| 癌 | 項目ビュー | ||||
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| III. | 癌の原因 |
癌は、基本的に遺伝子の異常によっておきる病気である。正常細胞には癌遺伝子(オンコジーン)と癌抑制遺伝子があり、前者が活性化し、後者が不活性化すると、癌が発生する。これらの遺伝子を変化させ癌を発生させる引き金となるのは、発癌物質である。
発癌物質には、ウイルス、放射線(→ 放射線障害)、フリーラジカル、化学物質、遺伝、免疫系の変化などがある。長い間、これらのさまざまな因子は別々に作用しているとみられてきたが、現在では、これらの因子がたがいに作用して悪性腫瘍をつくると考えられ、その研究がおこなわれている。
| 1. | 遺伝 |
癌は遺伝子の病気といっても、多くは後天的に体細胞の遺伝子に障害がおこって生じる。先天的な遺伝にもとづく癌は多くない。しかし、癌によっては、乳癌のように、同一家系に多く発生するものもある。大腸癌は、大腸の中に多くのポリープをつくりやすい家系によくみられる。網膜芽細胞腫のあるタイプは、ある特定の遺伝子が消失したときにのみ発生することがしめされている。発癌物質に対する体の防御力を弱くする遺伝的な異常は、前立腺癌に関連している。いくつかの遺伝的障害の中で、染色体切断がおこる頻度は比較的多く、そのような病気が癌をまねくのかもしれない。
| 2. | ウイルス |
ウイルスは、多くの癌の原因となる。癌ウイルスは、もっている遺伝情報がDNA(デオキシリボ核酸)かRNA(リボ核酸)かによって、DNA型とRNA型とにわけられる。ヒトでは、EBウイルス(エプスタイン・バールウイルス)が、バーキットリンパ腫やリンパ上皮腫に関係があり、肝炎ウイルス(→ 肝炎)は肝癌に、乳頭腫ウイルスは子宮頸癌(→ 子宮癌)に関係している。これら癌のウイルスは、DNA型ウイルスである。成人T細胞性白血病をおこすHTLVは、RNA型ウイルス(レトロウイルス)である。RNA型ウイルスはRNAをDNAにかえる逆転写酵素とよばれる酵素をもっている。ウイルスの遺伝情報は、ヒトの細胞のDNAの中にとりこまれ、細胞を癌化させる。
| 3. | 放射線 |
放射線は癌の原因となる可能性が高い。放射線により、染色体が切断や他の染色体への転座をおこし、2つの切れた端がくみかえられるなどして、DNAに変化を発生させる。その変化が発癌性のイニシエーター(開始因子)としてはたらき、何年もの潜伏期をへて癌の進行に変化をもたらす因子として作用する。この潜伏期間中に、さらにその他の発癌因子にさらされることになる。
| 4. | 化学物質 |
化学物質が癌を生じさせる過程は、さまざまな研究がされている。ある化学物質はイニシエーターとして作用する。イニシエーターにさらされるのは1回で十分だが、長い潜伏期ののち、さらにプロモーター(促進因子)として作用する他の化学物質にさらされ、はじめて発癌する。イニシエーターはDNAに回復不能の変化をおこす。プロモーターはDNAを変化させないが、DNAの合成を促進させ、遺伝子の発現を誘導する。プロモーターがイニシエーターの前に作用しても影響はないが、イニシエーターのあとに、ある期間くりかえし作用した場合には影響がある。
たとえば、タバコの煙の中には、多数のイニシエーターやプロモーターとなる物質がふくまれている。このプロモーターの作用はきわめて重大で、喫煙をやめれば肺癌の危険性は低下する。アルコールはもうひとつの有力なプロモーターで、喫煙者の肺癌と同じく、慢性的な多飲は、他の化学物質によって誘導される癌にかかる危険性をひじょうに高める。
発癌性のある化学物質もまた、染色体の切断や転座をひきおこす(→ 発癌物質)。よく知られている発癌性のある物質には、ベンゼン、アスベスト、アミノビフェニルなどがあり、法律で規制されている。→ アスベスト汚染
| 5. | 免疫系 |
免疫系は癌細胞を認識することができ、また、それらを破壊する細胞を生みだすようにしむける能力があるとされる。癌の進行には、免疫不全状態をまねく疾患や、そのほかの損傷が重要な因子となる可能性もある。このような状態は、エイズ(後天性免疫不全症候群)や先天性免疫不全症の患者や、免疫抑制薬を投与した患者におこる。
| 6. | 環境 |
癌の80%は、環境要因によってひきおこされると推定されている。なかでも喫煙は、すっている本人も、周りの人も害をうける。肥満は多くの癌の危険因子であり、とくに乳癌、大腸癌、子宮癌、前立腺癌などになりやすい。また、食物繊維の少ない食事や脂肪は、大腸癌の発病率と関係がある。食品中の脂肪と肥満は、アルコールのようにプロモーターとして作用すると考えられている。