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循環器系
I. プロローグ

血液は心臓からでて、動脈、毛細血管、静脈をとおって、また心臓へもどるが、その経路を循環器系という。

ヒトや高等動物では心臓は右心房、左心房、右心室、左心室の4つの部屋でできている。心臓の右半分は、体細胞からもどってきた酸素の少ない血液を、肺にもどして新たに酸素をうけとるようにはたらく。左半分は酸素の多い血液を肺からうけとり、動脈を介して体のさまざまな器官へ血液をおくる働きをしている。

血液は約50~60秒で体を一周するとされている。血液の循環は胎児の早期からはじまる。

II. 肺循環

全身をまわった血液は、上大静脈と下大静脈の2つの大きな静脈をとおって右心房へおくられる。もどってきた血液は、右心房が収縮すると右心房と右心室の間にある口をとおりぬけて右心室におくりこまれ、それから、右心室の収縮によって肺へおくられる。右心室が収縮している間は、三尖弁が完全にとじて右心房へ血液がもどってこないようになっている。

血液は肺をとおっている間に酸素をとかしこみ(酸素飽和)、4本の肺静脈をとおって左心房にもどる。この血液は左心房の収縮によって左心室におくりこまれ、その後左心室が収縮して大動脈におくられる。左心房と左心室の間には二尖弁(僧帽弁)があって左心室から左心房へ血液がもどってこない。また、大動脈の入り口には半月弁(大動脈弁)があって血液は左心室へはもどらない。同じような弁は肺動脈にもある。

III. 体循環

大動脈は多くのおもだった動脈にわかれ、さらにどんどん小さい動脈に枝わかれして全身にくまなくいきわたっている。いちばん細い動脈はひじょうに細い毛細血管に枝わかれし、みごとな毛細血管のネットワークをつくっている。

毛細血管の壁はとてもうすく、血漿は血管外にしみだし、組織液は血管内に吸収される。こうして、血液は体の組織に酸素や栄養素をわたし、組織からは老廃物をうけとる。その後、毛細血管は合流して小さい静脈になり、だんだん大きな静脈になって最後は上大静脈と下大静脈になり、心臓にもどって体循環をおえる。

IV. 門脈循環

小腸から吸収された栄養素をふくむ血液は、門脈をへて肝臓におくられ、類洞にはいって、肝細胞と直接ふれる。肝臓で血液はふたたび静脈にあつめられ、右心房をとおる体循環に合流する。

V. 冠循環

心臓の外をめぐる冠循環によって、心臓組織は酸素や栄養素をうけとり、老廃物を手ばなす。半月弁のすぐ先で、大動脈から2本の冠状動脈がわかれ、さらに枝わかれして心筋や弁の組織に毛細血管のネットワークを精巧にはりめぐらしている。冠毛細血管をながれてきた血液は数本の細い静脈にはいり、大静脈を経由しないで右心房へ直接かえってくる。

VI. 心臓の働き

心臓は、たえず心房と心室の筋肉の壁を交互にちぢめたり(収縮期)、ゆるめたり(拡張期)している。ゆるめている間に血液は静脈から右心房と左心房にはいり、だんだんに心房をひろげ、拡張期の終わりには心房はすっかりふくらむ。次に、心房の筋肉がちぢんで、心房の中の血液はほとんどすべて心房と心室の間の口をとおって心室にながれこむ。

心房の筋肉は急にしかも左右ほぼ同時にちぢみはじめるが、静脈内には血液が大量にあるため、心房から静脈に血液が逆流することはない。心房から心室へ血液をおくりこむ力は、半月弁をひらくほど強くないが、筋肉がまだゆるんでいる心室をひろげる力はある。三尖弁と僧房弁は血液がながれるとひらき、心室が収縮をはじめると、すぐにとじる。

心房の収縮期のすぐあとに心室の収縮期がくるが、心室の収縮は心房の収縮よりもゆっくりだが、はるかに力強く、心室内の血液は収縮期の終わりには空っぽになる。心臓の頂上部はわずかに回転しながら前後になげだされるように振れ、この心尖拍動とよばれる衝撃は、第5肋骨と第6肋骨の間で確認される。

こうして心室が収縮をしたあとのわずかな間は心臓はまったくうごかない。このように心周期は、心房の収縮期、心室の収縮期、心房と心室の休止期の3期にわけられる。ヒトの正常な心拍数は、だいたい1分間に70回前後である。

心臓が拍動するごとに2つの音がして、その次に短い休止期間がある。最初の音は心室の収縮期と同時におこり、にぶく、やや長い音がするが、2番目の音は半月弁が急速にとじられる音で、短くてずっとするどい。心臓の弁が病気になるとこの2つの音が変化し、健康な人でも運動や精神的緊張などで、心拍動にさまざまな変化がおこって音がかわることがある。

動物の正常な心拍数は、動物ごとに大きくちがっている。極端な例をあげると、冬眠する哺乳類の心拍数は1分間に数回だが、ハチドリは1分間に2000回も心臓を拍動させる。

VII. 脈拍

心室が収縮すると同時に血液が動脈にながれこむので、血液が動脈の壁をひろげる。動脈の結合組織は弾力性があるためと動脈壁の筋肉がちぢむために、拡張期のあいだに動脈はもとの太さにもどる。この働きによって心臓が休止している拡張期にも毛細血管を血液がとぎれずにながれつづける。皮膚の表面近くの動脈では、動脈の拡張と収縮にふれることができるが、これが脈拍である。

VIII. 心拍をおこすもの

心臓収縮の速さと強さは、神経が心拍をはやめるか、おそくするかの一連の反射によって調節される。しかし、収縮のインパルスは神経がだすのではなく、心臓の筋肉自身がだす。洞結節とよばれる右心房の壁にうめこまれたごく小さな特殊な組織が、心臓の拍動を開始させ、それから収縮は心房全体にひろがり、右心房と左心房をしきる隔壁にある房室結節に興奮がつたえられる。

この興奮は房室結節から房室束(ヒス束)をつたわって心室の筋肉に達して心室が収縮する。このようにして心臓の収縮と拡張は調子をあわせている。1回の心周期のそれぞれの段階には電位差が生じ、これは心電図とよばれる電気装置で記録できる。

IX. 毛細血管

皮膚の表面近くにある毛細血管を血液が循環するようすは顕微鏡で観察できる。赤血球が血液の流れの中央をはやい速度で移動し、白血球が血管壁にそってゆっくりとすすんでいるのがわかる。毛細血管の表面積はひじょうに大きく、血液はほかの血管よりも毛細血管と接触していることが多い。その結果、血液は毛細血管をながれるときに抵抗をうけるので、毛細血管の状態は血液循環に大きく影響する。体温が高くなると、毛細血管がひろがって血液の温度をさげるのをたすけ、さむいときには、ちぢんで体の中の熱をにがさないようにしている。

血圧