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コンピューター
I. プロローグ

広い意味では、演算やデータ処理を実行する機器のことだが、現在ふつうには、記号であたえられた命令(プログラム)を解釈して、情報を処理する電子装置で汎用性のあるものをいう。計算だけをおこなうのは計算機だが、コンピューターが誕生した初期には、ほとんどが計算用につかわれたので、コンピューターのことを電子式計算機といっていた。

今日の高度情報社会は、コンピューターの発明と発展なくしては実現しえなかった。社会の至る所で、さまざまな形式のコンピューターがデータの蓄積と処理、各種システムの制御をおこなっている。コンピューターは、自動生産(CIM:FMS)の時代を開くとともに通信分野にも大きな発展をもたらし、研究や技術開発の分野でも不可欠な道具となっている。

データベースやコンピューター・ネットワークのサービスを利用すればさまざまな情報にアクセスすることができる。しかしその反面、管理社会化の問題をおこし、個人情報や機密情報への不正なアクセスをおこなうコンピューター犯罪もおこっている。コンピューター・セキュリティー

II. コンピューターの種類

コンピューターには、アナログコンピューターとデジタルコンピューターの2種類があるが、今日では、たんにコンピューターといえばデジタルコンピューターのみをさす場合がほとんどである。アナログコンピューターは、電気回路や油圧回路(サーボ機構)といった物理系と数学的な類似性があるため、これらのシミュレーションにもちいられる。デジタルコンピューターはあらゆる量を数値としてあつかい、まとまった桁(けた)ごとに演算して問題を解く。

アナログコンピューターとデジタルコンピューターの2つの要素をもつコンピューターはハイブリッドコンピューターとよばれ、アナログ量としてあたえられたデータをアナログ–デジタル変換によって、デジタル量としてデジタルコンピューターにわたして処理する。また、計算したデジタル量をアナログ量として出力することもできる。

1. アナログコンピューター

アナログコンピューターは電気回路または油圧回路などで構成されており、入力は数値ではなく電圧や油圧であたえられる。もっとも簡単なアナログコンピューターは計算尺である。計算尺は対数の目盛がついた定規のような形をしていて、掛け算や割り算などをおこなうことができる。

一般的な電気式アナログコンピューターでは、データは電圧に変換されて入力され、専用の回路で足し算や掛け算がおこなわれる。そして計算結果はディスプレーなどに連続して表示される。CRT:オシログラフ

2. デジタルコンピューター

デジタルコンピューターの動作はすべて、スイッチ(ゲート)が開いているか閉じているかの2つの状態で表現されている。すなわちコンピューターを構成している最小単位の回路は、この2つの状態の判断のみをおこなう。

実際には、回路のある部分の電圧が高いか低いかで判断されているが、人間がこの動作を考えるときには、この2つの状態をそれぞれ1と0に対応させる。コンピューターがこの判断をおこなう速度はひじょうにはやく、コンピューターの動作速度をきめるクロック周波数が100MHz(メガヘルツ:100万Hz)である場合、毎秒1億回程度の単純な演算が実行できる。

コンピューターが一度に1つのスイッチの状態しか判断することができなければ、このスイッチであらわすことのできる命令やデータは2種類しかない。すなわちスイッチがオンの状態に対応するものとオフの状態に対応するものである。

しかし複数のスイッチの状態を判断できれば、多くの命令や種類をあらわすことができる。たとえば、コンピューターが一度に2つのスイッチの状態を判断する場合、スイッチのあらわす命令はそのオン、オフの組み合わせの数である4種類となる。コンピューターの計算能力は一度に判断できるスイッチの数をふやすことによって飛躍的に高まってきた。

III. 歴史

足し算をおこなうことのできる世界で最初の機械は、1642年にフランスの哲学者で数学者のパスカルによって考案された。デジタルコンピューターの先駆けともいえるこの計算機は、10枚の歯をもつ歯車を連結していた。70年代に、ドイツの哲学者であり数学者でもあるライプニッツは、この計算機をもとに掛け算も可能な計算機を考案した。

フランスの発明家ジャカールは、規則的に穴を開けた木の板で複雑な模様をおれる自動織機を発明した。1880年代には、アメリカの技術者ホレリスがやはり規則的に穴を開けたカード(パンチカード)をもちいて統計データの処理をおこなうというアイデアを考えている。そして彼はパンチカードの穴を電気接点で読みとる装置をつかい、90年におこなわれた国勢調査の統計情報の処理をおこなっている。

1. 解析機関

同じ19世紀には、イギリスの数学者で発明家のバベッジが現代のデジタルコンピューターの原理を完成させている。彼は階差機関など多くの計算機を考案し、それによって複雑な数学の問題をあつかうことができた。科学史家は彼と彼の仲間のオーガスタ・エイダ・バイロン(詩人バイロンの娘)が現代のコンピューターにつながる発明者であると考えている。

2人の発明のひとつである解析機関とよばれる計算機は、今日でもコンピューターでつかわれる特徴を多くそなえていた。しかし当時の技術水準では2人のアイデアを実現することはできなかった。

2. 初期のコンピューター

20世紀初めには、アナログコンピューターがつくられはじめたが、初期のモデルは回転軸と歯車によって計算をおこなう機械式のものであった。2度の世界大戦の間に、アナログコンピューターは機械式から電気式になり、潜水艦で魚雷の進路を予測する装置や爆撃機の照準器の制御にもちいられた。また、ミシシッピ川の氾濫(はんらん)を予測するアナログコンピューターもつくられている。

1940年代に、アメリカのハーバード大学の数学者エイキンが最初のデジタルコンピューターと考えられるものをつくりだした。この機械は多数の加算器からなり、穴を開けた紙テープによってプログラムを供給した。エイキンはマークⅠからⅣまで、改良を重ねながら4つの計算機を開発した。

1945年になると、ハンガリー系アメリカ人の数学者フォン・ノイマンの考えにもとづくプログラム内蔵式のコンピューターがつくられた。このコンピューターはプログラムをいわゆるメモリーに格納するため、紙テープよりはるかに高速でプログラムを実行できた。また、解くべき問題がかわるたびに配線を変更する必要がなくなった。ノイマン型コンピューター

3. 電子コンピューター

エレクトロニクスの急速な発展により、1946年には初の完全電子式の汎用コンピューターが、アメリカのエンジニア、エッカートと物理学者のモークリーによってペンシルベニア大学でつくられた。もうひとりのアメリカの物理学者アタナソフは、自分がすでに考案していたアイデアを、41年6月にアイオワ州立大学をたずねてきたモークリーが無断で借用して、このコンピューターにつかったと主張した。この問題は、67年に当時のスペリー・ランド社が、自社の保有するENIACの基本特許をハネウェル社が侵害している、という主張によって訴訟がおこされて明らかになった。裁判は73年10月に結審し、アタナソフの主張を一部みとめるかたちで、ハネウェル社が勝訴した。

ENIACとよばれるこのコンピューターには1万8000本余りの真空管がつかわれ、1分間に数百回の掛け算をおこなう能力があった。プログラムは処理装置の配線をつなぎかえることで表現されていたので、プログラムをかえるときは手作業で配線を変更していた。この最初期のコンピューターは、軍事目的が主で大砲の弾道計算につかわれた。

1950年代末になると、トランジスターをつかったコンピューターがつくられるようになり、高速化、小型化、低消費電力化、長寿命化にくわえ、低価格化が格段にすすんだ。これらのコンピューターは真空管時代にくらべて性能が劇的に向上しているため、第2世代コンピューターとよばれている。

4. 集積回路

1960年代の終わりに集積回路(IC)が発明された(キルビー)。ICは1枚のシリコン基板の上に多数の素子をうめこみ配線したもので、個別のトランジスターにくらべてはるかに小型化、低価格化、および信頼性の向上を実現した。

1970年代半ばになると、大規模集積回路(LSI)の開発によって、マイクロプロセッサーが出現した。そしてのちには1枚のシリコン基板に数千のトランジスターを形成した超大規模集積回路(VLSI)が開発された。最近のマイクロプロセッサーでは数百万個のトランジスターを1枚の基板に形成しているものも市販されている。

1970年代のコンピューターは一度に8種類のスイッチの状態を判断することができた。すなわち一度に8桁(8ビット)の2進数からなるデータや命令を認識できたわけである。

8桁(けた)の2進数は1バイトとよばれる。1バイトの2進数は256通りの数をあらわすことができ、それぞれがコンピューターの命令やデータのひとつに対応する。たとえば、あるコンピューターでは、11010010という2進数(10進数で210)は、メモリーに記憶されている2つの数を比較する命令に対応している。

16、32、64ビットの数を認識できるマイクロプロセッサーの開発は、コンピューターの速度を向上させてきた。コンピューターが命令として認識する2進数の全体を、そのコンピューターの命令セットとよぶ。同時に認識できるビット数と命令セットの大きさは、今日のコンピューターの性能向上にともない増加しつづけている(CPU:互換CPU)。

IV. ハードウェア

今日のデジタルコンピューターは、その大きさという点をのぞけば、基本構造は昔のものと同じである。しかし現実には、価格や性能によっていくつかの種類にわけられている。

パーソナルコンピューターは、デスクトップサイズとよばれるように机にのる大きさの比較的低価格のコンピューターをさす。

また、パーソナルコンピューターには、ラップトップサイズやノートサイズのパソコンもある。ワークステーションは、パーソナルコンピューターとほぼ同じ大きさだが、画像の処理能力や通信のための機能が強化されていて、ビジネスや研究開発、エンジニアリング、デザインなど、より高度な用途での使用に適している。

メインフレームとよばれるコンピューターは、設置に専用の部屋が必要なほど大型であり、ひじょうに高価であるが、大量の処理を高速におこなうことができる。そのため、大企業、政府機関、研究所などでつかわれる。さらに、とりわけ大型で超高速処理が可能なものは、スーパーコンピューターとよばれる。

デジタルコンピューターは単一の装置ではなく、(1)CPU(中央演算処理装置)、(2)入力装置、(3)記憶装置、(4)出力装置、(5)バスとよばれる信号経路、の5つの部分から構成されている。バスはほかの4つの部分を接続する役割と、コンピューターを外部の装置に接続する役割をはたしている。

1. CPU(中央演算処理装置)

CPUは1つまたは複数のチップから構成されており、算術演算と論理演算、そしてコンピューターのほかの部分の制御をおこなう。集積回路技術によって生まれたマイクロプロセッサーは、1つのチップにCPUとその周辺回路が内蔵され、現在のパーソナルコンピューターのほとんどにつかわれている。今日ではこのマイクロプロセッサーをCPUとよぶことが一般的で、MPUという表現もされる。

CPUチップやマイクロプロセッサーは(1)演算/論理ユニット、(2)レジスター群、(3)制御部、(4)内部バス、の4つの部分から構成される。演算/論理ユニットは、算術演算と論理演算をおこなう部分である。レジスターは、計算途中の結果やメモリーのデータの位置などを一時的に記憶しておく部分である。制御部は、メモリーから読みこんだ命令を解釈し、それを実行するための指令をCPUの各部に出すなど、CPU全体の制御をおこなう。

内部バスは、CPUの各部分を接続して、外部とデータのやりとりをおこなうための3種類のバスをCPU外部に出している。コントロールバスは、データ以外の信号を外部からうけとったり、CPUの信号を外部に出力したりするためにつかわれる。アドレスバスは、メモリーのデータ位置(メモリーアドレス)を外部に出力するための一方通行のバスである。データバスはメモリーからデータを読みこんだり、メモリーに新しいデータを書きこんだりするための双方向のバスである。

2. 入力装置

入力装置はユーザーがCPUにデータやコマンド、そしてプログラムを入力することを可能にするものである。もっとも一般的な入力装置はキーボードとマウスである。キーボードから入力された情報は、コンピューターが認識可能なパターンに変換される。キーボードは、日本の製品の場合、日本語入力のためのキーが追加されていたり、配列自体独自のものを採用しているケースもある(日本語情報処理)。マウスは、画面上の位置を指定して入力するための装置である。また、マウスと同じ機能の装置に、トラックボールや、パッドの上を指でなぞってマウスポインターを移動させるタッチパッドやトラックパッドなどとよばれるものがある。

ライトペンは電子的な板のような入力装置から図形情報を変換してコンピューターに入力することができる。マウスやジョイスティックは、その動きに連動してコンピューターの画面上のカーソルがうごき、画面の特定の部分を選択したり図形の入力をおこなうことができる。また、画面上を直接指やペンで接触したり、文字を書いて入力できる表示装置もある(タッチスクリーン)。ポインティングデバイス

光学式スキャナーは、印刷された文字や写真を読みとり、コンピューターが認識できるかたちに変換する(OCR)。音声認識モジュールは、人間の声をコンピューターが理解できるデジタル信号に変換する。

入力装置によって入力されたさまざまなデータは、記憶装置にたくわえられ、処理装置によって処理される。

I/O

3. 記憶装置

データやプログラムを記憶する装置は、メモリーのほかに磁気ディスク装置などの外部記憶装置がある。メモリーは多数のコンデンサーを内蔵した半導体素子で構成され、このコンデンサーの電荷の有無によって記憶が生じる。

RAM(ランダム・アクセス・メモリー)は、記憶の状態を外部からの信号によってかえることができるので、記憶内容を自由に書きかえることができる。しかし電源を切ると記憶内容はすべてうしなわれる。DRAM:SRAM

一方、ROM(リード・オンリー・メモリー)は、あらかじめ記憶の状態がセットされていて、記憶内容の書き換えはできない。しかし電源を切っても内容が消去されないので、コンピューターの電源をいれたときにCPUが最初に必要とするプログラムやデータ、およびCPUが頻繁に必要とするプログラムやデータのうち、書きかえられては不都合なものが記憶されている。メモリーはふつうCPUのあるメイン回路基板(マザーボード)上に実装されている。

外部記憶装置はマザーボードの外におかれ、データは磁気ディスクや磁気テープに記録される。もっとも一般的な外部記憶装置は、フロッピーディスクとハードディスクである。フロッピーディスクは数十万から100万バイト以上のデータを記憶でき、自由に持ち運びのできる記憶媒体である。

ハードディスクはふつう装置のキャビネットに固定されていて取り外しはできないが、数億バイト(数百メガバイト)から数十億バイト(数ギガバイト)のデータを記憶できる。ディスク部分がカートリッジになっており、持ち運びができるようになった製品もある。CD-ROMは原理的には音楽用コンパクト・ディスク(CD)と同じだが、コンピューター用のデジタルデータを書きこんだCDである。数億バイトの記憶容量がある。CD-ROMは書き込みができないが、書き込みが1回だけできるCD-R、何度も書き換えが可能なCD-RWがある。ほかに、光磁気ディスク(MO)やDVD、PDなどの媒体もある。

また、ワークステーションなど、あつかうデータが膨大なコンピューターや、ハードディスクのバックアップには、ストリーマーとよばれるDATなどの磁気テープをもちいた記憶装置もつかわれる。

4. 出力装置

出力装置は、コンピューターの計算結果や処理結果を利用者につたえるための装置である。もっとも一般的な出力装置は、ビデオ表示端末(VDT、モニター)である。VDTとしては通常テレビと同じCRT画面がつかわれるが、ノートサイズなどの小型コンピューターでは液晶表示装置(LCD)やエレクトロ・ルミネセンス(EL)表示装置、プラズマ表示素子がもちいられる。表示素子

ほかの出力装置としてはモデムとプリンターが代表的である。モデムは、デジタル信号をアナログ信号に変換して、公衆電話回線をとおして2つ以上のコンピューターをつなぐ装置である。ISDNのようなデジタル通信網に接続する場合はターミナル・アダプターとよばれる装置が必要になる。ドットマトリックス・プリンター:レーザープリンター:ラインプリンター

5. オペレーティング・システム(OS)

オペレーティング・システムは別名基本ソフトともよばれ、データ処理の主役となるプログラムである。このプログラムは、メモリーに常駐して利用者のあたえるコマンドを解釈し、ディスプレーへの表示や印刷、アプリケーションの実行、周辺機器とのデータのやりとりなど、さまざまなサービスをユーザーに提供する。パソコンの分野では、GUIを多用し、初心者にもわかりやすいWindowsやMac OS(Macintosh)のようなOSが一般的となっている。インターフェース:API

コンピューターの電源をいれると、まずオペレーティング・システムのプログラムがハードディスクなどの外部記憶装置からメモリーに読みこまれて実行される。こうしてはじめてコンピューターは、利用者からのコマンドをうけつける状態になる。

V. プログラミング

プログラムは、コンピューターのCPUにあたえる命令で、記号列である。プログラムがあたえられてはじめてコンピューターは意味のある仕事をするが、プログラミングされた内容以上のことも以下のこともおこなわない。

プログラムは、ハードウェアにくみこまれる場合と、ソフトウェアとして独立して外部からあたえる場合とがある。電卓(計算機)や腕時計、電子レンジなどにつかわれるマイクロプロセッサーは特定の仕事をするだけなので、ハードウェアにくみこまれたプログラムによってうごいている。多目的でつかわれるコンピューターでも、頻繁につかう特定のプログラムはROMの中にくみこまれているが、全体としての仕事は外部からあたえられるソフトウェアに依存している。

ソフトウェアの中で、OSのように利用者がコンピューターを利用するための基本的な環境を用意するものは、システムプログラムともよばれる。一方、ワードプロセッサーや表計算(スプレッドシート)などのソフトウェアは、システムプログラムの提供する機能をつかって利用者に特定の機能を提供するものであり、アプリケーションプログラム、略してアプリケーションとよばれる。

1. 言語

コンピューターに対する命令は、それが理解できる言葉であたえなければならない。すなわち、スイッチのオン/オフの組み合わせで表現される特定のデジタル情報である。

初期のコンピューターでは、真空管でつくられたスイッチを手作業で接続してプログラミングをおこなっていた。これは多大な労力を必要とし、ごく単純な仕事のプログラミングもプログラマーがチームをくんで数日かけておこなっていた。それ以来、プログラミングを容易にするためのプログラム言語が多数考案されてきた。

2. 機械語

コンピューターが直接理解できる言語は機械語とよばれ、人間にとってはスイッチのオン/オフに対応した2進数にあたる。しかしこれは人間にとってきわめてわかりにくく、プログラミングをおこなうときもメモリーに直接2進数を書きこんでいかなければならない。

3. アセンブリー言語

プログラミング作業の負担をへらすために考えられた方法のひとつが、アセンブリー言語によるプログラミングである。アセンブリー言語は機械語の命令ひとつひとつに英字3文字程度のわかりやすい名前(ニーモニックコード)をつけたもので、これによって書かれたプログラムは動作がわかりやすく、また誤り(バグ)の修正(デバッグ)もやりやすくなった。

アセンブリー言語で書かれたプログラムはアセンブラーとよばれるプログラムによって機械語に翻訳され、コンピューターで実行される。

しかし機械語はCPUの種類によってちがうため、プログラマーはCPUがかわるたびに別のアセンブリー言語を理解しなければならない。そこで開発されたのが高級言語である。

高級言語は1つの命令の動作が数十個から数百個の機械語に対応し、より人間の理解しやすいかたちでプログラムを書くことが可能になっている。そして高級言語で書かれたプログラムは、CPUの種類ごとに用意された翻訳プログラムによって機械語に変換されてから実行されるため、プログラマーはその高級言語だけを理解すればよい。

なお、高級言語に対してアセンブリー言語を低レベル言語(または低級言語)とよぶことがある。

4. 高級言語

高級言語では、LIST、PRINT、OPENなどの日常でもつかう英単語がよくもちいられる。キーボードや記憶装置から入力されたこれらの命令は、翻訳プログラムによってそれぞれ数十個から数百個の機械語に翻訳されて実行される。

翻訳プログラムには、インタープリーター(インタープリーター言語)とコンパイラーの2つのタイプがある。インタープリーターは、人間の言語では逐語訳や同時通訳に相当し、高級言語のプログラムを1命令ごとに機械語に翻訳しながら実行する。これに対してコンパイラーは、実行前にプログラム全体をまとめて機械語に翻訳する。したがって、コンパイラー方式のほうがプログラムが高速に実行される。

4.A. 最初の高級言語

アメリカのコンピューター科学者ホッパーは、最初の商用のプログラム言語を開発した人物として知られている。彼女はUNIVAC ⅠおよびⅡというコンピューター上で、商用として実用にたえられる高級言語FLOW-MATICを開発した。また、IBMは複雑な数式の計算をおこなうための言語FORTRAN(FORmula TRANslator)を1958年ごろに完成させた。

4.B. FORTRANとALGOL

1957年、アメリカの計算機学会(ACM)とドイツの応用数学力学会(GAMM)が母体となった委員会が、FORTRANで指摘された欠点を克服した言語の開発に着手した。そして1年後にはALGOL(ALGOrithmic Language)を発表した。

ALGOLはFORTRANとならぶもう1つの科学技術計算用言語として、1960年代から70年代にヨーロッパで広くつかわれたが、それ以降はほかの言語の出現によってすたれていった。一方、FORTRANはALGOLに先だって膨大なプログラムが蓄積されていたため、現在も科学技術計算の分野を中心に広くつかわれている。

4.C. COBOLの誕生

COBOL(COmmom Business Oriented Language)は、商用およびビジネス用途のプログラミング言語で、データの組織化やファイルの扱いに重点がおかれている。COBOLは今日でもビジネスの分野で広くつかわれている。

4.D. BASICとパソコン

BASIC(Beginner's All-purpose Symbolic Instruction Code)は1960年代中ごろにダートマス大学のケメニーとカーツが開発した言語で、専門家以外のコンピューター利用者を対象にしている。この言語はインタープリーター方式のため実行速度がおそく、文法も洗練されたものではなかったが、習得が容易でつかいやすかった。

そして1970年代から80年代にかけて家庭にパーソナルコンピューターが普及していった時代に、たいていのパーソナルコンピューターがBASICインタープリーターをROMに内蔵していたため、この言語は急速に広まった。パソコン

4.E. その他の高級言語

これら以外にもさまざまなプログラム言語がある。Pascalはプログラミングの教育用に開発された言語であるが、今日ではもっともポピュラーな言語のひとつである。また、子供のコンピューター教育用の言語としてはLOGOが有名である。

C言語は1970年代にアメリカのベル研究所で開発された言語で、おもにオペレーティング・システムなどのシステムプログラムの開発にもちいられている。また人工知能の研究分野では、LISPやPrologといった言語がもちいられている。

VI. コンピューターの将来

現在、コンピューターのハードウェアの世界では、小型化と高速化のための研究が盛んである。研究者たちは、より大規模な回路をより小さなチップで実現することや、より高速に回路を動作させてコンピューターを高速化することに力をそそいでいる。

1. ネットワーク技術

今日ではコンピューター・ネットワークも重要な技術となっている。インターネットは世界規模のコンピューター・ネットワークの実例である。コンピューター・ネットワークはコンピューター相互の情報交換だけでなく、一つの仕事を何台かのコンピューターで分担して遂行するといったことも可能にする。ネットワーク:分散オブジェクト

とくにエンジニアリングでおこなわれるこうした分担は、コンカレント・エンジニアリングとよばれ、そのためのソフトウェアやハードウェアの研究も盛んにおこなわれている。

2. 並列コンピューター

また、コンピューター研究のもう1つの流れとして、第5世代コンピューターのプロジェクトが各国ですすめられてきた。これは創造的な仕事をおこなうコンピューターを実現する研究で、最終的な目標は知的能力をもつコンピューターの実現である。そのための手段として注目されているのが並列処理コンピューターである。これは、多数のマイクロプロセッサーを協調させながら同時にうごかし、複雑な処理を高速に実行させるものである。

また、並列処理をおこなうコンピューターは、一般の用途でも処理の高速化のための手段として有効である。現在では商用の並列処理コンピューターも多く存在する。コネクション・マシンのように多数のマイクロプロセッサーを立体的に結線したコンピューターは、神経回路網と似た構造をもっているところから、逐次処理ではむずかしかったパターン理解などの、人間の脳がもっている高次の機能を実現できる可能性ももっている。パーセプトロン:自然言語処理

3. 素子技術

現在進行しているコンピューター分野の技術開発は、集積回路の高密度化である。小さな面積に大量の素子を形成するために、超微細加工技術の研究開発がすすめられている。しかし、小さな平面に素子を高密度に配列することがしだいに困難になってきているため、現在の集積回路を重ねたような3次元素子の研究もおこなわれている。ウェハー

一方、現在主流のシリコンのほかに電子の移動速度が大きいガリウム–ヒ素系などの化合物の半導体をつかった素子、電子や正孔の動きではなく(半導体)磁性体中の電子のスピンを利用するスピントランジスター(永久磁石)などの素子技術も研究されている。

こうした素子の材料は、原子レベルのきわめてうすい膜を重ねてつくる。結晶は超格子とよばれ、分子線エピタキシーなどの技術がつかわれる。ほかに高温超伝導物質をつかった高速のジョセフソン素子(ジョセフソン効果)、光半導体をつかい電子と光による集積回路をつくる研究なども盛んである。さらにかわったものでは、個別の素子をみわけられないほど微小にした素子、光応答性タンパク質や電子伝導性タンパク質を材料にしたバイオチップ、電子の流れの代わりにDNAの配列によって論理を表現するコンピューターなども研究されている。ニューロチップ