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| XI. | 放送の未来 |
1980年代にコミュニケーションの技術は大きく変化したが、その動向は90年代になってさらにはげしい。ビデオ録画の技術革新とCATVの改良によって、番組の多様化がすすみ、視聴者の選択の幅がひろがった。
1990年代の初め、アメリカの約62%の世帯がCATVとむすばれていた。CATVは30チャンネルをこえる多様で専門的な番組を家庭に提供する。
ビデオカセット録画機(VCRs)で番組を録画することができるようになって、ビデオ市場の競争ははげしくなった。ビデオディスク再生機もつかえるようになった。それはVCRsよりも低価格で、収録ずみディスクの価格はビデオテープの3分の1である。
映画のビデオテープは、販売用やレンタル用としてひろく流通し、視聴者は局や衛星からの番組を録画することができる。このような録画機の使用に、放送業者から法的異議がでた。アメリカ最高裁は1984年、非営利目的のVCRsの家庭内使用は著作権侵害にあたらないと裁定した。84年には、VCRsを所有する世帯は10%であったが、93年には約77%に達した。
テレビ通信の新しい要因はコンピューターである。同軸ケーブル、光ファイバーケーブル(→ 光ファイバー)などによって、家庭のコンピューター端末と情報や娯楽を発信する中央施設との間で双方向通信ができるようになった。
日本のニューメディアの未来は、アメリカとは多少ちがった道をすすむかもしれない。日本のCATVの普及率はアメリカの10分の1ぐらいで、受信世帯は700万ぐらいだが、このうち多チャンネルを受信できる都市型CATVは200万強である。通信衛星からCATVに番組を供給する「スペースケーブルネット」が総務省主導ですすめられ、2001年にはスペースケーブルネット加入は1323万世帯、普及率は41%、市場規模は1兆7000億円と予想されている。
世界の中で日本がすすんでいるのは衛星放送である。現在、放送衛星BS-3をつかって、NHKの2チャンネルと民間のJSB(WOWOWテレビ)が放送している。1994年の衛星受信世帯は810万で、このうちNHKと受信契約をしているのは72%、JSBとの契約は18%である。97年には次のBS-4がうちあげられ、8チャンネルが利用可能になるが、これをどのようにつかいわけるか、まだきまっていない。通信衛星からも直接家庭への送信ができる。97年中に民間衛星放送がいくつできるかはっきりしないが、有料テレビにすれば、JSBのようなくるしい経営状態も予想される。いっぽう、これを広告放送にすれば、地上波の全国ネットワークと正面衝突になる。いかに強力ですぐれた番組ソフトをもつかが競争にかちのこるカギになるであろう。
ビデオパッケージの分野は好調にのびている。日本のVTRの普及率は1990年の66.8%から95年には82%に増加した。ビデオディスクも低価格化がすすみ、VDプレーヤーの世帯普及率は10%に近い。ソフト市場の拡大も順調で、90年のビデオカセット販売とレンタルの売り上げは2711万本、1513億円、ビデオディスクの販売は2640万枚、1356億円であった。
私的録音録画に関して、日本ではアメリカとはちがった解決をみている。日本では私的録音録画に関する報酬請求権制度が制定され、録音録画機器とテープの販売時に一定の料金を徴収し、権利者にわけることにした。
放送のニューメディアには、テレビ文字多重放送、FM多重放送、ファクシミリ多重放送などがあり、ISDN(総合デジタルサービス網)のような国をあげてのマルチメディア構想もある。いずれにしろ、ニューメディアを完成させるまでには膨大な投資と時間を要するが、1990年代後半から2000年にむけて、はげしい競争と急速な技術変化の時代に突入することは明白である。
→ テレビ:ラジオ:FM放送