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| I. | プロローグ |
水や蒸気、ガスなどの流体の運動エネルギーを、機械的なエネルギーに転換する回転式の機械。タービンの中にある基本的な要素は、回転体の周囲にさまざまな形の羽根などを全周にそなえたもので、ローターとよばれる。
その仕組みは、流体が羽根にあたって回転体の軸を回転させ、エネルギーを発生し、この機械的エネルギーが駆動シャフトにつたえられて、機械やコンプレッサー、発電機、あるいはプロペラなどをうごかす。
タービンは、水力タービン、蒸気タービン、あるいはガス・タービンに分類される。今日では、タービンによる発電機が世界の電力の大半を生みだしている。発電用の風車は、風力タービンとして知られている。
| II. | 水力タービン |
| 1. | 水車 |
もっとも古く、もっとも簡単な水力タービンは水車である。古代ギリシャではじめてつかわれ、その後、古代および中世ヨーロッパのほとんどの国で、穀物をひくために利用された。水車は、流れのはやい小川や水路におかれた放射状の羽根車に回転軸がとりつけられたもので、その出力はおよそ0.5馬力である。
水平水車(水平な回転軸が垂直な外輪にとりつけられている水車)は、紀元前1世紀にローマの建築家であり技術者であったマルクス・ビトルビアス・ポリオによってはじめて紹介されたものである。これはいわゆる、アンダーショット水車(下射式。下をながれる水の力でうごき、外輪をそなえた水車)であったが、2世紀ごろまでに、もっと効率のよいオーバーショット水車(上射式。上から落下する水でうごく外輪をそなえた水車)がつかわれるようになった。木造の水車の最高出力は、中世には、3馬力から50馬力に増大した。
| 2. | タービンへの改良 |
水車からタービンへの移行には大きな意味がある。水車の設計に関して、理論的な基礎をうちたてようとした最初の試みは、18世紀のイギリスの土木技術者ジョン・スミートンによるもので、彼は、オーバーショット水車のほうが、ずっと効率的であることを証明した。しかし、フランスの技術将校ジャン・ポンセットは、まがった羽根をもつアンダーショット水車を考案し、効率を従来の70%近く増大させた。
もうひとりのフランスの技術将校クロード・ブルディンは、回転速度の技術論の中で、タービンという用語をはじめて使用した。セント・エチエンヌの鉱山学校で、ブルディンのもとで勉強したベノイト・フォルニーロンは、フランスの鉄工所のために、60rpm(毎分の回転数)で50馬力の出力がある水車を設計し製作した。最終的に彼は、2300rpmでうごき、80%以上の効率で60馬力をだすタービンを開発した。
| 3. | フランシス水車 |
フォルニーロンのタービンは、すばらしい性能にもかかわらずある種の欠陥をもっていた。水が放射状に外側にむかって通過する結果、水流が減少したり負荷がなくなるのである。これに対し、イギリス生まれのアメリカの技術者ジェイムズ・B.フランシスは、水が内側にながれるタービンを設計した。この反動水車またはフランシス・タービンとよばれる水車は、10~100mの高さがある水柱に相当する水圧、または落差を利用する水力タービンとして普及した。この種のタービンは、羽根の通路を水が通過する際の圧力エネルギーを拡大することによって作動する。その結果、水車を回転させる接線方向の力、ないしは反動が生じるのである。
| 4. | ペルトン水車 |
90~900mの落差の水を利用できる装置として、アメリカの技術者レスター・ペルトンの名前にちなんだペルトン水車が、19世紀の後半につかわれるようになった。
この水車では、高い位置に貯蔵された水が、長い導水管または導水路を通じて噴出口にながされ、そこで落下エネルギーは高速の運動エネルギーに転換される。この高速流水がまがったバケットにむけられ、流れを180°近く転回させて運動エネルギーを生みだす。ペルトン水車の動作原理は、膨張する水の反動ではなくて、水車に対する流水の衝撃によるものなので、この種の水車は、衝動水車ともいわれている。
| 5. | カプラン水車 |
20世紀の初期に、水力発電に対する需要がますます増加し、3~9mの落差の小さいダムでも利用できる適当なタービンの必要性が高まった。1913年に、オーストリアの技術者ビクター・カプランが、はじめてプロペラ・タービン(カプラン水車)を提案した。
これは、基本的には、船舶のプロペラを逆回転させるのに似た動作をするものであった。カプランは、後にこのタービンを、羽根と軸のとりつけ角度が回転するように改良した。この可変ピッチの羽根は、水の落差または流量に対して羽根を最適角度にすることで、効率を改善した。
| 6. | 流水量の調節 |
水力発電機によって生みだされる電圧を一定にするために、タービンの速度は、そこにかかる水圧の変化にかかわりなく、一定にたもたれなければならない。このため、フランシス水車もカプラン水車も、流量を制御するために、案内羽根の入り口をあけたりとじたりする大がかりな制御機構が必要となる。
カプラン水車の場合は、羽根のピッチをかえるための制御が必要となる。ペルトン水車の装置では、流水は供給ノズルを開閉して調節する。この場合は、長い導水管の中の急速な流量の変化が、ウォーター・ハンマーとよばれるはげしい水圧を生じ、ときには破壊の危険もあるので、一時的にあふれた水をのがすバイパス・ノズルの設置が必要である。
この調節は、供給ノズルと放水ノズルの両方を通過する水の総量を、バイパス・ノズルをとじるのにあわせて、一定にしておかなければならない。バイパス・ノズルの閉鎖は、ウォーター・ハンマー現象が発生しないように、ゆっくりとやらなければならない。
| III. | 現代のタービン設計 |
現代の水力タービン装置は、より落差の大きい、大規模なものにむかう傾向にある。設備の規模に応じて、カプラン・タービンは最高60m、フランシス・タービンは最高600m程度までの落差につかわれるのが一般的である。
| 1. | 最高落差と最大設備 |
ペルトン水車をつかった世界で最高の落差(約1770m)の設備は、オーストリアのライセックにある。また、世界で最大の設備は、ブラジルのイタイプダムの発電所に設置されているが、ここには、おのおの700MW(メガワット:メガ=100万)の能力をもつ18基のフランシス水車が設置されており、合計で1万2600MWの発電能力がある。
北アメリカで最大の設備は、東部カナダのジェイムズ・ベイのラ・グランデにある。ここには、おのおの333MWの能力をもった22基の発電機があり、合計で7326MWの能力がある。アメリカ合衆国最大の設備は、コロンビア川にかかっているグランド・コーリー・ダムにあり、合計で約6500MWの能力がある。
| 2. | 小規模設備の見なおし |
アメリカで1930年以前につくられた低落差で小規模な水力発電設備の多くは、維持費と人件費が高いために、後に放棄されたが、石油や石炭のコストが高くなってきたので、ふたたび関心があつまってきた。ほとんど水平な回転軸をもった、規格化された羽根水車が開発されるにつれ、小規模な設備が関心をひくようになったのである。
| 3. | ポンプ・タービン |
タービンは、逆にまわしてポンプとしてつかうように設計することもできる。これは、発電機をモーターに転換すればできるということである。電力は経済的に蓄積できないので、閑散時に原子力発電所や火力発電所の電力をつかって、いわゆるポンプ・タービンをうごかして、貯水池に水をためることができる。そうすればその水は、ピーク時にタービンを稼働させるために、ふたたびつかえる。最近では、ポンプ・タービンの技術は、600mの水の落差で、400MW以上の能力をもつように開発されてきた。このような水力発電を、揚水式(ようすいしき)発電という。
| IV. | 蒸気タービン |
水力タービンの成功は、必然的に、タービンの原理をつかって、蒸気から動力をひきだそうとする考え方に発展していった。
| 1. | 蒸気機関と蒸気タービン |
ワット型の往復運動の蒸気機関は、蒸気の圧力を利用したものであるが、タービンは、蒸気の運動エネルギーを利用することによって、もっと高い効率を達成することができた。蒸気タービンは、同じ馬力の蒸気機関よりも、もっと小型で、軽く、ずっと低価格でつくることができる。さらに従来の蒸気機関よりも、はるかに大きいものをつくることができる。また蒸気タービンは、往復運動を回転運動に転換する、クランクシャフトのようなものをつかう必要はなく、直接回転運動を生みだすという利点がある。その結果、蒸気タービンは、大きな発電所では主流となり、ジェット推進装置としてもつかわれている。
蒸気タービンは、原子力発電や原子力船の推進装置としてもつかわれている。蒸気タービンは、燃料をたき、ボイラーの水を加熱して発生した蒸気でうごく。熱と電気の両方を必要とする機械では、蒸気を高圧ボイラーの中で発生させ、タービンを回転させてから、必要とされる圧力と温度を利用する。蒸気タービンは、熱を回収する蒸気発生装置と複合的に使用することができる。こうしたコジェネレーション(熱併給発電)という工業用の装置は、機械、ポンプ、コンプレッサー、発電機などをうごかすためにつかわれ、その範囲は、数馬力のものから1300MW以上にもわたる。→ エネルギー資源
| 2. | 蒸気タービンの発明家たち |
蒸気タービンは、1人の人間によって発明されたわけではない。19世紀後半の多くの発明家の努力を結集したもので、この開発に貢献した人物としては、イギリスの発明家チャールズ・パーソンズやスウェーデンの発明家カールG.P.ド・ラバルなどがいる。
パーソンズはいわゆるステイジングの理論を確立し、この理論によって、蒸気を多くの段階で膨張させ、各段階で有効な仕事をさせることができるようになった。ド・ラバルは、膨張した蒸気を有効に活用するために、適切なジェットと羽根を設計した最初の人である。
| 3. | 蒸気タービンの原理と動作 |
蒸気タービンの動作は、蒸気が膨張すると温度がさがり、内部エネルギーは減少する、という熱力学の原理にもとづいている。この内部エネルギーの減少は、蒸気粒子の加速という形で機械エネルギーに転換される(→ 熱力学)。この転換によって、大量の運動エネルギーが直接利用できる。蒸気を膨張させる場合、膨張による内部エネルギー100Btu(イギリス熱量単位:1Btu≒1055J)の減少は、結果として蒸気の粒子の速度を、およそ2900km/時の速さに増加させる。このような速度になると、利用できる運動エネルギーは大きくなる。
これらの蒸気タービンは、ことなる2つの原理にしたがってつくられているが、基本的な部分はすべて同様である。蒸気タービンは、蒸気がながれて膨張し、温度が低下して運動エネルギーを獲得するノズルまたはジェットと、急速に移動する蒸気がそこに圧力をぶつける羽根からできている。ジェットと羽根の設置を固定式にするかどうかは、タービンの種類による。タービンは、これら2つの基本的な構成部品のほかに、羽根車、回転軸、タービンに蒸気をとじこめるケーシング、および潤滑装置や調整器などのさまざまな付属部品を装備している。蒸気タービンにも、衝動タービンと反動タービンの2種類がある。
| 4. | 衝動タービン |
蒸気タービンのもっとも単純な形は、いわゆる衝動タービンであるが、これには案内羽根がタービンのケーシングの内側に固定されており、中央の回転軸に羽根がとりつけられている。固定されたノズルをとおして蒸気が羽根の上を通過すると、羽根は膨張した蒸気の運動エネルギーの一部を吸収し、羽根がとりつけられている軸を回転させる。タービンは、一方の口からはいった蒸気が内部エネルギーのほとんどをうしなうまで、一連のノズルをとおして膨張しつづけるように設計されている。
| 5. | 反動タービン |
反動タービンの場合も、ある程度は蒸気が羽根にあたる衝撃によって機械的エネルギーがえられるが、大部分は蒸気が膨張する加速によってえられる。この種のタービンは、固定羽根と回転羽根が1組になっており、蒸気が羽根の間を通過するとき、膨張するノズルの役割をはたすように設計されている。反動タービンの羽根は、ふつう、軸ではなくてドラムの上にとりつけられ、このドラムがタービンの回転軸としての役割をはたす。
| 6. | 多段式蒸気タービン |
いずれのタイプのタービンでも、蒸気の中のエネルギーを有効に利用するためには、多くの段をもうけておく必要がある。つまり、回転軸には羽根が1列だけでなく、数段にわたってとりつけられている。各段では、わずかな熱エネルギーが運動エネルギーに転換される。もしエネルギーの全部の転換を1つの膨張段階でおこなうとすると、タービンのローターはとんでもない回転速度になってしまうからである。
一般的に反動タービンは、衝動タービンよりも多くの段を必要とする。同じ直径とエネルギーの場合は、反動タービンは最前段の効率のために2倍の段を必要とする。見かけ上は衝動タービンといわれている大型タービンも、効果的なバケットへの蒸気の流れを確実にするために、蒸気の流入口の先端にいくらか反動を採用している。見かけでは反動タービンといわれている多くのタービンも、はじめに衝動制御段をもっているが、これは全体の段数を節約するためである。
蒸気は、タービンの段を通過しながら膨張し、体積が増加するので、蒸気が通過する空間は段ごとに大きくしなければならない。タービンの実際の設計では、この空間の増加は、段ごとに羽根を長くしていき、羽根のとりつけられたドラムまたは車輪の直径を大きくしたり、さらに2つ以上のタービンを平行につけくわえたりして実現する。その結果、小規模な工業用タービンは多少円錐形をしており、高圧の取り入れ口では直径がもっとも小さく、低圧の吐き出し口ではもっとも大きくなっている。原子力発電でつかう大型の設備は、1つの複流高圧部と、それにつづく3つの複流低圧部でできている。
| 7. | 現代の蒸気タービン設備 |
蒸気タービンは比較的簡単な機械で、唯一の主要な駆動部分としては、ローターをもっているだけである。しかしながら、これをうごかすためには付属部品が必要である。ジャーナル軸受は回転軸をささえ、スラスト軸受は回転軸を軸方向に固定し、潤滑機構が軸受に潤滑油を供給する。シールは通路内の蒸気漏れを最小限にする。シーリング・システムは、蒸気が機械から外にもれることをふせぎ、外から空気が機械の中にもれこむことをふせぐ。回転速度は、機械の取り入れ口にあるバルブによって制御される。さらに、反動タービンは、駆動する羽根の圧力低下によって、かなりの軸方向の推力をうむ。この力は、蒸気の流れと反対の方向に推力を生みだす、ダミー・ピストンをつかうことによって相殺される。
現代の多段式蒸気タービンは、蒸気通路設備の発達と、低圧側での再加熱で温度を回復できるようになったことにより、膨張効率がきわめて高いものとなった。タービンの一部分が、理論的に利用可能な熱エネルギーを機械的仕事に転換する効率は、ふつう、90%をこえている。蒸気機関の熱効率は、蒸気がはきだされるときにエネルギーがうしなわれるので、タービンよりもずっと低い。
→ ガス・タービン:ジェット推進