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III. 鋼と炭素

鋼にふくまれる炭素は、鉄と化合物の一種であるセメンタイト(炭化鉄:Fe3C)として存在している。セメンタイトは単独では不安定なため、容易に鉄とグラファイト(石墨)に分解するが、鋼中ではかなり安定な相としてあらわれる。しかしセメンタイトの形状や分布の違いが鋼の機械的性質に大きな影響をあたえる。とくに、鋼に硬さをあたえるが、同時に脆(もろ)さもあたえる。セメンタイトをふくむ鋼は低温から常温では強磁性体だが、210°Cの磁気変態点以上では常磁性体となる。

常温における鋼は、炭素を0.76%ふくんだときは鉄とセメンタイトの共析晶であるパーライト(→製鋼の「鋼の組織」)となっている。しかし、炭素が0.76%未満のときにはフェライト(a鉄:→鉄の「鉄の同素体」)に、0.76%以上のときにはパーライトにセメンタイトが共存した状態となっている。また、オーステナイト(g鉄)との共晶組織はレーデブライトとよばれている。