| 検索ビュー | 国債 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
中央政府(国)が発行した債券にもとづく借り入れ、もしくはその債券そのものをさす。政府の財源調達の一手段としておこなわれるこの債券発行を公債発行といい、そのうち中央政府が発行するものを国債、地方政府が発行するものを地方債という。国債は大きく建設国債と赤字国債に分類される。
| II. | 国債の種類と役割 |
国債は歳出に対し、税収や各種歳入によってまかなうことができない部分を補填(ほてん)する財源として発行され、根拠となる法、また償還期限や発行地によって分類される。
| 1. | 建設国債と赤字国債 |
「建設国債」は財政法4条但し書きを根拠に発行され、4条公債ともよばれる。その収入は公共事業費、出資金、貸付金のみにあてられる。建設国債による財源充当がみとめられる根拠は、租税のみの財源調達では負担がすべて現役世代にかかるのに対し、将来世代は建設された公共施設を負担なしで利用できることから、受益と負担の世代間不公平をならすという考えにもとづく。
「赤字国債」は歳出に対して財源が不足する際にそれを充当する目的で発行される。財政法上、赤字国債の発行はみとめられていないが、財政特例法(公債特例法)を制定することによって発行されることから特例公債ともよばれる。財政特例法は発行する年度ごとに承認、制定が必要とされる。
以上の建設国債と赤字国債が国債のほとんどを占めているが、このほかにも償還期限をむかえた国債を再度かりかえるために発行する「借換債」、歳入と歳出の時期的なずれから生じる一時的な資金不足をおぎなうための「政府短期証券」などがあり、それぞれの法的根拠にもとづいて発行される。
国債が無制限に発行されるのをふせぐため、上記のように発行に際しては法による規定がある。これは国債発行における「建設国債の原則」といわれ、赤字国債についてはこれも上記したように、よりきびしい財政特例法の制定が義務づけられている。
国債発行の原則にはもうひとつ「市中消化の原則」があり、中央銀行(日本銀行)による国債引き受けは原則としてはみとめられていない。中央銀行の引き受けをみとめると、貨幣供給量の増加によってインフレーションをおこす可能性があるからである。この市中消化の原則は、財政法5条で規定されている。しかしここにも但し書きがあって、国会の議決の範囲内で中央銀行による引き受けがみとめられている。
| 2. | 償還期限や発行地による分類 |
国債は償還期限によっても分類される。償還期間が1年未満のものを「短期国債」、10年のものを「長期国債」とよび、日本では長期国債が発行量の多くを占めている。ほかに短期国債と長期国債の間をとる「中期国債」、10年以上の「超長期国債」などもある。
国債が満期をむかえると償還しなければならないが、償還方法としては現金償還と借換償還がある。現金償還は国債費でつみたてられた国債整理基金特別会計を通じておこなわれる。借換償還は償還の財源を借換債の発行によって充当する。建設国債に関しては発行から60年以内に現金償還しなければならない。建設国債による公共事業の便益は60年間えられるであろうというのが理由である。
これら分類のほか、国内で発行される国債を「内国債」、外国で発行される国債を「外国債」とよぶ。
| III. | 歴史と現状 |
日本では、第2次世界大戦後の1947年(昭和22)に「財政法」が制定され、国債を財源としない財政運営を基本とする「財政均衡主義」がとりいれられた。これは、戦前・戦中を通じ、鉄道敷設などの大規模な公共事業や戦費調達などのために大量の国債が発行され、財政の不均衡、インフレの深刻化になやまされたことへの反省のうえに成立したものであった。
その後の財政運営は高度経済成長にともなう税収の自然増もあり、歳出の増加を国債でまかなうことなくおさめることができた。しかし、1965年に景気後退をうけて国債が発行され、以後、建設国債発行をともなう積極財政政策の導入によって、財政均衡主義から決別することになった。
その後、いざなぎ景気(1965年10月~70年7月)よる税収の自然増をうけて国債依存度(国債収入の歳出に占める割合)は低下したが、1970年代のニクソン・ショック(1971年のアメリカの金・ドル交換停止)や石油危機の影響による景気後退をうけて税収が減少、75年度補正予算では財政特例法による赤字国債が発行された。70年代後半には国債依存度が30%をこえるにいたった。
1980年代から90年代初頭にかけては、財政再建と好景気の影響によって赤字国債の発行は減少し、90年度(平成2)当初予算では赤字国債の新規発行がゼロになった。また国債依存度も10%代前半へと低下した。
しかし、1990年代のバブル経済崩壊とその後の景気低迷は、大幅な建設国債・赤字国債の発行をもたらすことになった。2003年度の国債残高は当初見込みで約450兆円、依存度は44.6%である。この間、国債をふくめた公債残高の増加に対して、1997年11月に「財政構造改革法」(「財政構造改革の推進に関する特別措置法」)が制定され、財政赤字の減少、赤字国債の新規発行抑制がはかられたが、長びく景気低迷の中で財政出動への要請が強く、同法は98年12月に停止された。
| IV. | 国債をめぐる議論 |
国債は将来的に償還されねばならず、その財源は租税である。不況時に減税や財政出動をおこない、その財源を国債発行にもとめた場合、基本的には将来の増税によってまかなわれることになる。好況時に償還や新規発行の抑制がおこなわれない場合、将来への負担は累積的に増大していくことになる。
日本における国債の発行額(新規発行と借換債)をみると、かならずしも好況時に大きく抑制されることはなく、不況時には一気に増加する。また残高も一貫して増加しつづけている。国債発行は負担が将来世代にまわるため容易におこなわれやすい反面、増税による償還は反発が大きくうけいれられにくい。そのような政治的要因が現在の国債の大幅な累積につながっているとも指摘されている。
増加する国債残高への危機感は、国債の持続可能性、すなわち将来的に財政破綻(はたん)をむかえることなく国債発行が可能であるかという議論もよびおこしている。すべての国債発行を忌避する必要はないが、国債発行があまりに大きなウェイトを占めてしまうと、償還資金の捻出(ねんしゅつ)のため財政の柔軟性がうしなわれてしまうからである。
しかし、国債の負担については、人々が国債をどのように認識するか、国債発行や税負担に対してさまざまな利害をもつ主体がどのような行動をとるかによって議論がわかれている。さらに、増加する国債残高への対応、財政改革は重要な課題として認識されているが、景気対策との兼ね合いから困難をきわめている。