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英語
I. プロローグ

イギリスやアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどの英連邦をはじめとする多くの国々でもちいられている言語。世界じゅうでもっともひろく理解され、使用されている言語のひとつである。インド・ヨーロッパ語族、ゲルマン語派の西ゲルマン語に属し、もっとも近い関係にあるのはフリース語で、オランダ語や低地ドイツ語方言、少し遠くなるが現代高地ドイツ語などとも関係がある。

II. 語彙

英語の語彙(ごい)は1500年以上の発展の中で増加してきた。もっとも包括的な辞書オックスフォード英語辞典(全13巻、1933年)は50万語をのせている。しかし、現在の英語の語彙は、俗語や方言的な表現、科学的な専門用語をふくむ100万語以上からなっており、その多くは20世紀半ば以降からつかわれるようになったものである。英語の語彙が多い理由は、単語を、さまざまな言語から広範囲にたえず借用したためである。さらに、借用の過程で多くの新語がつくられ、次のような造語のための形式がととのった。(1)擬音語。自然音の模倣。burpやclinkなど。(2)接辞添加。英語本来のmis- や -ness、借用されたex- や -istなどの接頭辞や接尾辞をつけくわえる。(3)語の一部ずつの合成。breakfastとlunchからできたbrunchなど。(4)自由な合成。boneheadやdownpourなど。(5)逆形成。もともと存在していた語が派生語的で、そこから基本的な語をつくること。たとえば、jelly(ゼリー)からつくられたjell(かたまる)など。(6)機能転換。同じ単語が別の品詞として使用される。名詞のshower(にわか雨)がto shower(水をそそぐ)と動詞としてもつかわれるなど。このうちとくに、接辞添加と機能転換が、単語をふやす役割をはたした。このような造語形式は、英語の統語構造の特殊性によって促進された。

III. つづり

英語のつづりは、言語の中でももっともむずかしいもののひとつといわれている。英語の表記は、おもに2つの理由から発音に忠実ではない。第1に、つづりが発音にあわせて変化しなかったこと。たとえば、knifeのkやrightのghは、かつては発音されていた。第2に、外国語起源の語は、そのつづり方をそのまま継承したこと。たとえば、「うたがう」はそれまでdouteとつづられていたが、もとになったラテン語がdubitareであるという理由で、16世紀にbが挿入されdoubtとなった。発音とつづりの違いを顕著にあらわすものとして、oughの6つの発音がある。たとえば、bough、cough、thorough、thought、through、roughでは、同じoughでもすべて発音がちがう。このつづりは、上記の単語のghが同じ発音だった時代から変化しなかった。そのほか、anxiousやfissionなどのshの音は、14個のことなったつづり方がある。

IV. 発音

英語の主要母音は、次の語中のイタリック体文字にあらわされる。bit、beat、bet、bate、bat、but、botany、bought、boat、boot、book、burr。これらの母音は、口の中の調音点の違いで区別される。4種類の複合母音は、調音的に舌が低い位置から高い位置へとうつる2重母音で、biteのi(アイ)、boutのou(オウ)、boyのoy(オイ)、butteのu(イウまたはユ)である。

母音と子音の発音以外に、英語で音声的な違いをあらわす手段には、アクセントとイントネーションと連接がある。アクセントは、ある1つの音節をほかの音節よりも強く発音するもので、たとえば、récord(名詞)とrecórd(動詞)を区別できる。イントネーションは、たとえば、尻下がりになるJohnと尻上がりになるJohn?の発音の違いである。単語同士の連接もしくは離接は、blackbird(1語)とblack bird(2語)のように発音に差がでる。英語は、語や句を区別するために4段階のアクセントの違いと4種類の連接をおこなっている。

V. 語形変化

現代英語は、比較的語形変化が少ない。名詞には、所有格と複数にだけそれをあらわす語尾がある。動詞には、比較的古い語にみられる、語の内部の母音が変化する強変化(不規則変化)動詞(たとえばsing、sang、sung)と、過去時制をあらわす接尾辞 -edをともなう弱変化(規則変化)動詞(たとえばplay、played)とがあり、ほとんどは後者で、強変化動詞は66しかない。新しい単語は、例外なく弱変化形になる。三人称単数には、-sという語尾がある。英語の動詞の構造は、類似する言語の動詞の活用にくらべてかなり単純で、ほかには -ingや -enくらいの語尾しかない。また、haveやcan、may、mustのような助動詞を使用することもある。比較級や最上級は、単音節と2音節の形容詞では、larger、happiestのように活用し、その他の形容詞は、moreやmostをつける。英語の中でもっとも顕著に活用する品詞は代名詞で、主格(I、he、we)、所有格(my、his、her、our)、目的格(me、her、him)がある。

VI. 品詞

ギリシャ・ラテン以来の8つの品詞分類法(品詞)が現在も主流だが、最近では、ちがう基準で分類する試みもおこなわれている。たとえば、ほとんどの単語を従来の分類でいう名詞、動詞、形容詞、副詞にだいたい一致する大きな4つの形態に分類し、それにあてはまらない154の単語を、文中の主要な語と語をむすびつけて相互の関係をしめす機能語とする分類である。機能語の多くは、従来の分類の代名詞、前置詞、接続詞にあたるもので、一部、副詞、形容詞、動詞に相当するものもある。

VII. 英語の発展

英語の発展の歴史は、通常、次の3段階にわけられている。(1)古英語(アングロ・サクソン語ともいう。449~1066年または1100年)。(2)中英語(1066または1100~1450年または1500年)。(3)近代英語(1450または1500~)。近代英語はさらに、1500~1660年を初期近代英語、1660年以降を後期近代英語として下位区分される。

1. 古英語期

古英語は、西ゲルマン語の一種で、現在の南デンマークと北ドイツにあたる地域にすんでいたアングル人、サクソン人、ジュート人といったゲルマン人たちによって話されていた。彼らは5世紀ごろにブリテン島に進出、伝承によるとジュート人がもっともはやく449年に到達した。彼らは、ブリテン島に植民して土着のケルト語を話す人々を北と西においやってしまった。そして時がたつとともに、古英語は、従来の大陸的な形態から独自に発展し、地域別の方言があらわれた。古英語の4大方言は、元来ジュート人が話していた方言であるケント語、サクソン人が話していた方言の分派であるウェスト・サクソン語、アングル人が話していた方言の下位区分であるノーサンブリア方言とマーシア方言である。ウェスト・サクソンのアルフレッド大王が全イングランドの最初の支配者となったことで、9世紀までにはウェスト・サクソン語が散文文学においてひろくいきわたった。しかし、方言をまぜたマーシア方言も、8世紀の作者不明の叙事詩「ベーオウルフ」や同時期の挽歌形式の詩などにもちいられた。

古英語は、屈折語で、強変化動詞や弱変化動詞の違い、人称代名詞の双数(2個または1対のものをあらわす語)、形容詞の2通りの変化形、名詞の4つの変化形、名詞の性などがあった。造語力は豊かだったが、語彙はとぼしかった。征服したケルトの言語からの固有名詞の借用はアバディーンやインチケープなどの地名にのこるぐらいで、普通名詞でもcart、downなど10語がケルト語語源であると考えられている。ケルト語のほかの言葉もつかわれていたであろうが、現代英語のケルト語語源、つまりウェールズ語やスコットランド・ゲール語、アイルランド語語源の単語は、比較的最近の借用である。

古英語期に導入された多くのラテン語単語は、ギリシャ語語源であるものが多く、140語くらいある。その例としては、alter、mass、priest、psalm、temple、kitchen、palmなどがある。そのうちのいくつかはケルト語経由で導入されたとされ、いくつかは、以前からラテン文化と交渉のあったゲルマン人によってブリテン島にもちこまれた。もっとも多くのラテン語単語をもたらしたのは、キリスト教の伝来である。その中には、教会用語だけではなく、ふつうの単語もふくまれていた。

約40あるスカンディナビア語(古ノルド語)由来の単語は、8世紀以来ブリテン島に侵攻した古代スカンディナビア人もしくはバイキングによって古英語に導入された。最初にはいってきた単語は、海や戦争に関係のあるものだったが、のちに、動詞areや現在ひろく使用されているtake、cut、both、illなどの一般的な単語もはいってきた。

2. 中英語期

1066年のノルマン・コンクエストまでさかのぼる中英語期の初頭、英語の語形変化はまだ豊富だったが、中英語期の終わりごろには、文を構成する単語間の関係は語形変化ではなくもっぱら語順によってしめすようになった。はやくは、1200年ごろ、名詞の3つないし4つあった単数の格語尾が2つにへり、複数をあらわすのに -esがもちいられるようになった。

名詞の活用はさらに単純化された。語形変化語尾の母音がすべて -e(現代英語のsofaのaのような発音)に統一され、また男性名詞の主格および対格複数語尾の -as(のちに-esになる)がほかの変化形や格語尾でもつかわれるようになった。現代英語にのこる古英語の複数語尾をもつ語は、oxenだけである。また、語幹の母音変化で複数をしめすman・menやfoot・feetなども、古英語の母音交替のなごりである。

語形変化語尾が一様化するにしたがって、英語の文法上の性の区別はなくなった。中英語期には、双数は使用されなくなり、代名詞の与格と対格は同じ形になった。さらに、英語古来の3人称複数であるhie・hemはスカンディナビア語由来のthey・themにかわり、who、which、thatが関係代名詞の機能をもつようになった。動詞の活用は、語尾の脱落や、強変化動詞の過去時制が単数・複数とも同じ形になったことで、単純化していった。

中英語期初頭に、egg、sky、sister、window、getなど多くの実用的な単語が古ノルド語からはいってきた。ノルマン人はまた、別の種類の言葉も英語の語彙にくわえた。1250年までに約900の新語があらわれたが、それはおもに、baron、noble、feastなど、アングロ・サクソンの下位階級の者が、ノルマン人の貴族階級とつきあうのに必要だった語である。ノルマン人の貴族階級や聖職者たちは、英語をまなんではいたが、行政、教会、軍事、司法、さらには芸術、学術、医学などに関する用語を結局フランス語から導入した。

古英語のマーシア方言から派生した中部方言が、その地域が大学、経済、宮廷などの中心地へと発展した14世紀中に、重要な方言になった。中部方言の下位区分である東中部方言が、首都ロンドン全域にわたる言葉になり、テムズ川の南、ケント州やサリー州にまでひろがっていた。東中部方言は、政府で使用するようになり、14世紀の詩人チョーサーやガワーの作品で普及し、カクストンによって印刷に採用されたことなどで、ますます影響力を強めた。このようにして、東中部方言が現代英語にまで発展することになった。

この言語形成期にも、その他の中英語の方言は存在しつづけ、その系統の方言は20世紀でも話されている。たとえば、スコットランド低地方言は、中英語の北部方言が発達したものである。

3. 母音大推移

中英語は、15世紀から16世紀にかけて母音の大変化がおこり、近代英語へと移行した。デンマークの言語学者イェスペルセンによって母音大推移と名づけられたこの変化は、舌と唇の位置に関係する母音の調音点が移行しておこった。その結果、中英語の2重母音をふくむ20の母音のうち18が変化した。しかし、この音の変化にもかかわらず、この時期イギリスに印刷技術がもたらされたこともあって、つづりはそのまま維持された。こうして発音とつづりの不一致が拡大することになった。

[ī]と[ū]をのぞくすべての母音が、一段高い舌の位置で発音されるようになった。[ī]と[ū]は、もともと可能なかぎり高い位置で発音されていたので、[ai]、[iu]と2重母音化した。この母音大推移によって、英語のa、e、i、o、uの文字の発音と西ヨーロッパのほかの言語の発音はちがうものになってしまった。このため、借用語は、もとの言語と音を比較することによって、借用がおこなわれた時期をおおよそ確定できる。たとえば、古フランス語の単語dameは、母音大推移以前に借用されたことがわかる。dameの母音aは、中英語期では[ā]であったが、母音大推移によって[ei]という2重母音にかわったからである。

4. 近代英語期

近代英語期初頭、同じ単語を別の品詞でもちいることや他の言語からの借用などが多くなって、語彙は増大した。ルネサンス時代にラテン語やギリシャ語への関心が復興し、それらから新たな語が英語に導入された。またイギリス人の旅行者や商人たちが、大陸から新語をもたらした。たとえば、イタリア語からはcameoやstanza、violinなど、スペイン語やポルトガル語からは、alligator、peccadillo、sombreroなどがはいった。近代英語はその発展の過程で、50以上の言語から借用をおこなった。

17世紀末~18世紀に重要な文法変化がおこり、英文法の正式な規則が確立された。たとえば、代名詞のitsが使用されはじめ、「欽定訳聖書」(1611年)での属格形の唯一の形態hisにとってかわった。進行形は、前置詞onの後ろで名詞として分詞をもちいた形から発達し、この前置詞がしだいに弱まり消失して、動詞の -ing形だけがのこった。18世紀以後、The job is being done.のような受動進行形がつくられるようになって、進行形の発達は完了した。

19~20世紀にかけて、世界じゅうへの植民地拡大の結果として、北アメリカを中心とするさまざまな地域で、多くの新語が英語に導入された。北アメリカ先住民からraccoonやwigwamなどが、ペルーからはllamaやquinineなどが、そのほか、西インド諸島やアフリカ、インド、オーストラリアなどから、さまざまな語が借用された。それにくわえて、何千もの科学用語が新しい概念、発見、発明を表現するために発達した。penicillinやsupersonicのような用語は、ギリシャ語やラテン語をもとにつくられた。これ以外では、他のヨーロッパの言語からの借用もつづいておこなわれ、ドイツ語からblitzkrieg、ロシア語からsputnikなどがはいった。

5. 20世紀の英語

現在イギリスで教養ある人の話す言葉は、英語の現代標準語である。これは、地域方言よりむしろ階層方言、つまり、イートンやハローのようなパブリック・スクールや、オックスフォードやケンブリッジのような古い大学でつかわれる言葉がもとになっている。子供時代に地域方言を話していた多くのイギリス人は、学校や大学にかよう間に標準語を身につける。BBCのような公共のメディアの影響もあって、標準語は近年いっそうひろまっている。

しかし、さまざまな地域方言が今もイギリス国内で話されており、標準語以外の重要な地域方言もそだってきている。たとえば、アイルランドの英語は、独特の発音をもち、文法や語彙にも違いがある。スコットランド低地方言(ララン方言)は、18世紀スコットランドの詩人バーンズの歌によって英語圏全体に知られるようになったが、発音の違いのほかに、独特のスカンディナビア起源の単語をもっている。特徴的な2重母音化がおこったオーストラリア英語も、イギリスの地域方言が維持され、くわえてオーストラリア先住民の言い回しなどを継承した独特の単語を使用する。

6. アメリカ英語

北アメリカの植民地化によって、イギリス以外での重大な英語の発展がおこった。カナダの英語は、イギリスの発音やつづり、語彙などの特徴をとどめてはいるが、アメリカ英語にふくまれる。イギリス英語とアメリカ英語のもっとも大きな違いは発音と語彙にあり、つづり、イントネーション、アクセントなども多少ちがっている。アメリカ英語の文語文法はかたまりつつあるが、新造語の使用については寛容なようである。こうした違いはあるが、純文学作品では、イギリス英語とアメリカ英語の区別は困難なことが多い。アメリカ英語

7. ベーシック・イングリッシュ

1920年代末、イギリスの心理学者オグデンは850語の基礎語彙をもとに簡略化した英語を開発し、イギリスの編集者リチャーズが発表した。このベーシック・イングリッシュは、おもに英語を話さない人に対する英語教育につかわれ、国際語としてひろめられた。しかし、英語の複雑なつづりや文法は、第2言語としてのベーシック・イングリッシュの採用にとって大きな障害であった。

ベーシック・イングリッシュの基本原理は、どんなに複雑な観念でも日常語によって明確に表現できるということである。850の基本語彙は、600の名詞と150の形容詞、おもに動詞と前置詞からなる100の「操作するための」単語である。これらの単語は英語圏で共通に使用されているものばかりで、60%以上が1音節の単語である。語彙は、類義語をのぞいたり、make、get、do、have、beなどの18の基本動詞の使用範囲を拡大したりして削減された。この基本動詞は、通常、up、among、under、in、forwardなどの前置詞とともにもちいられる。たとえば、ベーシック・イングリッシュをまなんだ人は、ascend「登る」をつかうかわりに、go upという表現をつかう。

8. ピジン英語

英語を話さない人たちがもちいる、英語を単純化した言語。東南アジア、メラネシアやオーストラリアなどの南西太平洋、そしてアフリカなどで話されている。東南アジアのピジンは、中国人とイギリス人貿易商がコミュニケーションをとるために発達した。中国人は、多くの英単語といくつかの英語以外の重要単語を採用し、単純な文法を使用しながら伝達手段をつくりあげた。ビーチ・ラ・マーという南西太平洋諸島で話されているピジンは、ポリネシア語の単語を多くふくみながら、構造的には英語を基本としている。ピジンは、西アフリカで普及しつつある。ピジン