| 検索ビュー | 燃焼 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
熱や光を放出しながら進行する、急速な酸化の過程。ふつうの燃焼では、燃料の酸化で生じる二酸化炭素、一酸化炭素、水が主要な生成物となり、同時に燃料中の少数成分から、二酸化硫黄などが発生する(→ 化学反応)。燃焼に必要な酸素は、多くの場合、空気中から供給されるが、過酸化水素、硝酸などの酸化剤を燃料にまぜて利用することもある。物質によってはマグネシウムのように二酸化炭素中で燃焼するものもあり、また酸素のかわりにフッ素、塩素などのハロゲンの存在下で燃焼をおこす場合もある。
| II. | 熱エネルギーの放出 |
燃焼は熱エネルギーを放出する過程であり、燃焼熱はエンジンや発電機(→ モーター)によって動力や電気力にかえられ、工場や家庭で利用される。燃焼による酸化反応は、化学物質の製造、たとえば硫黄をもやして二酸化硫黄にかえて硫酸の原料をえる、といった用途に利用される。また燃焼は廃棄物を焼却処理するための手段でもある。
| 1. | 燃焼効率 |
燃焼の際に放出される熱エネルギーによって、燃焼生成物の温度は上昇する。温度上昇の程度は、放出される熱エネルギーの量と、それが周囲に散逸していく程度、そして燃焼生成物の量によってきまる。燃焼に必要な酸素は、空気からとりいれるのがもっとも簡単だが、空気中の酸素の比率は体積で20%程度で、80%を不活性な窒素が占めるため、燃焼温度は純粋な酸素中よりも相当に低い。
燃焼物の完全燃焼には一定量以上の酸素が必要で、多くの空気をおくりこめば、燃焼による酸化はそれだけ完全なものとなる。ただし空気をふやせば燃焼生成物の温度は低下し、利用できる熱エネルギーは少なくなる。したがって燃焼の目的と用途に応じ、空気と燃料の比率を調整して、利用可能な温度と熱量とをうみだす範囲で燃焼をおこなう。
酸素の豊富な空気や、酸素アセチレン炎(→ アセチレン)のように純粋な酸素とともに燃焼させれば、燃焼温度は高くなる。燃料をこまかく粉砕すると表面積が増加し、酸素と反応しやすくなるので、燃焼速度は高くなる。燃料を微粉状にして、あるいは噴霧によって空気と混合し、酸素と接触させるとさらに燃焼速度は増大する。ロケットのように、熱エネルギーを極端にはやい速度で放出する必要があるときは、酸素の豊富な酸化剤を、直接燃料にくみこむ。
| III. | 固体燃料の燃焼 |
通常の固体燃料は、石炭、コークス、木炭、木材などである。固体燃料に点火すると、熱分解で生じた揮発性の成分が放出され、燃焼がひろがっていく。炭素をふくむ不揮発性の成分は、すすとなって放出されるか、炎の中に残留物となってのこる。
揮発成分の燃焼によって約400~800°Cの高温が発生すれば、不揮発性の残留物の表面で酸素が反応し、二次的な燃焼がおこる。この燃焼速度は酸素の表面への拡散速度によって左右される。炉の火格子の上で石炭などが燃焼する場合、火格子の下から新鮮な空気がたえず供給され、燃焼に必要な高温は、固体燃料の放射する熱で連続して供給される。
| 1. | 燃焼速度 |
燃焼速度をはやくするため、石炭をくだいて粉末状にし、空気と混合して炉におくりこむ方法もとられる(→ 流動層燃焼)。石炭などの、可燃性の微細粒子(炭塵:たんじん)が大量に空気中にただよう場合、点火によって爆発のような燃焼がおこる。鉱山での炭塵爆発事故がその実例である(→ 採鉱)。また家庭でも、大量のほこりによって同様な火災が発生する場合がある。
| IV. | 液体・気体燃料の燃焼 |
液体燃料には石油から蒸留した軽油、灯油、ガソリン、ナフサがある(→ 石油)。ほかにアルコール類も利用される。工場などの炉では、揮発性の少ない軽油などの液体燃料をノズルから噴霧し、空気とよく混合して燃焼させる。
内燃機関の場合、揮発性のガソリンを使用するものがガソリンエンジンで、おもに乗用車のエンジンに使用される。ガソリンは空気と混合されたあと、エンジンのシリンダーにおくられ、電気火花による点火で燃焼がはじまる。燃料としてガソリンとアルコールの混合物(ガスホール)も利用される。ディーゼルエンジンは、軽油または重油を使用する内燃機関で、燃料は、高圧に圧縮した空気をみたした燃焼室に、霧状に噴霧し、自然発火して燃焼する。
気体燃料には天然ガスをはじめ、石油から蒸留される石油ガス、コークスの加熱で発生する発生炉ガスなどが存在する。気体燃料は通常、燃焼の前に空気と混合され、酸素の供給によって燃焼温度を高める。さらに炎がバーナーの内部に逆流するのをふせぐため、炎の伝搬速度よりもはやい速度で、気体燃料をバーナーから噴出させる。ただし炎をふきけすほどの速度であってはいけない。空気と混合されない場合には、通常の気体燃料は煙を発生し、より低温の炎となって燃焼する。空気とともに燃焼したときの天然ガスの炎の温度は、210°Cをこえる。→ ガス
宇宙探査用のロケットは、ケロシン(灯油)やヒドラジンH2NNH2などの液体燃料を使用し、液体酸素、硝酸、過酸化水素などの酸化剤を利用して燃焼をおこなう。
| V. | 燃焼についての研究 |
燃焼はエンジンなどの動力装置に必要不可欠なものであり、燃料をより効率的に燃焼させるための数多くの研究がおこなわれてきた。また燃焼によって放出される物質は、酸性雨や光化学スモッグのような環境汚染の原因となるため、生成する汚染物質を減少させる研究もなされてきた。近年ではレーザー装置(→ レーザー)によって、運転中のボイラーやエンジン内での燃焼状態を測定し、燃焼装置の改良のためのデータとしている。他方でレーザー測定は、燃焼中の炎の中での化学反応を解明する手段としても利用されている。