| フランス | 項目ビュー | ||||
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| VIII. | 政治 |
フランスの政治制度は第5共和政(→ 共和政)として知られる大統領制であり、1958年10月に発布された憲法にもとづいている。第4共和政にくらべ、大統領の権力がいちじるしく拡大されている。議会は、国民議会(下院)と元老院(上院)からなり、国民議会のほうに優先的な地位があたえられている。国民議会の定数は577。議員は、1区1人の小選挙区制による直接選挙でえらばれ、任期は5年である。元老院の議員は、国民議会、地域圏議会、県議会それぞれの議員全員と、市町村にあたるコミューン議会で選出された代表者で構成される選挙人団による間接投票でえらばれる。2003年の上院改革法により、定数は321から343に拡大し、11年には348にまでふやされることになっている。議員の任期は、これまでの9年(3年ごとに3分の1ずつ改選)から6年(3年ごとに半数が改選)に短縮されることになり、04年から段階的に実施されている。選挙権は18歳以上、被選挙権は、国民議会議員が23歳、元老院議員は35歳(2004年の改選時から30歳)である。
| 1. | 行政 |
大統領は国民の直接投票によってえらばれる。1回目の投票で有効票の過半数を獲得できないときは、上位2名によりもう一度選挙がおこなわれる2回投票制である。任期は、これまで7年だったが、2002年5月選出の大統領以後は5年となった。大統領は軍総司令官であり、高等司法会議、国家防衛委員会と内閣をつかさどる。首相を任命し、首相の提案にもとづいて閣僚を任命する。閣僚と国会議員の兼務は禁止されている。大統領は、国民議会の解散権も有する。首相と内閣は国民議会に対してのみ責任をもつ。国民議会が弾劾動議を出したとき、内閣の施政方針や宣言などをみとめないときには、首相は大統領に辞表を提出しなければならない。
| 2. | 立法 |
立法上の優先権は国民議会にある。元老院は諮問機関であり、国民議会で着手された法案や政策を吟味し意見をのべる権利をもつ。両院が法案に合意しないときは、最終決定権は国民議会にある。国民議会や内閣へ経済問題に関して諮問できるのは、経済社会評議会である。1995年の憲法改正で、国民議会の2回の審議は年間5カ月半から9カ月に延長された。政府に対する絶対多数での弾劾投票の採択をみとめている。憲法改正は両院と国民投票の承認、あるいは議会の5分の3の承認を必要とする。なお、地方議会の議員や長を兼職している議員が多い元老院は、「地方団体の代表」としての性格も強く、2003年から地方団体の組織にかかわる法案については国民議会に優先して先議権をもつことになった。
| 3. | 政党 |
フランスのおもな政党には次のようなものがある。民衆運動連合(UMP)は、シラクの共和国連合(RPR:ド・ゴール派)を中軸とする保守・中道の連合政党。2002年6月の総選挙時に形成された大統領多数派連合(UMP)をもとに同年11月に結党され、共和国連合は解党となった。フランス民主連合(UDF)は非ド・ゴール派、非左翼の諸政党の連合で、ジスカール・デスタン大統領の支持母体として形成されたが、党員の多くは民衆運動連合に移籍した。しかし、07年の大統領選挙で党首のバイル議長が善戦したことから、彼は中道勢力の結集をめざしてフランス民主連合にかえて新党の民主運動を発足させた。社会党(PS)は長らくミッテランそのものだった。1995年以来、大統領選挙で3連敗し、中央の議会勢力も与党の民衆運動連合に大きく水をあけられているが、地方議会や欧州議会では勢力をたもっている。76年にプロレタリアート独裁を放棄した共産党(PC)は、近年党員数が減少している。そのほか、緑の党、ルペンのひきいる極右の国民戦線(FN)などがある。
| 4. | 地方自治 |
フランス本土は22の地域圏(レジオン)に区分されており、その下の単位として96の県がある。このほか海外に4県があり、これらの海外県はそれぞれ1県で1地域圏をなす。地域圏の多くは歴史的な地方と重なり、1982年の地方分権法により正式な地方自治団体となった。一方、県は、フランス革命後にもうけられた行政区画で、長い間、中央政府に任命された県知事が強大な権限をもっていたが、82年に自治権が拡大され、県行政の執行権は、県議会で選出された県議会議長にうつった。フランスの基礎自治単位は、中世からの伝統をもつコミューンである。日本の市町村にあたるコミューンの規模は、大都市から人口100人未満の小村まで幅広い。それぞれのコミューンは、人口に応じた議会をもち、議会内でえらばれた「メール」とよばれる長が議会と執行部をひきいて自治をおこなう。フランス本土には約3万6500のコミューンがあり、その大半は人口2000人未満で財政基盤が弱い。政府は以前から合併を推奨してきたが、ほとんど進展がみられず、90年代からは、コミューン共同体、都市圏共同体などの広域行政組織化がすすめられている。なお、コミューン、県、地域圏の地方自治単位のほかに、行政区画として、コミューンを包括するカントン、カントンを包括する郡があり、複数の郡で県が構成される。
| 5. | 厚生 |
フランスの健康保険は医療、薬、入院の費用を一部カバーするもので、低所得者、失業者、10歳以下の子供の場合には費用の全額がしはらわれる。社会保険には、家族手当、労働補償、出産手当、身体障害者保険などがある。
| 6. | 司法 |
フランスの司法制度は、一般の民事事件・刑事事件をあつかう司法裁判所と、行政をめぐる訴訟をあつかう行政裁判所の2系統にわかれていることが特徴である。司法裁判所の系統では、第一審裁判所は、訴訟内容の程度、犯罪の重さによって小審裁判所、大審裁判所、軽罪裁判所などにわかれるほか、商事、労働紛争など特定分野を専門にあつかういくつかの裁判所がある。これら第一審裁判所からの上告は、民事・刑事を問わず控訴院で審理される。ここでの判決が最終判決であり、上訴はみとめられないが、上位裁判所である破棄院に判決の破棄申立をすることができる。破棄院では法の解釈・適用について審理され、判決破棄の決定がくだされた場合は第二審のやり直しとなる。殺人事件などをあつかう重罪院だけは、第一審、第二審とも陪審制である。行政裁判所の系統も同様に、地方行政裁判所、行政控訴院、その上位の国務院(コンセイユ・デタ)がある。
なお、この2系統とは別に、大統領の国家反逆罪をさばく高等法院、閣僚の職務上の行為をさばく共和国法院がある。また、国会で可決した法律や、批准前の条約(国民投票で承認されたものをのぞく)の合憲性については、憲法評議会で審理される。
| 7. | 防衛 |
男子には18~35歳の間で10カ月間の兵役義務があったが、1997年からすすめられていた徴兵制から志願兵制への段階的移行は2001年6月に完了した。陸軍13万3500人、海軍4万3995人、空軍6万3600人の兵力をもつ。フランスはNATO(北大西洋条約機構)の一員でありながら、1966年以降はその軍事機構から離脱していたが、95年に一部復帰、2009年に完全復帰した。原子力潜水艦や弾道ミサイルをもつ。2002年には、03~08年の軍備計画で14%の増額が閣議で承認された。
1990年代半ばには、チャドなどのアフリカ諸国に出兵し、またカンボジア、ソマリア、旧ユーゴスラビアに国際連合(国連)の平和維持軍(PKF)を派遣している。アメリカ同時多発テロを契機とするアメリカのアフガニスタン攻撃に際しては、原子力空母やフリゲート艦をインド洋におくるなど陸・海・空軍を投入した。2003年のイラク戦争に際しては、米英の主張する武力攻撃に反対して不参加、戦後の治安維持でもイラクに部隊は派遣していない。