| 火星 | 項目ビュー | ||||
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| IV. | 探査機による観測 |
火星のくわしい情報は1964~76年、アメリカの6機の探査機によってえられた。最初に火星を観測したのは64年にうちあげられたマリナー4号で、65年に火星に到達。火星表面が多くのクレーターでおおわれた画像データなどを地球におくり、火星にはほとんど磁場が存在せず、表面の気圧や気温が低いこともつきとめた。69年に接近飛行をした6号と7号につづいて、71年の9号は火星をまわる衛星軌道に入り、約1年の観測をおこなった。7629枚もの火星表面の画像や衛星であるフォボスとデイモスなども撮影した。その結果、火星には巨大な死火山やかつては水が存在していたと思われる川や湖の跡のような地形があることをつきとめ、気象変化が存在することを確認した。こうして火星の全体像と2つの衛星の詳細な像をえることができたのである。
1976年にはバイキング1号と2号のランダー(着陸機)が着地に成功し、大気の温度や気圧を測定し、表面の土壌をはじめて直接調査した。土壌の分析では生命の痕跡(こんせき)をしらべる実験がおこなわれたが、発見することはできなかった。バイキング2号のランダーは80年4月まで、1号は82年11月まで活動した。またバイキングには2機のオービター(軌道周回機)もふくまれており、衛星軌道から地形の詳細な画像を撮影した。両機ともほぼ2火星年(地球の約4年)にわたって調査をおこなった。
バイキングから21年ぶりの1997年7月に火星に着陸したマーズ・パスファインダー(「火星の道をきりひらく者」の意)には「ソジャーナー」と名づけられた小型の6輪ローバー(火星探査車)が搭載されていた。ソジャーナーは自立式で、ランダーの周辺の岩石や土壌成分、硬度などの分析をおこなった。またランダーも周辺の地形を撮影したり、気象観測などを3カ月近くおこなった。
マーズ・パスファインダーと対になったマーズ・グローバル・サーベイヤー(「火星の測量者」の意)も1997年9月に火星の周回軌道にのったが、太陽電池パネルの故障などにより、本格的な観測は99年3月から開始した。2000年6月には、南極付近で水がながれだしたとみられる地形を発見し、火星に水と生命が存在する可能性が出てきている。
1998年(平成10年)7月には、宇宙科学研究所(現、宇宙航空研究開発機構)の探査機「のぞみ」がうちあげられた。しかし、トラブルが重なり、2003年12月に火星周回軌道に投入することは断念された。
2002年2月からはマーズ・オデッセイが火星の周回軌道から搭載された3種の観測装置で、火星表面がどのような物質でできているかを調査した。02年5月には南極を中心とした高緯度地方の地表1m程度の浅いところに大量の水素分子が存在していることが確認された。この水素が酸素とむすびつき大量の水の形で存在している可能性も指摘された。また、昼夜の温度変化をうつしだした熱放射画像(赤外線)によって複雑な表面模様が明らかとなり、溶岩流や衝突盆地のようす、また風による影響を知る貴重なデータとなった。さらには、火星軌道上の放射線レベルは地球の低軌道よりも高いことや、地球近傍では未検出の太陽粒子の活動なども観測された。
また2003年6月にうちあげられたヨーロッパ宇宙機関(ESA)のマーズ・エクスプレスのオービターは、04年1月に火星周回軌道にのることに成功したが、搭載していた着陸機ビーグル2の軟着陸には失敗した。オービターは、搭載した高解像度ステレオカメラ(HRSC)をつかい鮮明なカラー3次元画像の撮影をつづけている。また、04年3月には南極の極冠中に、05年7月には北極のクレーター内で水の存在を確認した。さらに、04年10月には粒子エネルギー・質量分析器(ASPERA)の観測結果から、火星の大気は太陽風により宇宙空間へ流出していることをつきとめた。
2003年6月にうちあげられたアメリカ航空宇宙局(NASA)の無人探査車「スピリット」は、04年1月4日に火星の赤道南側にあるグセフ・クレーターへの軟着陸に成功した。同月25日には03年7月にうちあげられた姉妹車の「オポチュニティ」も、「スピリット」の着陸地点とは反対側にあたるメリディアニ平原への軟着陸に成功した。両探査車は高度な分析装置をつかって岩石の構造や成分の調査などをおこない、04年3月2日にNASAは「オポチュニティ」が、火星にかつて大量の水が液体の状態で存在していたことをしめす証拠をみつけたと発表。さらに07年5月には「スピリット」も、グセフ・クレーター内で高濃度の二酸化ケイ素(シリカ)をふくむ土壌を発見した。研究者は、二酸化ケイ素の生成に大量の水が必要なことから、水が存在した証拠だと考えた。生命が存在した証拠はみつかっていないが、NASAは大量の水が存在したことで火星にも地球と同じように生命をはぐくむ環境があった、と結論づけている。両探査車の寿命は当初3カ月とみられていたが、NASAは運用を09年いっぱいまで延長した。
2005年8月、NASAは、火星周回軌道上から大気や地表をくわしく観測することを目的に探査機「マーズ・リコネッサンス」をうちあげた。06年3月には周回軌道にのり、従来の探査機にくらべ、より低い高度から高解像度カメラをつかって精密な観測をおこなっている。その成果は、無人探査機の着陸地点の選択などに利用される。
2007年8月、NASAは、火星の北極地域に着陸し、土壌や氷をしらべることを目的とした探査機フェニックスをうちあげた。これまでの火星周回衛星の探査で明らかになった火星表層直下の氷の存在を確認することが最大の目的である。フェニックスは、08年5月に火星の北極圏、ボレアリス平原への軟着陸に成功した。フェニックスは、ステレオカメラなど従来の火星探査機の観測装置だけでなく、ロボットアームを装備しており、火星の表面を数十センチメートル掘削し、土壌のくわしい成分分析などをおこなった。08年7月、NASAは、加熱した土壌サンプルから水蒸気の放出が確認されたことから、火星には水が氷として存在していると発表した。