植物
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植物
VIII. 生態系

植物は地中に根をはっていることから、一般に、じっと静かに受け身の生活をしていると思われている。しかし、植物とその周りの生物的環境との間に発達した巧妙な相互関係をみれば、たちまちこのような考えはかわってしまう。

1. 共生と競争

雌雄のある多くの植物が受粉して種子をつくるには、雄花の花粉が雌花に達しなければならない。花粉を媒介するのは、風(物理的環境の一部)の場合もあるが、多くの場合、昆虫、コウモリ、あるいは鳥(生物的環境の構成員)である。種子の分散を媒介者にたよる植物もある。たとえばセイヨウミザクラは、受粉したのちにサクランボを大きくして鳥をひきよせ、果実を食べた鳥は遠くはなれた場所で種子を排泄する。

植物はほかにも、マメ科植物とその根の小さなこぶの中にいる根粒菌のように、共存をはかる多くの関係を進化させている。草原のイネ科の草や、ひらけた土地に繁茂する植物は、森林がせまり日光がさえぎられないようにしてくれる草食動物のおかげで生育できる。

植物同士の光をめぐる競争を通じて、多くの種は葉の形、樹冠の形、丈高さなどの太陽光線をとらえる仕組みを進化させてきた。さらに、多くの植物は自分の近くにほかの種の植物の種子が発芽し定着しないような化学物質を生みだし、光だけでなく無機養分の資源から競争相手の種を排除することもある。クルミなどは、このようなアレロパシー(他感作用)とよばれる化学的阻害作用を利用している。

2. 食物連鎖

植物は自分で栄養をつくることができる独立栄養の生物だから、食物連鎖のいちばん基礎的な位置にある。自分で栄養をつくることができない従属栄養の生物は植物ほど定着的な生活をしないのがふつうで、最終的には栄養源を独立栄養の生物に依存する。植物はまず第1次消費者の草食動物に食べられ、これが次に第2次消費者の肉食動物に食べられる。分解者は食物連鎖のあらゆる段階で活動する。食物連鎖の各段階で大量のエネルギーがうしなわれ、各段階でたくわえられるのはエネルギーの約10%だけである。このため、食物連鎖には数段階しかない。

3. 植物と人類

古代の農耕の開始から今日にいたるまで、野生状態から手をくわえられて食料・繊維・住居・薬の原料となった種の数は、わずかでしかない。植物の栽培と育種のプロセスはほとんど偶然にはじまり、住居の近くにあつめられた野生の果物や野菜の種子が発芽し、自然に近いやり方で栽培されたと思われる。

エンマコムギとヒトツブコムギ(コムギ)は、考古学者の調査によると、前6000年代とされている中東の遺跡から出土している。食料としてすぐれた価値があるため、長年にわたって選別淘汰がくりかえされ育種されてきた。現在では、多くの栽培植物について、野生の祖先やその植物が発生した起源の植物群落にさかのぼることはほとんどできない。この選別の過程は、すでにあった植物育種の知識を生かしておこなわれたのではなく、むしろ産業が発達する以前の人間と植物との不断の密接な関係によるものであった。

しかし今日では、人間と植物の関係はまるでことなるものになった。植物の栽培にほとんどあるいはまったく関係しない人々が大多数を占めるようになり、植物栽培にかかわる農業者も単一作物への専門化がすすんでいる。一方、品種改良は大きく加速され、これは遺伝学の進歩によるところが大きい。植物遺伝学は、現在ではわずか数年で耐風性トウモロコシのような植物の系統を開発することが可能で、作物の収量は大いに増加している。

同時に、人類は食物とエネルギーの需要を増大させ、科学者が世界の植物個体群の正確な目録をつくり、どの植物種が人類に役だちうるかを解明する以前に、あらゆる植物種と生態系を破壊してしまうほどになっている。ほとんどの種はあまり知られないままにあり、大きな可能性をもつと考えられる種は熱帯に存在するが、そこでは人口が急速に増加し、開拓によってすぐにも土地は乾燥した不毛の荒れ地になってしまう恐れがある。植物の基本知識はそれ自体重要だが、今日人類が直面している多くの問題を解決しようとする際にも有効である。農業:食料需給

双子葉植物:単子葉植物:有毒植物