| 検索ビュー | 測量 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
数学的手法をもちいて、地上もしくは地下に存在する構造の形状、面積、位置を特定し、さらにこれを図上に投影する技術をいう。つまり、土地の区画や人工構造物の範囲、形状を決定し、建造物各部位の大きさや方向の基準をもとめることなどをさす。カーナビゲーションや航法で地球上の位置だけを測定するときは、測位という。→ GPS
土地の区画を計測するにあたっては、目的に応じた手法がもちいられる。地形、自然物、人工物などは地図として表現され、また大規模な建物やダム、橋、鉄道、道路などの土木工事も測量にもとづいて実施される。測量における計測は、長さ、高低差など直線的な量と角度を対象とし、通常は、幾何学と三角法の原理がもちいられる。→ 三角法と三角関数
| II. | 測量と測地 |
全地球規模の測量は、別に測地学(geodesy)という学問として19世紀以降発展してきた。これに対して測量(surveyあるいはsurveying)は特定の地域の位置、広さ、形状、距離を対象とする領域とされた。20世紀にはいると、測地学は、地球の大きさなどの測定のほか、重力場、地球の動力学などの物理的な測定もふくむ地球物理学の1分野となった。測量という場合、土地だけでなく、さまざまな測定もさすこともあるが、そのときは、測定、計測、計量などというのがふつうである。
| III. | 測量にもちいる器具 |
水平方向の長さは、目盛りをほどこした定規や巻尺、測量用のチェーンなどの測定器をつかって計測するほか、光や電波が到達するのに要する時間から算出する方法ももちいられる。鉛直方向の高さについては、やはり目盛りをほどこした棒すなわち測尺をもちいて、高低差や海面からの高さをもとめる。この際、測尺とともに、測量技師のあいだで「レベル」とよばれる、三脚の上に望遠鏡とアルコールに気泡を封入した管をそなえた水準器がもちいられ、観測者は望遠鏡の十字線を基準にして、はなれた位置にたつ助手がもつ測尺の目盛りを読む。鉛直角、水平角の測定には、トランシット、セオドライトなどとよばれる光学機械が使用される。これらはレベル同様、三脚の上の望遠鏡に十字線をほどこした器具で、精密な角度目盛りをうった円盤とともに望遠鏡の仰角を計測できる。
| IV. | 電子技術の応用 |
近年では電子的な技術を利用した距離の測定が可能になり、その精度はきわめて高く、600万分の1あるいはそれ以上に達する。また、やはり電子技術をもちいた精度の高い角度の計測も研究されている。ガラス製の円盤をもちいた経緯儀では、より小さな器具で正確に角度を再現できるようになり、器具の小型化がすすむとともに、精度も1秒の数百分の1程度にまで向上している。いわゆる「自動レベル」は、細糸でつるされたプリズムや液体表面の反射を利用して視準線が自動的に水平になるようにしたもので、気泡を利用したレベルにかわって水準測量につかわれるようになってきた。
| V. | 平面測量 |
陸上または水面上のある一定のせまい範囲を、地球表面の湾曲を無視して平面と考える測量。通常、南北軸、東西軸からなる方形の目盛りを想定し、その上に対象を投影し計算するが、方位は現実の東西南北とかならずしも一致する必要はなく、便宜的にきめてよい。
| 1. | トラバース測量 |
座標系での位置が判明している1点または任意の1点を起点として、他の1点までの距離と方角をはかる。そこからまた別の任意の1点までの距離と方角をはかるという具合に計測をくりかえし、当初の点にもどるか、あるいは座標値の判明している任意の点に到達するまでつづける。これをトラバース測量とよぶ。
各地点の間をむすぶ直線の水平方向の角度は、トランシットあるいはセオドライトによって測定される。始点からのびる最初の線の方位はあらかじめ判明しているか、もしくは任意にさだめられているため、これを基準にすれば各線の方位が算出できる。
各点の座標は、平面幾何学、平面三角法にもとづいて決定される。通常トラバース測量において、任意の方向となす角度を方位角とよぶが、南北方向を基準に方位角をさだめた場合、ある2点間の南北差はその2点間の距離に、その2点をむすぶ直線の方位角の余弦(コサイン)をかけることによってえられる。また東西方向の距離については、2点間の距離にその2点をむすぶ直線の方位角の正弦(サイン)をかけることによってもとめられる。座標系をもちいることにより自由な間隔で複数の点をきめることができ、それらを基準にして、地図や海図上にさらに細かい操作をくわえることが可能となる。
トラバース測量は、精密に計測されている三角点を基準として目的とする地域の細部を測定する場合や、道路、鉄道など長い距離の路線測量に利用する方法である。起点から測量していって最後に起点にもどって、測量した区間が多角形になるものを閉トラバース、起点にもどらずに折れ線になって終了するものを開トラバースという。
| 2. | 三角測量 |
トラバース測量のかわりに三角測量をもちいることもある。たがいに隣接する複数の三角形を想定し、いずれかの三角形の1辺のみについて長さとその辺をはさむ2つの頂角の角度を測定する。そうすると、三角形の形状が決定できる。つまり、隣接する三角形の1辺の長さもわかる。この作業を各三角形についてくりかえす。最初に基線という1辺の長さを測定し、ついで角度だけを次々に測定して測量をすすめていく。精度は基線の測定精度とその長さできまる。トラバース測量、三角測量のいずれをもちいるかは、対象となる土地の地形によってきまる。
| VI. | 三辺測量 |
三辺測量は、三角測量と同じように、測量する区間を多数の三角形に分割して、それぞれの三角形の形状を計測しながら進行していく測量法である。三角測量が最初に1辺の長さだけしか計測しないで、角度だけを計測して進行していくのに対して、3辺の長さがわかれば三角形の形状が決定できることを利用して、3辺の長さを測定しながら進行していく方法である。
| VII. | 測地測量 |
ある一定の大きさをこえる範囲では、地球の湾曲を考慮した測量をする必要が生じる。地球上すべてが平均海面におおわれたと仮定した球体をジオイドといい、回転楕円体に近い想像上の球面を地球の形とみなして測量する。地球の自転軸によって決定される現実の子午線にもとづく測量法である。子午線は極に近づくほど収束していくため、たとえば長距離にわたる幹線道路の測量では、誤差の蓄積を補正するために平面測量での数値を地球の湾曲を考慮したものに変更しなければならない。
| VIII. | 土地測量 |
土地の境界を決定、もしくはその位置を確認、あるいは土地売買のためや公的記録として保管するために境界線や面積を特定するなどの必要が生じたとき、杭や標石をうつ位置を決定するために土地測量がなされる。
土地測量は対象となる不動産物件の資産価値によってその精度もさまざまだが、恒久的で目につきやすく、いつでも除去可能な物体を標識として敷地の隅に固定する。公的な永続性をもたせ、土地の正当な所有者の権利を保護するためには、こうした標識をもうけることがのぞましい。測量技師は、測量の技術のみならず、財産に関する法律の知識をもたねばならず、測量士、測量士補という公的な資格が必要である。
| IX. | 地形測量 |
地形測量は、3次元的な形状を対象とする技術である。平面測量そのほかの専門的手法を駆使して、水平、鉛直方向の概形を確定する。地面の起伏、さらに自然、人工の物体の形状や位置を計測し、平面図に地形図として再現する。同じ標高の地点をむすんだ等高線により、高さを任意の間隔で段階的に表示することができる。地形測量は、空中からの写真測量によることが多く、航空機、さらに近年では人工衛星から2枚ずつ撮影した立体写真がもととなる。撮影された範囲内の各点とカメラとの距離は一様でない。したがってこれらの写真にはかならずひずみが生じる。そのため、水平方向、鉛直方向の測量値を加味、修正したうえで立体的なモデルに再現し、これをもとに実際の地図を撮影するのである。撮影には精度の高いカメラが要求され、同じように高精度の地図作成システムをもちいて自然、人工物を実際の相対的位置に配し、また範囲内のすべての地点の正確な高度をしめす。地形図では、ことなる高度の等高線を同一の図の中に同時にしめし、土地の起伏が読みとれるようにする。
| X. | 土木建築測量 |
土木測量では、まずトラバース、基線などをひいて基準点をもうけ、これらの点をもとに設計図にもとづいた土木工事、建設工事を実行する。地形測量やそれによってえられた地図から、水平方向の位置や高度をもとめ、建物、ダム、運河、道路、橋、送電線、下水道の設計をする。これらは土木設計の技術をもちいて、当初の土木測量でもちいた基準点にもとづき実際の土地上に配置される。
道路、橋、ダム、トンネル、建物などの構造物を実際の土地上に配置する際には土木測量をし、その内容にもとづいて建築測量もなされる。
| XI. | 地図作成測量と地図作成 |
地図や海図作成のために基準点をもうけ、さらに詳細な情報をえる作業を地図作成測量という。小縮尺(すなわち広い範囲)の海図や地図は、より詳細で大縮尺の地図をあわせ、細部を省略する。陸付近の海図にはまず海底までの深度が表示され、このほか沿岸部もえがかれるが、陸上については船舶の航行に必要な情報のみを表示する。航空図には地上の大きな自然物、人工物、飛行のさまたげになりそうなもの、飛行場、無線標識、鉄道、道路など航路確認の助けになるものだけが表示される。
| XII. | 海洋測量 |
海、川、入り江、湖などの水深を測定し、船舶の安全な航行をはかる。測定者は水面上で手動により測深する。位置は沿岸にもうけられた基準点をもとに測定者自身、あるいは基準点にいる他の測定者が確認する。ソナー(水中音波探知機)により、水上の観測者の位置をレーダーの原理で瞬時に測定し、より正確なデータを迅速にえることも可能となっている(→ レーダー:ソナー:測深)。陸からはなれると位置の特定の精度が低下するため、長距離航法(LORAN、Long Range Navigation)が使用される。近年では人工衛星を利用して、近代的な機器を装備した観測船の水面上での位置をきわめて正確に特定することも可能である。
| XIII. | 鉱山測量 |
鉱山測量は、地下に埋蔵されている鉱物資源の地上での位置を特定し、所有権の所在を明確にする。地下資源の採掘やトンネル工事では、この測量技術を応用して、地下の構造物の位置を特定し、坑道の配置をきめ、トンネルの掘削方向をみちびく。一種の3次元的トラバース測量であり、地上におけるものと本質的な差はない。
| XIV. | 日本の測量史 |
土地の区画や道路建設には測量がかかせない。日本でもすでに国家としての体裁がととのいはじめた時代には、中国から測量技術が導入されたものと考えられている。
| 1. | 前近代の測量 |
大化の改新以降、課税するときの土地台帳の整備、都の都市計画、道路の整備などの必要から、測量技術がつかわれるようになった。奈良時代以降は、全国を行脚する行基のような僧が、歩測と地形の描写で絵地図をつくるようになる。こうした地図は、行基図とよばれ、江戸時代にヨーロッパから近代測量技術が導入されるまで、基本は同じ作図方法がつづいていた。
| 2. | 江戸時代の測量 |
近代的な測量技術は、18世紀末の洋学から出発した。高橋至時、間重富やその師である麻田剛立は、西洋と中国の精密な天文観測と測量技術を研究し、観測器具を開発していったが、その成果として、地上の地点間の相対的な位置関係だけでなく、1地点の地球上での絶対的な座標を測定できるようになった。南北に緯度1度に相当する距離を正確に計測できれば、地球の大きさを計算できると考えたのは至時だが、それを実測によってデータを収集しようとして、全国の測量をはじめたのは伊能忠敬であった。19世紀以降、日本の測量は高精度になっていったが、その背景には、至時、重富、忠敬らが、当時の時計職人などを指導して精密な測定器具を製作させたことも大きい。
| 3. | 明治以降の測量 |
江戸期に発達した測量と地図作成の技術は、1888年(明治21)に陸軍参謀部の改組によって設置された陸地測量部、第2次世界大戦後は、地理調査所をへて国土地理院へとひきつがれていった。
| XV. | 測量技術の革命 |
機械加工技術の発展によって、光学機械や巻尺の精度が向上して測量の精度も高いものになった。しかし、標尺、スチールテープ、ワイヤーなど長さの基準になる測定器具は、0.1mm程度の精度が限界で、三角測量の基線でも、数キロメートルまでしかとれない。そのため、測量区間が長いと、誤差が蓄積されていくので、適当な補正が必要になる。
測量技術を飛躍させたのは、人工衛星による測地とレーザーをつかった精密な距離測定だが、とくに一般の土地測量や土木測量に革命をもたらしたのは、光波距離計である。
| 1. | 光波距離計 |
別名「光波測距儀」ともいう測量器械で、レーザー光を利用して長さを計測する。かつてはネオン-ヘリウムの気体レーザーがつかわれたが、赤外線の発光ダイオード(→ ダイオード)が開発され、現在では固体の半導体レーザーが多くなっている。
原理は、発振したレーザー光の周波数を10MHz~数百MHz(メガヘルツ:100万ヘルツ)に変調して目標地点においた反射鏡にあて、発射した光と反射してきた光との位相差によって、光の1波長が物差しの最小目盛りとして長さが測定できる。精度は、変調光の発振周波数の精度、位相差の測定精度、光の速度の測定精度によって決定されるが、一般製品でも、10-7程度は実現できる。
かつては数十キロメートルにおよぶ長さを高精度で直接計測する手段がなかったので、三辺測量は三角測量に比較して精度が低かった。そのため、1960年(昭和35)代までは、国土地理院がおこなう1等三角点など、重要地点の測量は、三角測量で計測し、地図に記載してきた。しかし、光波距離計が登場してから、三辺測量のほうが三角測量よりも高精度になり、方法が変更された。
光波測量計では、数十キロメートルの距離でもmm単位の正確な測量ができ、微小な地殻変動や貯水量によるダムの変形なども計測できるようになった。