放射能
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放射能
VI. 人工放射性元素

周期表で原子番号83のビスマス以降の原子番号の元素はすべて放射性である。さらに、原子番号がビスマス以前の元素でも、鉛(原子番号82、以下同)、タリウム(81)、白金(78)、レニウム(75)、ハフニウム(72)、ルテチウム(71)、ガドリニウム(64)、サマリウム(62)、ネオジム(60)、ランタン(57)、インジウム(49)、ルビジウム(37)、カリウム(19)、炭素(6)、水素(1)などにも天然の放射性同位体がある。

1919年、ラザフォードは通常の窒素原子(14N)にアルファ粒子を衝突させ、はじめて原子核反応をおこした。そのとき窒素原子は、アルファ粒子を捕獲して陽子を放出し、酸素の安定な同位体である17Oになるのが観測された。この反応は次のように記述する。

¨N + ¸He → ©O + §H

ここで、化学記号の左下は原子番号、左上は質量数である。アルファ粒子はヘリウムの原子核(¸He)として、陽子は水素の原子核(§H)としてあらわされている。

1933年、このような原子核反応が、ときには放射性元素を生成することが明らかになった。フランスの化学者イレーヌおよびフレデリックのジョリオ・キュリー夫妻が、アルミニウムにアルファ粒子をうちこんで、はじめて人工的に放射性物質をつくりだした。アルミニウム原子核はアルファ粒子を捕獲し、中性子を放出してリンの同位体を生成し、短い半減期で陽電子放出によって崩壊する。彼らはまた、ホウ素から窒素の同位体を、マグネシウムからアルミニウムの同位体を生成できることも発見した。

これ以来、多くの原子核反応が発見され、周期表のすべての元素に対して、アルファ粒子、陽子、中性子、重陽子(重水素の原子核)などをうちこむ実験がおこなわれた。こうした研究の結果、今では1000種以上の人工の放射性元素が知られている。この研究で活躍するのが加速器である。うちこむ粒子を加速器によってかなり加速することができ、標的の原子核に捕獲される可能性を高めることができるからである。

1. 利用の拡大

原子核反応の研究や重い元素における人工放射能の探求は、原子核分裂の発見と原子爆弾(核兵器)の開発につながっていった(→核エネルギーの「原子の分裂と融合」)。自然界には存在しないいくつかの超ウラン元素も生成されている。原子炉の開発によって、周期表のほとんどすべての元素について、放射性同位体の大量生産が可能になった。放射性同位体がつかえるようになり、化学、生物学、医学の研究が促進された。トレーサー:放射線医学

人工的につくられた放射性同位体の中で、炭素の放射性同位体である14C(炭素14)がとくに重要である。14Cは、5730年の半減期をもち、光合成など生命活動のさまざまな側面を、以前には考えられなかったような基礎的な方法で研究することが可能になった。

また、地球の大気の中にはきわめて少量であるが、宇宙線にさらされた窒素原子が元素変換した14Cが存在する。この14Cは二酸化炭素にふくまれ、光合成や代謝の過程で、すべての生命体が吸収している。生命体の死後、吸収は停止し、14Cはベータ崩壊してゆくので一定の濃度を保つことはできなくなる。これを利用して、骨やミイラなど歴史的、考古学的に重要なものの年代が、14Cの測定によって推定できるようになった。→年代測定法の「放射年代測定法」

2. さまざまな利用法

中性子を照射して分析対象物を放射化する中性子放射化分析も、人工放射元素のひとつの応用例である。他の手段によっては検出できないような不純物の元素を、原子炉の中で中性子を照射して放射能をもたせる(放射化する)と、放射性同位体となって放射能を出すようになる。それを分析することによって、不純物がなんであるかを知ることができる。そのほかにも、医療や工業面でのX線などの放射線撮影、放射線の励起による発光(リン光)光源としての利用。また、アルファ線の電離作用を利用した静電気除去装置や、放射能の透過量を測定することで対象物の厚みをはかる厚みゲージなどにもつかわれている。放射性同位元素が出す熱を電気に変換する原子力電池(アイソトープ電池)は心臓ペースメーカーや惑星探査機の電源としても利用されている。このほかにも人工放射性元素の応用例は多岐にわたっている。