火星
印刷するには、[ファイル] メニューの [印刷] をクリックします。
火星
VI. 表面と内部

火星の表面を、赤道面に対して約35度の傾斜角度で2つの半球にわけることができる。南半分は古代クレーター地域で、今よりも隕石が大量に衝突していた初期のころに形成されたものである。ヘラスやアージャイル、イシデスなどといった巨大隕石の衝突で生じたと思われる大形の衝突クレーターがあるが、最大のクレーターでさえ、今はかなりの浸食または穴埋まりがすすんでいる。

火星の北半分はクレーターの数がずっと少ない。したがって表面が若く、火山の流出物で構成されていると考えられている。過去に盛んに火山活動がおこっていた場所が2カ所確認され、エリュシオン大地とタルシス隆起とよばれる。タルシスは赤道地域の西側に広がり幅は8000kmもあり、高度が20kmをこえるアスクラエウス、パボニス、アルシアという3つの巨大な火山がつらなっている。さらに西端には太陽系最大の火山であるオリンポス山がある。オリンポス山は玄武岩の火山の特徴をしめし、高度が約25kmにも達し、山裾(やますそ)は600km以上もある。現在、火星に火山活動はみられない。

火星のあちこちに、局部的な隆起や膨張による地殻の割れ目をしめすような断層などがみられる。その一方で、大規模な圧縮をしめすようなものは発見されていない。地球でよくみられる褶曲山脈がまったく存在しないことは、プレートテクトニクスがないことをあらわしている。これは、火星の地殻が地球よりも厚く、それほど熱くならなかったためと思われる。しかし、1988年に調査された赤道近くの断層崖が走向断層であることが証明されれば、なんらかのプレートテクトニクス活動を意味するものになるだろう。

2002年5月に探査機マーズ・オデッセイの観測結果から、火星の南極をふくむ高緯度地方の地下には大量の水が存在する可能性があると発表された。そのほかの地域でも表面下に氷があるのではないかという根拠は、一部のクレーターの周りをおおう花びら形の放出物の外観だった。これは崩壊し雑然とした地形の広大な地域や、北半球の高緯度の模様がえがかれた地域で多くみられる。04年3月にNASA(アメリカ航空宇宙局)は、無人探査車「オポチュニティ」が軟着陸したメリディアニ平原が、かつては大量の水におおわれた「海」であったと発表した。採取した岩石の顕微鏡写真の分析結果によるもので、(1)流水中で形成された痕跡と、(2)塩水が蒸発したあとにのこされた塩素や臭素の存在を確認したことなどを理由とした。さらに、05年7月、ヨーロッパ宇宙機関は北極付近のクレーター内にある巨大な水の氷塊と思われるものを撮影したマーズ・エクスプレスの写真を公表した。

火星の表面で目をひくもののひとつは水路で、水がひあがった川がつくる谷間によく似ている。大きな流出水路は、崩壊し雑然とした地形の地域から、突然に大量の水が放出されたことで形成されたものかもしれない。流出水路の大半は、高地となっている南半球から低地の多い北半球へとながれたように溝がある。洪水をおこした地域の氷がなぜとけたのかはまだわかっていないが、火星の46億年の歴史における最初3分の1の間に形成されたと考えられる。

小さな水路のようなものも無数に存在している。水の浸食によるものかどうかははっきりしないが、その可能性もある。今日の火星の表面では水は存在できないので、水路は、かつて火星の大気圧が高く、もっと暖かかったことの証明と考えられている。

しかし現在では、火星は風のふきあれる砂漠となっている。砂丘が広がり、ほかにも風によって形成された特徴が数多くみられる。風による堆積と浸食がすすんでいるのである。

火星の内部についてはほとんどわかっていない。大きさは地球の約半分ほどだが平均密度が地球の3分の2ほどと比較的低いことから、大きな金属の核のないことがわかる。核が存在しているとしても、それは液状ではないだろう。火星には強い磁場がないからである。タルシスのように巨大な構造のあることから判断して、火星の地殻は地球の地殻の5~6倍に相当する200kmの厚さがあると思われる。しかし、金属をほとんどふくまないために質量は地球の10分の1ほどしかない。また、現在では火山活動がみとめられず、バイキング2号着陸船につまれていた地震計では、はっきりとした火星の地震を検出することができなかった。