放送
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V. 放送に対する規制

アメリカの放送政策は1934年の通信法にもとづいている。連邦通信委員会(FCC)の免許によって私的所有の放送局の設立がみとめられるが、一方で放送局は公共の受託者として、公共の利益と便宜と必要とにつくすことが義務づけられており、憲法第1条修正条項に違反する行為を禁止し、FCCによる放送内容の検閲をさだめている。

日本の放送制度は電波法と放送法によって枠組みがつくられている。電波法は放送局をふくむ無線局の免許や無線施設の運用に関する技術的基準などを規定し、放送法はNHKの目的、経営、運営、NHKと民放の番組のあり方を規定している。放送法は放送番組の編集の自由を保障しているが、同時に番組編集準則などをもうけ、番組編集について規制している。

1. 放送行政機関

FCCは独立した政府機関で、大統領が指名した任期7年のメンバー7名で構成され、最近はケーブルテレビと通信衛星の管理がその責任範囲にくわえられた。

日本の放送行政の所管官庁は総務省で、放送行政局および各地方電気通信監理局、電波監理、電気通信技術の両審議会などが放送に直接に関係する。放送免許にかかわるのは電波監理審議会で、衆参両議院の同意をえて郵政大臣が任命する5名の委員で組織され、省令の制定および改廃、放送局をふくむ無線局の免許および取り消しなど、電波および放送の規律に関する事項を調査審議し、総務大臣に対し必要な勧告をおこなう。また電波法、放送法、有線テレビ放送法などにもとづく総務大臣の処分に対する不服の申し立てについて審査および議決をおこなうことになっている。

1.A. 公正の原則

FCCは放送業者に対して、論争中の公共問題の討論に時間をさくことを義務づけ、反対意見にも妥当な発表の機会をあたえることを要求した。これは1949年につくられた「公正の原則」にもとづくもので、放送局の論説者を勇気づけ、論争を活発にしたが、言論と出版の自由を保障する憲法第1条修正条項に違反するという反対が根強く、87年、FCCはこの原則を廃止した。

日本には「公正の原則」のようなルールはないが、放送法第1条2項で放送の不偏不党、真実および自律の保障、表現の自由の確保を明記している。また放送法第3条2項で、放送番組の編集は政治的に公平であること、報道は事実をまげないこと、意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすることなどをもとめている。

1.B. 同等時間規定

アメリカには、公職選挙の候補者に局の施設をつかわせた場合、要求されれば対立候補にも同等の機会をあたえなければならないとする同等時間規定(1934)がある。また政治広告の時間と使用料は候補者の間で同等でなければならない。ただし取材の自由を制限しないため、真正なニュース放送、定時の真正なインタビュー番組などは除外されると規定している。

日本では公職選挙法により選挙活動に放送を使用することが禁止されているので、同等時間規定はない。政見放送は別である。

2. 放送規制と規制緩和

FCCに対しては、委員に業界出身者が多く、企業の利益を優先させているという批判や、ケーブルテレビ産業の成長がおさえられているという批判もある。1980年代のアメリカでは、規制緩和の傾向にあり、一方で市場の競争による利益は番組多様化の動機にはならないとして規制緩和反対の意見もあったが、政府は80年代の半ばまでに規制のいくつかを解除した。FCCは一社で所有できる放送局数をふやし、テレビコマーシャルは1時間につき16分という制限を解除した。

日本の電波法と放送法では、放送局の免許の規制条件を次のようにさだめている。(1)種目別の普及の目標として、テレビ局は教育番組を10%以上、教養番組を20%以上放送しなければならない。(2)マス・メディアの集中排除について、同じ者による複数の放送局の支配と、同じ者によるマス・メディア3事業(テレビ、ラジオ、新聞)の支配を原則として禁止する。(3)民放の地域立脚、である。

旧郵政省は放送局の免許の有効期間を3年から5年にし、通信衛星をつかった放送をみとめるなど、少しずつ規制緩和の方向にうごいている。

日本の放送法にはテレビ局のコマーシャル量を規制する条文はないが、日本民間放送連盟(民放連)の放送基準の第18章で、ラジオ、テレビの広告時間基準をもうけている。テレビコマーシャル量は週間総放送時間の18%以内、プライムタイムでは放送番組ごと10%以内の時間にすることになっている。