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宇宙線
I. プロローグ

高速運動をしているため高いエネルギーをもっている、宇宙から到達する粒子。宇宙線の発見は、1911~12年オーストリア生まれのアメリカの物理学者ヘスが検電器をつけた気球で観測をおこなったときである。大気のイオン化が高度とともに増加していたことから、イオン化をひきおこす放射線が宇宙からきているにちがいないと結論づけた。放射線の強度が緯度によってことなるという発見は、放射線を構成する粒子が電荷をおびており、地球磁場によってまげられることをしめしていた。

II. 性質

宇宙線の基本的な性質は、電荷、静止質量、エネルギーの3つである。エネルギーは静止質量と速さによってきまる。写真乾板をもちいると電荷と速さをしめす宇宙線の飛跡が記録でき、イオン化スペクトロメーターをもちいると宇宙線のエネルギーがわかる。高高度の気球や宇宙船では、宇宙線粒子の電荷と質量に対するエネルギー分布を知るために複数の検出器をくみあわせてつかわれている。

1. 生成

宇宙線の約87%は陽子(水素の原子核)、12%はアルファ粒子(ヘリウムの原子核)である。それより重い元素もふくまれるが、ひじょうに少ない。リチウム、ベリリウム、ホウ素といった軽い元素は宇宙線の約0.25%ふくまれているが、もともと宇宙の全物質の約10億分の1を構成するにすぎないので、重い元素の宇宙線が陽子と衝突してわれた結果できたものであろう。しかし宇宙線の中では、比較的豊富な含有量であり、宇宙線は4cmの水の層に相当する物質をくぐりぬけてきたと推定される。中くらいの重さの元素は通常の物質より約10倍、重い元素は約100倍も多くふくまれている。このことは、宇宙線の生成は初期の段階は、重い元素にとむ領域でおこっていることをしめしている。

2. エネルギー

宇宙線の粒子のエネルギーは、原子核の中の陽子あるいは中性子当たりのギガ(10億)電子ボルト(GeV)という単位ではかる。宇宙線の陽子のエネルギー分布をみると、0.3GeV(光速の約3分の2に相当する)を頂点として、さらに高いエネルギーの側にすそ野をもっている。大気の原子核と衝突してできる2次粒子のシャワーでは、1011GeVにも達するエネルギーが観測されている。平均すると、銀河系(天の川)の1cm³当たりに約1eVのエネルギーがそそがれている。

3. 磁場の影響

ひじょうに弱い磁場がはたらいても、宇宙線は直線運動からまげられる。星間空間に存在しているといわれる3 × 10-6ガウス程度の磁場でも、1GeVの陽子を10-6光年の半径で回転させることができる。1011GeVの粒子は105光年、つまり銀河系の大きさくらいの半径で回転する。したがって、星間磁場のために宇宙線は発生源からまっすぐ地球にとどくことはない。もっとも高いエネルギーの宇宙線でさえも地球に到達したときの方向が等方的に分布しているのはこのためである。

1950年代、天の川から電波が放出されているのが観測され、星間磁場で回転している高エネルギー電子からの放射であると考えられた。宇宙線の電子の強度は同じエネルギーの陽子の強度の約1%であるが、電波の放出から推定される強度もこの値と一致する。

III. 発生源

宇宙線の発生源はまだ明らかではない。太陽は大きなフレアが発生したときに、低エネルギーの宇宙線を放出する。しかし発生回数は大量の宇宙線に対して少なすぎる。他の星が太陽と同じように放出したとしても発生源とはなりえない。超新星の爆発のあとにのこったものは強力な電波源となっており、高エネルギーの電子がふくまれていると考えられる。したがって超新星爆発は、宇宙線の相当部分の原因となっている。

超新星爆発はひとつの銀河につき30年に1回くらいの割合で生じており、銀河系でうしなわれる毎秒約1041エルグ(erg)の宇宙線エネルギーの損失をおぎなうことができる。また超新星は、重い元素の原子核が形成される場所と思われる。したがって超新星が宇宙線の発生源とすると、宇宙線に重い元素が多くふくまれていることも説明できる。衝撃波が星間空間に到達すると、そこでさらに宇宙線は加速される。新星と超新星

1. 発生源のなぞ

超新星が宇宙線の発生源であるという直接の証拠はえられていないが、はくちょう座X-3のようなX線連星(連星)が宇宙線源であることは理論的にまちがいない。X線連星の場合、一方の星からもう一方の中性子星やブラックホールへとエネルギーがうしなわれている。

他の銀河でも、高エネルギーの電子が存在している。いくつかの銀河では私たちの銀河系よりも強い電波をだしており、高エネルギー粒子源があることをしめしている。この粒子源の仕組みはわかっていない。