| 検索ビュー | 熱の伝達 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
温度のちがう物体や、同一物体の温度のちがう部分の間を、熱という形をとったエネルギーが移動する過程のこと。熱の伝達はふつう伝導・対流・放射の3つの方法でおこなわれる。3つは同時におこるが、1つが圧倒的に優勢であることもめずらしくない。たとえば、熱は建物の煉瓦(れんが)の壁を伝導によってつたわり、飛行機の表面は対流によって熱せられ、地球は太陽から放射によって熱をうける。
| II. | 伝導 |
伝導は、不透明な固体における唯一の熱の伝達手段である。金属棒の一端が熱せられて温度があがると、熱はもう一方の冷たい端の方向に伝導する。しかし固体の中における伝導の仕組は完全にはわかっていない。
部分的には固体内の自由電子の運動に起因すると考えられている。温度差ができると自由電子がエネルギーを運搬するのである。こう考えると、よい電気伝導体(導体)が、同時によい熱伝導体であるということがわかる。
熱伝導現象は数世紀も前に知られていたが、正確な数式で表現したのは、1882年にフランスの数学者フーリエが最初であった。このフーリエの法則は、物体の単位面積当たりに伝導する熱の割合は、物体内の温度勾配の符号をかえたものに比例するとのべている。
| 1. | 熱伝導度 |
熱の流れと温度勾配との比は、物質の熱伝導度とよばれる。金、銀、銅などは熱伝導度が高く、すばやく熱をつたえる。しかし、ガラスやアスベストの熱伝導度はその数百分の1も数千分の1も小さく、熱をつたえにくい。
これらは断熱体とよばれる。工学で固体内に温度差が生じたときの熱伝導を計算しなければならないことがよくあるが、計算には複雑な数学の手法が必要である。過渡的熱伝導現象といった、時間とともにかわるような伝導の場合はなおさら複雑になる。現在では複雑な構造における熱の伝導も、コンピューターを利用して計算がおこなわれている。→ コンピューター
| III. | 対流 |
伝導は1つの物体の中だけでなく、接触した2つの物体間においても生じる。もし一方が液体か気体であれば、ほとんどかならず流体の運動が発生する。
固体表面と液体や気体との間におこる伝導の過程は対流ともよばれる。流体の運動は、自然におこるものもあるし、強制的におこすものもある。
液体や気体は熱せられると、体積当たりの質量が減少する。重力場におかれると、熱くて軽いほうの流体が上昇し、冷たく重いほうの流体はしずむ。このように温度の不均一と重力によっておこる運動は自然対流とよばれる。これに対して、圧力勾配をくわえて流体に運動を生じさせる対流を強制対流という。
たとえば、なべにはいった水を下から熱したとき、底の水は膨張し密度が減少する。そのため底の熱い水が表面に上昇し、冷たい水が底のほうへとむかい、水の循環がおこる。同じように、二重窓ガラスの間の空気は、冷たい外側のガラスに近いほうがさがり、あたたかい内側に近い空気が上にあがることによって循環が生じる。
| IV. | 放射 |
放射は、熱を交換する物質が接触している必要がないという点で、伝導や対流とちがっている。実際、2つの物体が真空でへだてられていても、放射はおこる。放射とは電磁波現象にもちいられる言葉である(→ 電磁放射)。
放射の現象には波動理論(波動運動)で説明できるものと、量子理論(→ 量子論)で説明できるものとがある。しかし、どちらの理論も実験結果のすべてを完全に説明することはできない。ドイツ生まれのアメリカの物理学者アインシュタインは、1905年に光電効果についての実験から放射エネルギーの量子的なふるまいを理論化した。それより前の1900年に、ドイツの物理学者マックス・プランクは量子理論と統計力学の公式をもちいて放射法則を発見した。
放射法則の数式は、物体から放出される放射エネルギーの強度を、物体の温度と放射の波長に関係づけたものである。これは物体が特定の温度で放射することのできる放射エネルギーの最大量をあらわす。放射を完全に吸収する理想的な物体、黒体のみがプランクの放射法則にしたがい、現実の物体はそれよりも放射強度は小さい。黒体の表面から放射されるエネルギーの全波長の総和は、表面の絶対温度の4乗に比例する。
この比例定数はシュテファン-ボルツマン定数とよばれ、オーストリアの物理学者ヨセフ・シュテファンとボルツマンが1879年および84年に発見した。プランクの放射法則は、絶対温度がゼロでないかぎりすべての物体は放射エネルギーをだしていることをしめしている。
高温では大量のエネルギーが放出される。放射にくわえて、放射を吸収することもおこなわれている。したがって角氷は、たえず放射エネルギーを放出しているが、白熱光をあてられれば大量の熱を吸収するので、とけてしまう。
不透明な物質は、放射を吸収したり反射したりする。光沢がなくざらざらした表面のほうが、ぴかぴかにみがかれているよりも熱を吸収しやすくて反射しにくい。よい吸収体は同時によい放射体でもある。わるい吸収体は、わるい放射体である。この理由から、なべの底は吸収をよくするために光沢をなくし、側面は放射を最小にするためにみがきあげて、なべの中身に熱がもっとも効率よくつたわるようにしている。