| 検索ビュー | 宝石 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
天然に産する鉱物で、その美しさや希少性による価値、かわらぬ耐久性を満足させるものをいう。さらにのぞましい点として、かたいこと(→ 硬度)と、熱や圧力、身の回りにある化学製品などに対して抵抗力が強いことがあげられる。
宝石になる鉱物では、エメラルドやアクアマリン、ヒスイ輝石(→ ヒスイ)などのケイ酸塩(→ ケイ酸塩鉱物)、ルビー、サファイア、クリソベリルなどの酸化物、ダイヤモンドのように炭素のみからできている元素鉱物がおもなものである。ラピスラズリのように2、3の鉱物があつまったものもある。動物や植物がつくった、サンゴ、真珠、コハクなども宝石としてあつかわれる。
| II. | 歴史 |
宝石は、たんなる装飾品ではなく、宗教、権威、富のシンボル、魔よけとして、古代からもちいられてきた。初期は貝、動物の骨や象牙などを加工していたが、しだいに金や石でつくるようになった。4500年前には、中国でヒスイの彫刻技術が確立されていたと思われる。
同じころの古代バビロニアや古代エジプト(→エジプトの「歴史」)でも、ラピスラズリ、紅玉髄(→ 玉髄)、トルコ石、アメシスト(→ 石英)などをつかって宝飾品をつくっていた。エジプト人は、シナイ半島でトルコ石、アスワンでアメシスト、遠くアフガニスタンでラピスラズリを採掘していたといわれる。古代ローマ(→ ローマ史)では、メノウのカメオがとくにこのまれていた。
古代サンスクリットの写本には、2000年以上前にインドからダイヤモンドの産出が記録されているように、インドやスリランカ、ミャンマー地域では砂礫中(されきちゅう)に宝石鉱物が多い。ダイヤモンドやサファイア、ルビー、スピネルなどが何世紀にもわたり採掘され、近代宝石の重要な源となった。
コロンビアのエメラルドが最初にヨーロッパにもちこまれたのは16世紀のことであり、ブラジルのクリソベリル、トルマリン(→ 電気石)、トパーズなどの鉱床が開発された。19世紀になると、南アフリカのダイヤモンドやオーストラリアのオパールが発見されている。20世紀には、シベリア、アフリカ各地、オーストラリアでダイヤモンド鉱床が知られるようになった。
→ 装身具
| III. | 3つの条件 |
| 1. | 美しさ |
宝石の美しさにはさまざまな種類がある。たとえば、ダイヤモンドの炎のようなきらめき、ルビーやラピスラズリなどの鮮やかな色の美しさ、みる角度によってさまざまな色が変化するオパール、内部から柔らかな光をはなつムーンストーン(→ 長石)、ヒスイのもつ半透明性の微妙な輝きといったものがある。これらは、光がそれぞれの鉱物のもつ特有の屈折率と内部構造によってさまざまな現れ方をすることによる。
さらに、ルビーのスター効果、クリソベリルのキャッツアイ効果、サンストーン(→ 長石)の火の粉のようなきらめきなどは、内部に別の鉱物が包有物として存在するためにおこる。宝石鉱物の多くは、産出したそのままの状態では、それほどうつくしくないので、鮮やかな色や輝きをひきだすためにカットや研磨をおこなう。
スター効果についてはルビー、キャッツアイ効果については猫目石を参照。
| 2. | 希少性 |
宝石に美しさは当然の条件であるが、それに希少性がくわわって価値が高まる。宝石鉱物の中には、ふつうに産するものが少なくないが、とくに色や透明度にすぐれ、内部の傷がないといった条件をみたすものはまれである。たとえば、石英は地殻にひじょうに多く産するが、ほとんどは白から灰色の透明感が少ないものである。しかし、まれにうつくしいアメシストや色の変化にとんだ縞メノウ(→ メノウ)などがある。
また、産出量がもともと少ないものもある。ダイヤモンドはキンバーライト(→ 橄欖岩)という特殊な岩石にふくまれているが、この岩石100t当たり5g(25カラット)ほどしか産出しない。品質がよく、大きいものはさらに希少性がまし、信じがたい価格がつけられる。宝石の市場価格は、色、内部の傷の程度、重さできめられる。重さは、カラットで表示され、1カラット=0.2gである。
| 3. | 耐久性 |
宝石は長期間にわたって変質しないことと、簡単にこわれないことが必要条件である。鉱物には、滑石の1からダイヤモンドの10までの相対的な硬度(モース硬度)がきめられている。宝石としては、なるべくかたいほうがのぞましく、ふつうは石英の7かそれ以上の硬度の鉱物が対象となる。しかし、石英より硬い鉱物でも、衝撃によって簡単にわれてしまうことがある。これは鉱物を構成する原子の結合力が方向によってちがいすぎるためにおこる。トパーズやダイヤモンドなどでみられる平面的な割れ口がこの例で、これを劈開(へきかい:→ 鉱物学)という。
ジルコン、エメラルドなどは劈開がないが、衝撃に対して比較的もろい。硬度が7かそれ以下であっても、ヒスイ、メノウなどひじょうに細かい結晶がからみあってできている鉱物は、きわめて頑丈である。
| IV. | 性質と特徴 |
| 1. | 光学的性質 |
すべての鉱物は、特有の光学的性質をもっているので、この性質を利用して鑑定することができる。等軸晶系(→ 結晶)と非晶質の鉱物は、屈折率が1つしかないので、鉱物にはいった光はどの方位にもひとしく屈折する。その他の晶系の鉱物にはいった光はすべて2つに分離し、ひとつは入射方向と同じに、もうひとつはことなった経路ですすむ。このような鉱物は、それぞれ固有の最大と最小の屈折率をもち、これらの差を複屈折とよぶ。
鉱物の表面が光をうけたときの輝き方を光沢というが、これは屈折率や反射率にもっとも影響される。しかも透明度や包有物によっても左右されることがある。ダイヤモンドのように光沢がとくに強いものを金剛光沢というが、ルビー、エメラルド、トパーズなど、大部分の宝石は、ガラス光沢である。トルコ石、ネフライト(→ ヒスイ)、コハクなど光沢の弱いものは、脂肪光沢あるいは樹脂光沢という。
| 2. | 色 |
自然光が鉱物にはいると、特種な元素の存在、結晶構造の欠陥や不規則性などによっていくつかの波長の吸収がおこる。したがって外にでた波長だけを鉱物の色としてみることができる。宝石の色を決定する重要な元素としては、クロム、鉄、マンガン、チタンなどがある。クロムは、エメラルドやヒスイの緑色、ルビーの赤色となり、鉄はガーネット(→ ザクロ石)、スピネル、サファイア、ペリドット(→ 橄欖石)などの赤、青、緑、黄色となる。チタンと鉄の組み合わせでサファイアのもっとも高貴な青色がでる。
微量な元素による発色は、加熱あるいはX線やガンマ線をあてることにより強められたり、脱色されたりする。市販の多くの宝石はこのような人工処理がほどこされている。色をきめる元素が鉱物の主成分である場合には、たとえば、バラ輝石のピンク色(マンガン)、トルコ石の青色(銅)、クジャク石の緑色(銅)など、その鉱物が化学的に分解しないかぎり色は安定である。
ダイヤモンドをはじめ宝石にみられる炎のようなきらめき(ファイア)は、自然光が結晶内部を通過する間に分散をおこし、虹のような分光として、みる人の目にはいるからである。オパールのようにケイ酸球が規則ただしくつみかさなっていたり、ラブラドライト(長石の一種)のように内部が透明なうすい層からできたりしているものは、光の干渉によってさまざまな色があらわれる。
| V. | カットと研磨 |
「玉、みがかざれば光なし」というように、ほとんどの宝石は、研磨してはじめて美しさがあらわれる。全体が丸あるいは卵形で、上部が曲面のカボション・カットは、もっとも単純で古くからあるものである。しかし、現在でも、半透明から不透明な宝石の色や模様をうまく表現するためにもちいられる。なかでもスター効果やキャッツアイ効果をだすには最適である。
多数の切子面(ファセット)でかこまれたファセット・カットは、ほとんどすべての透明な宝石につかわれる。鏡のように平滑に研磨する技術と、宝石の光学的特徴の知識が要求される。上部の面(クラウン)で反射する光と、結晶の中にはいり底面(パビリオン)で反射し、ふたたびクラウンをへてもどってくる光がまじりあって、炎のようなきらめきや色彩をみせる。できるだけパビリオンで全反射がおこるように、宝石の屈折率を考えてカット面の角度をきめなければならない。したがって、わるいカットだと、炎のようなきらめきはみえず、たんにすきとおった感じになる。
ダイヤモンドをはじめ多くの透明な宝石につかわれるブリリアント・カットは、この性質を厳密に追究したカットの代表である。大まかな切断はダイヤモンドの小粒がうめこまれた回転鋸(かいてんのこ)でおこない、そのあとカーボランダム(合成の炭化ケイ素で、硬度9.5)やダイヤモンド微粉の研磨剤などをもちいてしあげていく。カットの技術についてはダイヤモンドを参照。
| VI. | 人造宝石 |
宝石が高価でまれなものであるため、昔から類似品をつくる努力がなされてきた。「イミテーション」は、模造宝石のことで、本物に似ているが、まったく別の鉱物や人造物質で代用したものである。とくにガラスは、さまざまな色がつけられ、さらに屈折率をかなり調整でき、カットも容易であるため、このんでもちいられてきた。しかし、ガラスは多くの宝石にくらべて硬度が低く、もろいのが特徴である。また、内部には泡や渦巻き模様などが観察されることがある。
近年では、ダイヤモンドに似たキュービック・ジルコニア(→ ジルコニウム)やYAG(ヤグ)とよばれるイットリウム・アルミニウム・ガーネットなど、鉱物として存在しない合成物がつくられている。屈折率が高く、見た目にはダイヤモンドと簡単に区別できないので、鑑定には熱伝導率などの違いが測定できる装置が必要である。
合成宝石は、本物の宝石鉱物と同じ化学組成、結晶構造をもつ物質である。20世紀初頭にフランスの化学者オーギュスト・ベルヌーイによって宝石クラスのルビーが合成されたのが始まりである。宝石だけでなく工業にも重要な用途があるため、合成技術の進歩はいちじるしく、今ではほとんどの宝石鉱物が合成できるようになっている。結晶が成長していったときのわずかな内部組織の違いはあるものの、光学的性質や硬度、比重はほとんど同じなので、本物との区別はきわめて困難である。
| VII. | 生成と産出 |
宝石鉱物の多くは、地殻の深部やさらに深い上部マントル(→ マントル)といった高い圧力と温度の場所で生成される。これらは、造山運動やマグマの噴出にともなって地表にはこばれてくる。ダイヤモンド、ルビー、サファイア、スピネル、ペリドット、ジルコン、ガーネットなどがある。
結晶片岩(→ 片岩)や片麻岩中にはエメラルド、ヒスイ、ルビーなどが、マグマが地殻の浅い場所で泥質の堆積岩、石灰岩などと接する所では、ガーネット、紅柱石、スカポライト、ラピスラズリなどの鉱物がつくられる。花崗岩の多くはペグマタイトをもち、その中には水晶(→ 石英)、アクアマリン、トルマリン、トパーズ、リチア輝石(→ 輝石)などをふくんでいる。
このような岩石が地表で風化すると、宝石鉱物が分離され、流れによってはこばれ砂や礫(れき)の中にあつまる。地表近くでは、雨水や地下水によって金属鉱物が分解されて別の鉱物に再生成される。クジャク石、トルコ石などはこの例である。また、ケイ酸分がゆっくりと堆積岩にしみこんで沈殿すると、オパールができる。火山岩の空隙(くうげき)にもアメシスト、メノウといったケイ酸塩鉱物がみられる。日本では、わずかにヒスイ、トパーズ、メノウ、オパール、各種の水晶などが産するにすぎない。