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抗体
I. プロローグ

リンパ球とよばれる細胞群でつくられ、おもに異物が侵入してくるのをふせぐ働きをするタンパク質分子。すべての脊椎(せきつい)動物に存在し、おそらく100万種類はあるとされる。免疫系の重要な成分であり、ガンマグロブリンとよばれる血液の成分中にふくまれる。

II. 抗原と抗体

抗原とよばれる異物が体にはいってくると、免疫系がこれを発見し、抗体の合成にむけて活動しはじめる。リンパ球は異物表面の分子の形にぴったりした分子配列をもつ抗体をつくって異物と結合する。よく知られている抗原は、細菌やウイルスのタンパク質成分である。これらは感染によって体にはいってきたり、抗体をつくるように刺激するようなワクチンの接種(免疫法)によって体内にいれられる。

抗体が、細菌、ウイルスあるいは毒素の表面に結合すると、これら有害なものは中和されたり排除されたりする。その方法には(1)直接、活性をうしなわせる、(2)他の血球が有害なものを食べたり、こわしたりできるようにする(食作用)、(3)有害なものの表面を弱くして、他の血液タンパク(補体など)の有害なものをこわす作用をうけやすくする、の3つがあり、これらのうちのどれかか、あるいはすべてによることがある。動物は、さらされたことのない物質に対する抗体はもっていないが、未知のどんな異物にもぴったり分子配列が適合する、豊富な種類の抗体をつくることができる。

多発性硬化症や全身性エリテマトーデスなどでは、まちがって自己の正常組織の成分に対する抗体を自分でつくってしまう(自己免疫疾患)。ウイルスが免疫機構をみだすこともある。

III. 免疫グロブリン

抗体の別名である免疫グロブリン(Ig)には、M・G・E・A・Dという5種類の抗体がある。IgMは新生児がつくる初めての抗体で、感染症にかかると最初につくられる。IgGは血清中に圧倒的に多くある抗体で、抗原に2回目にさらされたときにつくられる。IgEはアレルギーと関係がある。IgAは唾液や母乳、粘液などにふくまれる。IgDの役割はまだわかっていない。

IV. モノクローナル抗体

多発性骨髄腫(こつずいしゅ)というある種の悪性腫瘍(しゅよう)にかかっている患者の血液には、ひとつのタイプの抗体が高濃度にみられる。1970年代には、科学者たちはこれらの多発性骨髄腫細胞と抗原にさらされた組織からとったリンパ球とを融合させる方法を習得した。こうしてできた混成細胞(ハイブリドーマ)は、ある特殊な配列の抗体を多量につくること(クローン)ができる。これがモノクローナル抗体とよばれるもので、適当なハイブリドーマをえらべば、どんな異物でもそれと結合できる純粋な抗体をえることができる。

モノクローナル抗体をつかえば、特定の細胞や組織に標識をつけることができ、同一のものと確認できることから、生物学や医学での貴重な道具となった。輸血のときに血液をタイプにわけるのと同様に、移植の際にも拒絶反応がおこらないように白血球の型を決定したり、体の特定の部位にねらいをつけて薬を投与したりするのに、モノクローナル抗体を利用しようと研究がすすめられている。