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隕石
I. プロローグ

流星などが、完全にもえつきてしまう前に、地球や他の惑星の表面に到達したもの。まれに、隕石雨とよばれる多数の隕石が広範囲に落下する現象などもみられる。これは隕石が地球の大気に突入したときに、多数の細かな破片となったものである。

II. 隕石の種類

地球で発見される隕石は、成分によって、鉄隕石、石質隕石およびその中間的な石鉄隕石の3つに分類される。地球上では、金属の鉄は酸化により酸化鉄となるため、自然状態で発見されることはない。そのため、地表で発見される金属鉄は隕石由来であることがわかるが、実際に発見される隕石は、大多数が石質隕石である。

1. 鉄隕石(隕鉄)

鉄隕石は隕鉄ともよばれ、主成分が鉄とニッケルの合金でできている。また、少量のガリウムやゲルマニウム、イリジウムなどの元素をふくんでいる。鉄隕石は、ニッケルの含有量により、ヘキサヘドライト(4~6%)、オクタヘドライト(6~13%)、アタクサイト(13%以上)に大別される。オクタヘドライトは切断すると、断面には合金の境界面をしめす複雑な格子状のパターンがみられる。これはウィドマンステッテン組織とよばれ、隕石がきわめて長期間をかけて冷却されたことを意味している。

2. 石質隕石

石質隕石は外見が地表の岩石とよく似ていて、おもに橄欖石や斜方輝石(輝石)などケイ酸塩鉱物で構成され、少量の硫化物(硫黄)のトロライトと鉄とニッケルの合金をふくんでいる。石質隕石は、橄欖石や輝石からなるコンドリュール(コンドルールとも)とよばれる直径1~数ミリの球状物質をふくんでいるかどうかにより、コンドライトとエコンドライトとに区分されている。

コンドライトは、コンドルールという球状物質をふくみ、地球に落下する隕石の80%近くを占めている。さらに化学組成や酸化や還元の状態により細分されるが、とくに有機物を多くふくむものは炭素質コンドライトとよばれている。

エコンドライトは、コンドルールをふくまず、組成にカルシウムを多くふくむもの(玄武岩質エコンドライト)と少ないものとに大別されている。落下隕石の7%近くを占めており、南極大陸からは大量に発見されている。

3. 石鉄隕石

石鉄隕石はニッケル鉄(鉄とニッケルの合金)およびケイ酸塩鉱物の両方をさまざまな比率でふくんでいる。ニッケル鉄の中に橄欖石の結晶が分散するパラサイトや、ニッケル鉄はパラサイトよりも少なく、ホワルダイトとよばれるエコンドライトにニッケル鉄が分散したような組織をもつメソシデライト、ニッケル鉄と橄欖石、輝石がほぼ等量を占める完晶質岩ロドナイトなどに分類されている。

III. 隕石の起源

大部分の隕石は、結晶の生成された年代が約45億年以上も前であることや、化学組成や鉱物組成が地球のマントルや核(コア)の構成物質に近いことなどから、太陽系の形成を知るために重要である。石質隕石はケイ酸塩鉱物でできたマントル、鉄隕石はニッケル鉄でできた核、岩石とニッケル鉄がほぼ同量の石鉄隕鉄は、マントルと核の境界部分に相当する。

さらに、隕石は、落下が観測されたものの軌道計算の結果や、ある種の小惑星と同じ反射スペクトルをもつことから、小惑星帯から飛来したものと考えられている。おそらく隕石の母天体となった小惑星も、太陽系が誕生したときには地球と同じく高温の溶融状態にあったと思われる。そして、比重が大きな鉄やニッケルが中心にあつまり、その周囲に鉱物や岩石が形成されたのである。こうして形成された小惑星がたがいに衝突して、くだけた破片により、3種類の隕石の違いが生じたと思われる。

しかしながら、石質隕石の大部分は、小惑星の破片とみられるエコンドライトよりも、むしろニッケル鉄を多くふくむコンドライトの方が多い。また、炭素質コンドライトは、かなりの水分や炭化水素をふくんでいることから、溶融や固化という熱変成(変成作用)をうけていない原始的な隕石だとみられている。このような隕石の生成については、いまだよくわかってはいない。

1. 南極隕石

1969年(昭和44年)に日本の第10次南極観測隊(南極観測)が9個の隕石を発見したのを最初に、「南極隕石」とよばれる一群の隕石が2002年(平成14年)までに3万3693個(うち、日本は1万6728個)ほど南極大陸で発見されている。この南極隕石の中には、ほかの地域で発見された隕石と同様なもののほかに、月と火星からやってきた石質隕石がふくまれていることが最近の研究によりわかっている。

月の表面物質が隕石として地球に飛来した「月隕石」は1982年にはじめて発見された。2001年までに発見された17個のうち、オーストラリア(1個)とサハラ砂漠(2個)をのぞく14個が南極大陸で発見されている。

2002年までに火星に由来すると考えられる隕石は27個発見されている。そのうち1984年に南極大陸で発見されたALH84001という隕石からは、生物の痕跡(こんせき)をしめす微化石とも推定できるような構造が発見されたと、96年にNASA(アメリカ航空宇宙局)は発表している。また2001年に日本の南極観測隊が発見した火星隕石は、重量が13.7kgと世界で2番目に大きなもので、一部には火星に水が存在したことをしめすデータも発見されている。これらの隕石は、小惑星が月や火星にはげしい衝突をしたときに放出されたものと思われる。また、小惑星そのものが、地球が形成されつつあった46億年ほど前につくられた微惑星のかけらである。

鉄隕石は微惑星の核をしめしており、月や火星からのものをのぞいた石質隕石は地殻をあらわしていると考えられる。隕石の表面にはふつうへこみがあり、外側は大気との摩擦により、融解し黒こげ(フュージョンクラストという)になっている。そして、大きな隕石の衝突は、地球の表面に大変な衝撃をあたえ、巨大なクレーターをつくる。現在、地球上で隕石によってつくられたクレーターは、およそ150程度確認されている。アメリカ合衆国アリゾナ州の砂漠の中にあるバリンジャー隕石孔(直径1.2km、深さ190m)などが有名である。

また、クレーターのような痕跡を地上にのこさない隕石もある。たとえば1908年6月30日、中部シベリア、ツングースカでおきた大爆発は、小惑星または彗星核(すいせいかく)が大気圏に突入したことが原因と考えられているが、現場には突入のさいに発生したらしい巨大な熱風による樹木の倒壊と焼損がみられるだけで、クレーターは生じていない。

IV. 隕石の大きさと利用

世界最大の隕石は「ホバ隕石」で、最大直径が約3m、重さも約60tあり、ナミビアのグロートフォンテンに近い、ホバの西で見つかった。次に大きな隕石は31t以上の「アーニギト(テントの意)隕石」とよばれるものである。この隕石は、2つの小さい隕石とともに1894年にグリーンランドのケープヨーク近くで、アメリカの探検家ピアリーによって発見された。3つともおもに鉄でできた鉄隕石で、長い間ナイフや武器をつくる材料としてイヌイットが利用していた。ピアリーがもちかえったアーニギトは、ニューヨークのヘイドン・プラネタリウム(アメリカ自然史博物館)で公開されている。3番目のものは、98年にロシア探検隊が中国国境付近で発見したもので、1963年に中国の科学者チームが再発見した。「新彊隕石(しんきょういんせき:学術名はArmanty隕石)」とよばれ、重さは28tある。

日本で最大の隕石は1850年(嘉永3年)に、現在の陸前高田市に落下したコンドライト隕石の「気仙隕石」で、落下が目撃され、落下地点や日時、状況などが記録としてのこされている。94年(明治27年)に帝室博物館に献納されたときの重さは135kgあったが、研究用にけずられたため、現在、国立科学博物館に展示されているものは重量が106kgほどになっている。もっとも重い隕石は85年に滋賀県田上山(たのかみさん)で発見された鉄隕石の「田上隕石」で、170kgあり、こちらも国立科学博物館に展示されている。

古代エジプトや中国などの遺跡からは鉄隕石を鍛造してつくられたと思われる鉄製の刀剣などの破片が数多く発見されている。それは、これらの鉄片には地球上の物質にはみることのできない鉄とニッケルによるウィドマンステッテン組織とよばれる独特な金属組織が確認できるためである。この組織を形成するには、真空状態で「100万年に1度」程度の冷却によりつくられると考えられており、人工的には不可能とされているからである。