蒸留
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蒸留
III. 蒸留の原理

2つの成分からなる溶液を加熱、沸騰させて生じる蒸気が液相と平衡状態にあるとき、その組成は、液相の組成よりも低沸点成分に富んでいる。したがって、この蒸気を凝縮させると、もとの液よりも低沸点成分に富んだ液がえられる。これが蒸留の基本的な原理である。

1. 共沸混合物

蒸留がすすむとともに液相の組成がかわり、沸点が連続的に変化する。しかし、ある種の溶液では、液相の組成と平衡状態にある蒸気相の組成がある時点で同じになることがある。このような組成の溶液では、蒸留操作をおこなっても同じ組成の蒸気しかえられないため、それぞれの成分に完全に分離することができない。このような組成の溶液を共沸混合物という。エタノールの水溶液は、1気圧のもとでは濃度が96%になると共沸混合物になる。このときの沸点は78.15°Cである。したがって、ふつうの蒸留操作を何度くりかえしても、エタノールをこれ以上の濃度にすることはできない。100%の(無水の)エタノールをえるには、共沸蒸留(分留)によるか、アルコールと化学反応しない石灰や無水硫酸銅(硫酸銅)などの脱水剤を利用して、結晶の中に水分子を吸着して除去する。

2. ラウールの法則

たがいにとけあう2つの成分からなる、もっとも単純な混合物の場合、それぞれの成分の揮発度は、他の成分には影響されない。このような2成分の等量混合物の沸点は、それぞれの成分(純粋な物質として)の沸点の中間にあり、1回の蒸留によって達成される分離の程度は、その温度での各成分の蒸気圧あるいは揮発度だけできまる。

この関係は、フランスの化学者フランソワ・マリー・ラウール(1830~1901)によって実験的にみいだされたもので、ラウールの法則とよばれる。

しかしラウールの法則は、たとえばベンゼンとトルエンのように、化学構造がひじょうによく似た液体の混合物にのみあてはまるもので、多くの場合は、この法則から大きくずれる。希薄なエタノール水溶液中のエタノールの揮発度は、ラウールの法則で予測される揮発度の数倍となる。きわめて濃度が高いエタノール溶液の場合には、このずれはさらに大きくなる。