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タバコ
I. プロローグ

喫煙したり、かんだり、かいだりする葉をとるために栽培されるナス科の多年草。日本では春まきの一年草として栽培し、秋に収穫する。もっともひろく栽培されているタバコは高さ1~2mになり、中央の茎から10~20枚の先のとがった楕円形の葉を互生させる。5月ごろピンク色をした筒形の花がさくが、ふつうは、わかいうちに花をつみとってしまう。これを花止めといい、上質の葉を生産する方法である。タバコ属には、約60種以上あり、ニコチン、アナバシンなどのアルカロイドがふくまれている。栽培種と野生種とがあり、タバコ以外の栽培種には、マルバタバコのほか、観賞用のオオタバコ、ハナタバコなどがある。野生種は、南北アメリカ大陸、オーストラリア、南太平洋の諸島にひろく分布する。

II. 歴史

栽培種のタバコは南アメリカ大陸の北部~中部の原産で、最初にもちいたのはおそらく古代マヤ族(マヤ)だったと考えられる。北アメリカ先住民につたえられ、薬効があると信じられて、儀式などにつかわれた。

1. ヨーロッパへの広まり

1492年にコロンブスがサンサルバドル島に上陸したとき、アラワク族が、トバゴという管をつかって、タバコをすっているのをみたことからタバコとよばれるようになった。1556年にサントドミンゴからスペインへもたらされ、同じ年にフランス人の外交官ジャン・ニコがフランスへ紹介し、彼の名がこの植物の属名のもとになっている。85年にイギリス人の航海者ドレークがイギリスにもちこみ、イギリス人の探検家ローリーが宮廷にパイプでの喫煙を紹介した。タバコはたちまちヨーロッパとロシアにひろまり、17世紀には中国、アフリカ西岸にまでひろまった。

2. 栽培の始まり

植民地時代のアメリカではジェームズタウンの入植地でつかわれはじめ、1615年には庭、畑はもちろん、街路にまで植えられ、主要産物となって、大流行した。1776年以後タバコ文化は、ノースカロライナ州やミズーリ州にまでひろがった。1864年ごろに、オハイオ州の農夫がホワイトバーレーという葉緑素の欠乏した系統をたまたま発見した。これはとくに81年にタバコ製造機が発明されたのちは、アメリカのブレンドタバコの中心原料となった。

III. 生産

タバコは北は北緯50度までの気候もさまざまな約120の国で栽培されているが、上質で商品価値のある産物がとれるのは、ほんの数カ所だけで、栽培には多くの手間と集約的な労働力が必要とされる。

巻タバコあるいはタバコの充填(じゅうてん)葉、中巻葉、外巻葉などにするメリーランドタバコや、バーレーのような特殊な系統のタバコの苗をつくるときには、すずしい苗床から畑へ移植するが、特別の肥料と湿度が必要である。外巻き葉用の大きなうすい葉をつくるためには、目のあらいうすい綿布で畑の上をおおう。花止めして、生育させた葉は、成熟した段階で収穫するために、手作業でひんぱんにつみとらなければならない。

どのタイプのタバコも、葉は納屋につるしてほし、色づいて乾燥し、しかるべき香りがでるまで空気、火、熱などにさらす。多くのアメリカタバコや葉巻につかう空気乾燥の方法は、6~8週間かかる。火をつかう方法は納屋の床に火をたいて煙を葉に浸透させる。暖房による場合は、かつてはたき火から排気管をとおして熱をつたえていたが、葉がきちんと醗酵して乾燥するよう注意が必要とされる。乾燥させたのち、葉のついていた部位、色、大きさ、品質などによって等級づけしてから包装し、競売のために貯蔵所にはこばれる。

IV. 日本への伝来

日本に最初にタバコがはいってきたのは、ポルトガルやスペインのアジア進出の時代である。製品になったものは、元亀から天正年間にかけて(1570~92)、船員がもちこんだといわれる。種子はつづいて慶長年間(1596~1615)に渡来し、各地で栽培されるようになったといわれるが、確かな記録があるのは、フランシスコ会の司祭が、京都の伏見で、1601年(慶長6)に徳川家康に献上したことである。別の説では、1600~05年ごろ九州にもたらされたという。

V. タバコと税制

17世紀半ばには、全国各地でタバコが栽培されるようになったが、年貢の米が減少することをおそれ、幕府は作付けの半減令をだして規制したが、8代徳川吉宗の時代になって、奨励策をとるようになった。幕末には、薩摩藩などが専売制をとり、現金収入の手段にしていった。

明治維新以後、1898年(明治31)に葉タバコが専売制になるまで、民間業者の間で取り引きされていた在来種は、120種以上あった。1904年に政府は、日露戦争の戦費調達と外国製品への対抗処置として、タバコの生産、製造、販売を政府の専売とし、大蔵省専売局の所轄とした。専売局は、49年(昭和24)日本専売公社となり、85年日本たばこ産業株式会社(呼称JT)として民営化され、94年10月に東京証券取引所第1部に上場した。

VI. 品種

タバコの品種は、目的とする製品や香り、味、燃焼性などの違いで、バーレー種、葉巻種、オリエント種、黄色種、在来種の大きく5種類にわけられる。

1. バーレー種

アメリカの在来種から突然変異でできたもので、葉緑素が少なく白味がかっている。香りや味がすぐれ、着香料の吸収がよいところから、いわゆるアメリカン・ブレンドの基本になる品種。アメリカをはじめ、日本、韓国、イタリアなどで栽培される。日本では、東北地方が主産地になっている。

2. 葉巻種

葉巻にする品種で、葉がうすく、特有の香りがある。収穫後に乾燥させてから、発酵させて、強い香りをひきだす。高温多湿の地域で栽培され、産地によって、ハバナ葉(キューバ産)、マニラ葉、スマトラ葉とよばれる。最高級とされるハバナ葉を手巻きしたものでは、1本が1万円前後というものまである。

3. オリエント種

ギリシャやトルコなど、雨量が少なく日照量の多い、地中海性気候に適した品種で、本来の産地にちなんで、ラタキア、ターキッシュなどがある。独特の芳香があり、紙巻の味付けにつかわれる。

4. 黄色種

紙巻の主原料で、乾燥させると、黄色がかった色になるところから、この名がつけられている。北アメリカの原産だが、アメリカをはじめ、中国、インド、タイなどで栽培され、日本でも、関東から沖縄までひろく栽培され、もっとも生産量の多い品種。

5. 在来種

古くから各地で生産されていた品種の総称で、全体としては、味や香りが軽く、紙巻の充填原料としてつかわれることが多い。

VII. 紙巻タバコ

タバコ製品は紙巻が主流だが、葉巻、刻み、嗅(か)ぎタバコや噛(か)みタバコもある。アメリカ大陸からヨーロッパにタバコが渡来したころは、葉巻とパイプ、一部上流階級の間では、嗅ぎタバコが流行した。紙巻が普及したのは、もっともおそいが、1520年にスペインがメキシコを征服した際に、先住民がすでにうすい植物性の材料でまいたタバコをすっていたといわれる。

紙巻が工場生産されるようになったのは、1840年代にフランスとロシアが初めで、ドイツ、オーストラリア、イギリスとひろまった。初期の製品は、手作業で製造されていたが、アメリカで60年代に、切りきざむ機械が発明され、80年代には紙巻装置が、89年には、缶入り製品の自動化がおこなわれた。機械化されてからは、刻みや葉巻にくらべ、携帯や喫煙に好都合であるところから、世界の各地で主流の喫煙方法になった。

分類:ナス科タバコ属。タバコの学名はNicotiana tabacum。マルバタバコはN. rustica