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ラン(植物)
I. プロローグ

単子葉植物ラン科の総称。南極地域とユーラシアのもっとも乾燥した砂漠地帯をのぞき世界じゅうに分布する。熱帯地方の属と種はひじょうに多様でよくわかっていない。そのうえ複雑な科であるため、種の数は1万5000~2万5000、属の数は400~800と分類法により開きがある。

II. 花の構造

ランはほかの被子植物とその仲間に特有な性質だけでなく、花の特徴の組み合わせによって区別される。花は小花柄という茎につくが、生長して花がひらくときには、小花柄は180度ねじれ、上下が逆さまになる。3個の萼片(がくへん:外花被)と3個の花弁(内花被)のうち、萼片と側部の2個の花弁は色も形も似ている。残りの花弁は唇弁とよばれ、ふつうほかのものより大きく、色も形もちがい、さけていたりカップ状だったりする。唇弁は花粉を媒介する動物がとまる場所としての役割をはたすことが多く、特定の媒介者(おもに昆虫)が特定の色模様と花の形に反応してひきよせられる。

雄蕊(おしべ)と雌蕊(めしべ)は融合して蕊柱(ずいちゅう)とよばれ、唇弁の付け根にある。ランには雄蕊は1個しかないので、多くの種には葯(やく:花粉をつくる組織)は1個しかないが、まれに2個の種もある。花粉は多くの被子植物のように粒状ではなく、たくさんの袋状の嚢(のう)が塊になっていて、粉質はデンプン質のものから角質のものまでさまざまである。雌蕊の柱頭の裂片(花粉をうけいれる器官)はふつう葯の近くに3個あるが、完全なのは2個だけで、ほかは退化している。

子房は花の下にあり、小花柄につつまれている。子房は3室にわかれ、その中にある多くの胚珠(卵細胞の生じる器官)が、成熟して種子になる。種子は小さく、未分化の胚を1個だけもっている。たった1個の莢(さや)から200万個もの種子ができることもある。ほかの被子植物のように養分をたくわえる組織はない。

III. 受粉

ランの花粉は、空中をとぶさまざまな動物によって媒介される。花の構造がひじょうに多様なのは、いろいろな媒介者に適応した結果である。約半数の種はハチ、ガ、チョウ、ハエ、鳥によって受粉がおこなわれる。多くの花は1種類の昆虫だけによって花粉を媒介されるように適応している。

IV. 生態上の分類

着生ランは樹木や岩石に根をはって生育するランをいう(着生植物)。おもなものに熱帯産のカトレア、オンシジウム、デンドロビウムなどと、日本産のセッコク、フウラン、ナゴランなどがある。

地生ランは地中に根をはって生育するランをいう。熱帯・亜熱帯産のものには、シンビジウム、カランセ、パフィオペディルムなどがある。日本に自生するものには、アツモリソウ、クマガイソウ、エビネ、シュンラン、シラン、キンラン、ギンラン、スズムシソウ、サギソウ、トキソウ、トンボソウ、ハクサンチドリ、ウチョウラン、ホテイラン、ミヤマチドリなどがある。

寄生ランはほかの植物に寄生して生活するランをさし、腐生ランともいう(寄生植物)。オニノヤガラ、ツチアケビ、ムヨウランなどに代表される。

V. 園芸上の分類

大きく、東洋ランと洋ランにわけられる。東洋ランは日本、中国、台湾に自生するシュンラン、カンラン、ホウサイランなどから優秀なものを選抜して育成したものである。洋ランはヨーロッパで品種改良して日本にはいってきた多数の園芸品種の総称で、母種の原産地は東南アジアや中南米の熱帯地域である。東洋ランと洋ランには対照的な特徴があり、東洋ランが原種のもつ自然美を生かして育成するのに対して、洋ランは人工的に交配改良し、豪華絢爛(けんらん)な花を主眼とする。

東洋ランの栽培品種は、中国シュンラン、日本シュンラン、ケイラン(細葉、広葉など葉の特色)に大別され、そのほかに、フウラン、セッコクをもとにした園芸品種、キンリョウヘンランなどがある。

洋ランには、オンシジウム、カトレア、シンビジウム、デンドロビウム属のノビル系とデンファレ系、パフィオペディルム、バンダ、ファレノプシスなどがある。

VI. 観賞用以外の利用

バニラの果実からは香料がとれる。シュンランの花と若い茎は食用に、根は薬用にされる。そのほか、薬用につかわれるものにはツチアケビの果実、サイハイランの根茎、シランの鱗茎、セッコクの仮茎などがある。

分類:単子葉植物ラン科。