パルナッスム」は現在でも対位法の教科書として有用である。譜表の最下段には、定旋律がすべて同じ長さの音符で書かれる。第1段階(下から2番目の譜表)では、定旋律の各音に同じ長さの1音をあてる。第2段階では、定旋律の1音に対して半分の音価の2つの音を、第3段階では4分の1の音価の4つの音をあてる。第4段階では、定旋律の1音に対して同じ長さの1音をあてるが、開始の拍をずらす。第5段階では、音符の長さも、開始の拍も変化させる。

18~19世紀の対位法は、そのころに一般的であった和声体系と対立しないようにもちいられた。20世紀になって、ドイツの音楽学者ハインリヒ・シェンカーの影響のもとに、対位法をあらゆる調性和声の基礎とする考え方が生まれる。すべての和声的手法は、対位法と同じく、声部間の相互関係で説明できるとシェンカーは主張した。いいかえれば、対位法は和声の原初的な段階であり、和声はいかに複雑な形をしていても、複数の声部を対位法的にむすびつけたものにすぎないと考えられた。