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| I. | プロローグ |
展延性(→ 延性)にとむ銀白色の金属元素。遷移元素に属する。元素記号Feは「鉄」を意味するラテン語のferrumに由来する。
有史以前から知られ、装飾品や武器につかわれていた。前5000年ごろのものと思われる鉄器が、メソポタミアのサーマッラーで発見されている。また、エジプトで出土した酸化鉄のビーズは前3000年代ごろのものである。また、メソポタミアのシュメールにあった古代都市国家ウルのジッグラト周辺に、製鉄の痕跡が発見されている。考古学上の時代区分である鉄器時代は、ただしくは、鉄が実用目的に広く使用され、装飾用だけでなく道具としてももちいられるようになった時代のことをいう。前13世紀ごろには、高度の製鉄技術がヒッタイトにあったと推定される。
| II. | 性質 |
純鉄はやわらかく、展延性にとむ。常温でたやすく磁化するが、熱すると磁化しにくくなり、約770°Cで磁性をうしなう。
化学的に活性な金属である。ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素、アスタチン)、硫黄、リン、炭素、ケイ素と結合する。希酸にはとけるが、濃硝酸の中では酸化被膜ができ、内部はとけない。酸素中で燃焼して四酸化三鉄Fe3O4を生じる。しめった空気中でたやすく酸化して、赤茶色の酸化鉄、つまりさびを生じる。さびの形成は、鉄にふくまれる不純物が金属鉄と電気的にむすびつく電気化学的現象である。空気中の水が電解質溶液の役割をはたして弱い電流がながれ、水や塩類などの可溶性電解質が反応を促進する。こうした反応をへて、さびが形成される。さびが蓄積している部位では反応の進行がはやく、金属の表面に穴があくことがある。→ 腐食
| III. | 存在 |
金属鉄が遊離状態で存在するのは、グリーンランド西部などごくわずかな地域にかぎられ、ふつうは化合物として広く分布する。また、隕石の中にニッケルなどとの合金としてふくまれる。地殻中の存在量は、金属元素中アルミニウムについで多い。主要鉱石は赤鉄鉱、針鉄鉱、磁鉄鉱、菱鉄鉱、褐鉄鉱などである。硫化鉄鉱石である黄鉄鉱は、硫黄の除去がひじょうにむずかしいため、鉄鉱石にはむかない。
天然水、植物には、化合物として少量の鉄がふくまれ、動物の血液成分のヘモグロビンをつくる。
| IV. | 鉄の同素体 |
純粋な鉄には、a鉄、g鉄、δ鉄の3種類の同素体がある。
| 1. | a鉄 |
体心立方構造で、常温で安定。金属組織の名称としてはフェライトといい、ニッケル、クロム、コバルト、マンガン、タングステン、モリブデン、ケイ素を5%以上とかすが、炭素は0.03%以下しかとかさない。強磁性だが、キュリー点の769°C以上では常磁性に変化する。高温で常磁性に変化したa鉄を、とくにβ鉄ということもあるが、構造は同一である。
| 2. | g鉄 |
面心立方構造で、900~1392°Cで安定。金属組織名としては、オーステナイトといい、炭素、ニッケル、マンガンをとかして安定温度の範囲を広げる。炭素は最大2.14%までとかすことができる。
| 3. | δ鉄 |
体心立方構造で、1392°Cをこえる温度で安定。
| V. | 製法 |
製法および日本古来の製鉄についてはたたら、鉄鉱石からの精錬は製鉄および製鋼、熱処理については焼きなまし、焼戻し参照。
| VI. | 用途 |
純鉄は硫酸第一鉄溶液を電気分解することによりえられるが、かぎられた用途にしかもちいられない。一般につかわれる鉄は、つねに炭素や他の不純物を少量ふくんでおり、性質はこれらの不純物により変化し、さらに炭素や他の合金元素の添加によって、いちじるしく改善される。
鉄は、錬鉄、鋳鉄、鋼などに加工されてもちいられることがもっとも多い。純鉄は、商業的には亜鉛めっきをほどこしたトタン板や電磁石の製造にもちいられる。医療用では、血液中のヘモグロビンの量や赤血球数の低下がもとでおこる貧血症の治療に鉄化合物がもちいられる。強壮剤にも添加される。→ 栄養の「無機質(ミネラル)」
元素記号Fe。原子番号26。原子量55.845。安定同位体の質量数と存在比は56(91.75%)、54(5.81%)、57(2.15%)、58(0.29%)。周期表(→ 周期律)8族に属する。密度7.874g/cm³(20°C)。融点1535°C。沸点2750°C。