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| II. | 平面三角法 |
直接はかれないような距離を、三角測量によって、実測可能な角度や長さからもとめる方法である。たがいに相似な平面図形では、それぞれの図形の各部分の長さの比が同じにたもたれるという性質を利用している。こういう比の大きさは角度だけできまり、角度さえわかれば知ることができる。そこで、一定の比の値を角度の関数として定義し、数表をつくっておけば役だつ。これが、三角関数や三角関数表である。
| 1. | 角度の大きさと単位 |
三角法や三角関数を考えるときは、動径の回転によって定義される角度をつかう(図1A、1B、1C)。動径とは点Oを中心として回転する半直線のことで、はじめはOAの位置にあるとする。これが回転してOBの位置までくることによって、ÐAOBがつくられたと考え、その回転の大きさによって角度をはかるのである。ただし、時計の針と反対向きに回転するときは正の大きさの角度とし、時計の針と同じ向きに回転するときは負の角度とする。2つの角度がひとしいということは、動径が同じ位置にくることにくわえ、回転の大きさが向きもふくめてひとしいことであると定義する。

角度の単位を定義するには、ふつう図2のように角の頂点を中心とする円をえがき、角に対応する円弧の長さを考える。

弧の長さsが円周の長さCのつまりs = Cならば、OAとOBは垂直であり、その角の大きさを直角という。もしs = y Cならば、3点A、O、Bは一直線上にならぶ。s = 1/360 Cのときに、その角の大きさを1度(1°)という。s = Cならば、弧の長さは円の半径にひとしくなる。そのときの角の大きさを、1ラジアンという。これらの定義から、2直角 = 180° = pラジアンである(→ 円周率)。
1度(1°)を60等分したものを1分(1')、1分を60等分したものを1秒(1'')という。さらに細かい角度については、秒に小数部分をつけてあらわす。つまり、時計と同じで、秒までは60進法で、それ以下は10進法になる。ラジアンを単位として角をはかる方法を弧度法といい、1ラジアン未満の角度については、やはり小数をつかってあらわす。ラジアンが単位であることをはっきりさせる目的で何ラジアンと書くこともあるが、数字だけで単位名をつけずにあらわすことも多い。そこで、たとえば、

三角法や三角関数では、角度をあらわすのにギリシャ文字θ(シータ)がよくつかわれる。角θをラジアンの単位(弧度法)であらわしてあれば、弧の長さsは、公式s = r θ(rは円の半径)でもとめられる。また、角θが度を単位としてあらわされていれば、

| 2. | 三角関数 |
三角関数は、平面図形の実際の大きさとは無関係に、角の大きさだけできまる特定の比を、角度の関数としてあらわしたものである。三角関数の値は、角度とともに変化してゆくから、回転する動径をもとに三角関数を定義しておくと便利である。

図3のように、回転する動径上の点Pが、原点からの距離rを一定にたもってうごいてゆくものとする。角の頂点を原点とし、図の矢印であらわされた回転の大きさを角θとする。つまり、x軸の正の方向を最初の位置(始線)として、動径が現在の位置までくる回転の大きさが、角θである。そして、点Pの座標を(x, y)とするとき、6種類の三角関数が、次のように定義される。

定義式の右辺の比の値は、動径上の点Pが原点からどれだけはなれているかには無関係で、角の大きさだけできまる。つまり、三角関数の値は角θの関数である。
x座標やy座標は、図3でI~IVと表示された領域(象限という)のどこに点Pがあるかによって、正負の符号がちがってくることに注意しておこう。これに応じて、三角関数の値も符号がかわってくる。
また、点Pがy軸上にあるときはx = 0であり、x軸上にあるときはy = 0である。数学では、0による割り算はみとめられていないから、90°とか270°や -90°のような角については、正接(tan)や正割(sec)の値は定義されない。同様にして、0°とか180°や -180°のような角については、余接(cot)や余割(cosec)の値は定義されない。
しかし、rは0にならないから、すべての角に対して正弦(sin)や余弦(cos)の値はつねに存在する。ピタゴラスの定理により、
であり(→ 幾何学)、rの値はxやyの絶対値より大きいかひとしい。したがって、sin θとcos θは-1から1までの間の値をとる。tan θとcot θは、すべての実数値をとる。sec θとcosec θは、1以上または -1以下の値をとる。
角θに2pラジアンまたは360°をくわえても、xやyはかわらないから、三角関数の値もかわらない。たとえば、
sin(θ + 2p) = sin θ
である。同様な式が、ほかの三角関数についても成立する。
また、定義式から、3つの三角関数は、次のように、他の3つの三角関数の逆数になっていることがわかる。

図4のように直角三角形の鋭角の1つをθとすると、上であたえた三角関数の定義を、これにあてはめてつかうことができる。頂点Aを図3の原点にとり、ACをx軸の正方向にとり、Bを点Pとすれば、c = AB = r, a = CB = y, b = AC = x。したがって、たとえばsin θ = y/r = a/cであり、同様にして次の式が成立する。

いくつかの特別な角について、その三角関数の値は容易にもとめられる。たとえば、図4の特別な場合として、AC = CBの直角二等辺三角形になっているとすれば、鋭角は45°であるから、


さまざまな角度をもつ三角形を、定規、コンパス、分度器をつかって書き、xやyやrを測定して比の値を計算すれば、三角関数の値は近似的にもとめることができる。しかし、微分積分学(→ 微積分)からみちびかれる計算式をつかえば、どんな角度に対する三角関数も、かぎりなく正確に計算できることが知られている。現在では、これを利用した三角関数計算用のプログラムが、スプレッドシート型のアプリケーションで用意され、どんなパソコンでもつかえる。関数電卓とよばれるものもあり、以前のように数表や計算尺は不要になった。
| 3. | 三角関数の公式 |
三角関数について、次のような公式がなりたつ。

ここで、θやφはどんな角でもよい。
どんな角θに対するsin θやcos θでも、公式Vをくりかえしつかえば、0°から90°までの正弦(sin)と余弦(cos)であらわせる。また、公式Iと公式IIをつかうと、tan θ、cot θ、sec θ、cosec θの値はすべて、sin θとcos θの値からもとめられる。したがって、三角関数の値をもとめるためには、0°から90°までの角θについてsin θとcos θの値の表があればよい。三角関数表とよばれる数表には、ふつうこれがのっている。
三角関数の値の変化は、図「三角関数のグラフ」であらわされている。この曲線をみると、三角関数は明らかに周期関数であることがわかる。つまり、一定の間隔(周期)をおいて、関数の値はまったく同じ変化をくりかえす。正弦(sin)、余弦(cos)、正割(sec)、余割(cosec)の各三角関数の周期は360°、または2pラジアンであり、正接関数(tan)と余接関数(cot)の周期は180°、またはpラジアンである。
三角関数について成立するいろいろな関係式が、これらの基本的な公式からみちびかれ、三角法の研究や応用にもちいられる。
| 4. | 三角関数の逆関数 |
「θの正弦の値はyである」(y = sin θ)というとき、同じことを逆に「正弦の値がyであるような角はθである」といいあらわすことができる。yによって角θがきまると考えるのである。つまり、逆にθをyの関数と考えることができるわけで、これを逆正弦関数とよぶ。逆正弦関数は、記号θ = arcsin yまたはθ = sin-1yであらわす。逆正弦関数は、正弦関数の逆関数である。ほかの三角関数についても同様にして、arccos y, arctan y, arccot y, arcsec y, arccosec yという逆三角関数が定義できる。
ただし、同じ三角関数の値をとる角は1つだけとはかぎらない。y = sin θ、またはθ = arcsin yについて、yの1つの値に対応するθの値は無数にある。たとえば、sin30° = sin150° = sin(30° + 360°) = sin(150° + 360°)= ... = y である。つまり、θ = arcsin y に対して、θ = 30° + 360° × nまたはθ = 150° + 360° × n である。nはどんな整数でもいい。
そこで、yに対する逆正弦関数の値θがただ1つきまるようにするため、θを-90°から90°までの範囲にかぎり、arcsinのかわりにArcsinという記号をつかって、θ = Arcsin yとあらわす。このθを、逆正弦関数の主値という。たとえば、30° = Arcsin 1/2である。ほかの逆三角関数についても、同様にただ1つの値(主値)がきまるように、θがとる値の範囲を

| 5. | 三角形 |
三角法は実用的には、直接にははかれないような距離をもとめたりするのにつかわれる。もとめる距離を1辺の長さとするような三角形を考え、その三角形の他の辺や角を測定すれば、次の公式をつかって問題を解くことができる。
三角形の3つの角の大きさをA, B, C、それらの角の対辺の長さをそれぞれa, b, cであらわすと、次の式が成立する。

余弦定理と正接定理については、A, B, Cとa, b, cの記号を適当にいれかえると、別のかたちの式がえられる。たとえば、
b² = c² + a² - 2ac cosB
である。
上の3つの定理をつかうと、さまざまな問題を解くことができる。つまり、三角形の1辺とその両端の角、2辺とそれにはさまれる角、2辺とそれにむかいあう角の一方、この3つのどれかがわかれば、残りの辺の長さや角の大きさを決定することができる。