陶磁器
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陶磁器
II. 種類と製法

陶磁器には、大きくわけて、土器、陶器、炻器(せっき)、磁器の4種類がある。土器は素地(きじ)に空気を多くふくんだ多孔質の焼き物で、ふつう700~800°Cくらいの低火度で焼成される。吸水率が高く、衝撃に対してもろい。素地は、赤、褐、淡黄、黒などの色をし、一般に釉薬はかけられない。古代、中世の焼き物のほとんどは土器質で、これが日常生活の中心であった。

陶器は、900~1200°Cくらいの比較的高温で焼成され、釉薬がかけられる。土器にくらべると、耐水性が高く、丈夫である。釉薬には人工的にかけられたものと、窯の中で灰などがふりそそいでとけた自然釉とがある。炻器は土器や陶器よりもさらに硬質で、1200~1280°Cくらいの高温で焼きしめられる。素地は白、灰、淡黄、赤などの色をし、釉薬がほどこされることもある。炻器を最初につくったのは古代中国で、14世紀以降には北ヨーロッパでもつくられるようになった。

磁器は白陶土とよばれるカオリン、長石、珪石などを主原料にし、1280~1400°Cくらいの高火度で焼成される。素地は白く、わずかに透光性がある。ひじょうに硬質で、たたくと金属的な音がする。磁器質の焼き物を創始したのも中国で、磁器のことを英語で「チャイナ」という。

ヨーロッパでは中国の磁器を模倣しようという試みがくりかえされたが、本格的に磁器がつくられるようになったのは18世紀初頭であった。ドイツのマイセン窯(マイセン磁器)にはじまり、またたく間にひろまった近代ヨーロッパの磁器は、中国の磁器にくらべるとがいして硬質である。18世紀半ばには、イギリスでボーン・チャイナ(骨灰磁器)が開発された。これは、焼いて生石灰にした牛骨、つまり燐酸カルシウムを素地の土にまぜて、焼成時の安定性と白さ、半透明性を高めた新しい種類の磁器である。

1. 土の準備と成形

素地となる土を用意するには、まず、土にふくまれている小石などのあらい不純物をとりのぞかねばならない。さらに、水をくわえてかきまぜながらとかし、より細かな不純物をとりのぞき、精製する。このように、水をくわえて粒子の細かい土をつくることを水簸(すいひ)という。水簸は、必要に応じて数度にわたっておこなわれることがある。こうして精製された土をそのままつかう場合もあれば、数種類の土をねりあわせることもある。また、砂やきめの細かい石、すりつぶした貝殻、あるいは一度焼いた粘土を粉砕してつくった土などをまぜることもある。土をよくねることによって、土中から空気をぬき、焼成時の破裂をふせぐ。

陶磁器の成形には数多くの伝統的な方法がある。道具をつかわず土の塊(かたまり)から直接つくりだす手捻(てびねり)、紐(ひも)状にのばした土をまきあげたり輪状につんでつくる紐作り、板状にのばした土をつぎあわせる板作りや、回転台やろくろをもちいる方法がある。また、石や籠、土や石膏(せっこう)の型の内側や外側に土をおしつけてつくる型作り、液状にした土を型にながしこんでつくる方法もある。実際には、これらの方法をくみあわせる場合が多い。

ろくろは前4千年紀に発明され、陶工は自由自在に陶磁器を成形できるようになった。ろくろには、手でまわす手回しろくろのほか、棒でついてうごかすろくろ、ろくろの下方につけたはずみ車を足でけってまわす蹴(け)りろくろなどがある。陶工自身がまわすほか、助手がまわすものもある。20世紀には、モーターでまわす電動ろくろが開発され、回転速度が自在に調整できるようになった。

2. 乾燥と焼成

焼成中にひびがはいったり割れたりするのをふせぐため、陶磁器は焼成前に空気乾燥させなくてはならない。素地がじゅうぶんに乾燥し、通気性、柔軟性にとんでいれば、650~750°Cほどの低火度で焼成できる。これを素焼(すやき)という。簡単な土器は今でもこの方法でつくられる。窯が最初にもちいられたのは前6千年紀であった。窯には、炎が床の孔をとおって垂直にあがる簡単な構造の窖窯(あながま)から、山の斜面を利用した大規模な登窯、大量生産にむいたトンネル窯などいろいろな種類がある。燃料は長い間、薪(まき)が中心であったが、やがて石炭がもちいられるようになり、重油、ガス、電気も利用されている。

焼成方法には、大きくわけて酸化炎焼成と還元炎焼成がある。炎にじゅうぶんな空気をあたえた強い炎の酸化炎と、窯の通風孔を部分的にふさいで酸素をへらした還元炎をつかいわけることによって、同じ陶磁器の仕上がりにも違いがでる。たとえば、鉄分の多い土は酸化炎で特徴のある赤色に、反対に還元炎では灰色あるいは黒になる。還元炎焼成では土の中の酸素原子が炎にあたえられるため、赤い酸化鉄が黒い酸化鉄に変化する。

3. 素地の装飾

陶磁器は、焼成の前後に装飾ができる。素地が半乾燥して革のような固さのときには、貼付(はりつけ)やスタンプ、彫刻や線刻、透かし彫りなどの技法で文様がつけられる。器壁は、けずったり研磨することで滑らかに、かつうすくなる。研磨は焼成後にもおこなわれる。また、スリップ(泥漿:でいしょう)という、あらい粒子を漉(こ)してとりのぞいたクリーム状の土をもちいることもある。スリップには色がつけられることもある。スリップは完全に乾燥してかたくなった陶磁器にかけたり、刷毛(はけ)でぬったり、注口付きの容器やスポイトのような道具で流しがけされる。先端のとがった道具でスリップをかきおとし、素地をみせて文様をあらわす技法は、スグラッフィート(掻落し:かきおとし)として知られている。

4. 釉薬

釉薬は一種のガラスで、ガラスを組成している珪砂などの鉱物に、鉛、灰、ソーダ、錫(すず)などの融和剤をくわえてつくられる。釉(うわぐすり)ともいう。釉薬は焼成されると成分がとけてガラス化し、陶磁器は吸水性がなくなり、表面が平滑になり、そして装飾される。釉薬は焼成する前か、素焼をしたのちにかけられる。釉薬には多くの種類があり、素地の色を強めたり、素地をすっかりおおいかくしたりする。

中東地域でよくもちいられるアルカリ釉は光沢があり、しばしば半透明の状態になる。この釉は、主として珪土や硝石、硝酸カリウムのようなソーダでつくられている。鉛釉は透明で、硫化物あるいは鉛の酸化物で融和させた砂でつくられ、伝統的に多くの種類がある。鉛釉は古代ローマ、中国、それに中世ヨーロッパで盛んにもちいられ、現在も世界じゅうでつかわれている。錫釉は不透明で白色をし、中世イスラム世界の陶工たちによって開発され、スペインのラスター彩陶器、イタリアのマヨリカ陶器、それにヨーロッパのファイアンスやデルフト陶器などにもちいられた。

釉薬に色をつけるには、金属酸化物を呈色剤としてくわえる。銅は酸化炎で焼成されると、鉛釉を緑色、灰釉を青色、アルカリ釉をトルコ・ブルーにかえ、還元炎では赤くなる。鉄は、酸化炎で黄、褐、黄金色などになり、還元炎では青や灰緑の青磁釉となる。そのほか、アンチモンによる黄、コバルトによる青、マンガンによる紫など、さまざまな色釉がある。長石は高温でのみとけるため、炻器や磁器にもちいられる。素地となる土と釉薬の組成、その組み合わせ、窯の操作などによって、陶磁器の仕上がりは千差万別である。

5. 釉下彩と上絵付

陶磁器にほどこす絵付(えつけ)には、青花(染付)磁器のような透明釉の下にえがく釉下彩と、色絵磁器のような釉の上にえがく上絵付の2種類があり、両者を併用する場合もある。釉下彩では、釉下にえがくコバルト、銅、マンガンなどの金属酸化物の色を釉や素地に定着させるために、多少高い温度で焼成する必要がある。いったん焼成したあとの釉の上に精製されたエナメル顔料をもちいる上絵付では、エナメルと釉を融和させるために上絵窯で低温で焼きつけなくてはならない。

商業的に量産される陶磁器の絵付には、しばしば銅版転写などの印刷の手法がもちいられる。銅版転写は、紙に印刷された文様に酸化物をつけ、しめっているうちに陶磁器にうつしとる方法である。18世紀の印版は手作業による銅版だったが、現在ではリトグラフや写真版がもちいられている。

中国では15世紀以来、ヨーロッパでは18世紀から、製品の識別のためにさまざまな窯印やマークがもちいられてきた。また、古代ギリシャの陶工や陶画工、イスラム世界の陶工、それに20世紀の陶芸家たちの多くは、自らの作品に個人的に署名をのこしている。これらは、陶磁器のつくられた時代や生産地などを鑑定する際の重要な手掛かりとなる。しかし、著名で高価な陶磁器の場合は、しばしば窯印やマークが模倣、偽造されるため、慎重な調査研究が必要である。