ワイン
印刷するには、[ファイル] メニューの [印刷] をクリックします。
ワイン
IV. ワインの製造法

何世紀もの経験から、ワイン用ブドウの栽培には温帯地方が最適であることが明らかになっている。休眠中のブドウの木でさえ、寒帯のきびしい寒さにはたえられず、また熱帯の暑さはブドウの理想的な生育過程のさまたげとなる。ある特定のブドウの品種が生育するにはどの地方が適しているかも古くからわかっていた。

ある年(醸造年)のワインの品質をきめるには重要な要素がいくつかある。まず、生育期と生育期の間におこなうブドウの剪定をどの程度にするかである。生産量が少なければ味のよいブドウとなるので、木をかりこむことで収穫量はかぎられるが良質なブドウがとれる。次に、土壌にじゅうぶんな栄養があり、ブドウ栽培に適した耕作地であること。生育期にはかなりの日照と雨量が必要である。豪雨の場合を考慮し水はけのよい土壌であること。収穫の時期も重要になる。ワインの醸造の仕方。さらに熟成していないワインの貯蔵法などがワインの品質を左右する。

一般的にワインの醸造は完熟したブドウの果汁を発酵させておこなわれる。(例外はたとえばフランスのソーテルヌなどで、ブドウの収穫を故意におくらせ、白カビ、ボトリティス・シネラが発生したあと、つまり貴腐(きふ)とよばれる状態になってから収穫した、糖分の含有量が多い甘口の白ワイン)。最近まで、発酵はもっぱら木の大桶でおこなわれていたが、現代の醸造方法ではガラスを内側にはったタンクかステンレス製タンクが使用されるようになってきている。衛生状態がよいことと、より精密な管理ができることがその理由である。

一般的な醸造の工程は以下のとおりである。まず、醸造場で収穫したブドウから果梗(かこう:ひとつひとつの実についている茎)をとり、軽く圧力をかけて果汁をしぼり、それを発酵用の大桶あるいはタンクにうつし、数日から数週間そのまま放置しておく。かつては、発酵はブドウの皮にふくまれている酵母菌の作用にたよっていたが、現在は専用に培養した酵母菌株を天然の酵母菌の代わりに使用することが多い。果汁(糖と水分の混合液)は、発酵によってアルコールと水に分解され、副生成物として炭酸ガスが発生する。赤ワインの場合、ブドウの皮からタンニンと色素がひきだされる。前にのべた甘口ワインは例外だが、果汁にふくまれる糖分がすべてアルコールに変化するまで発酵がつづく。

赤ワインにはかなりのタンニンがふくまれる。これは色づく過程で、皮からタンニンもいっしょに浸出してくるためである。口当たりのよい渋みは、赤ワインと白ワインのおもな風味の違いになっている。発酵期間がきわめて短い場合など例外をのぞき、熟成していない赤ワインはタンニンの量が多すぎるが、瓶の中で熟成させることによって、タンニンの大部分は化学的に中和され、いくつかの着色物質と結合して無害の沈殿物になる。この沈殿物はワインを別の容器に静かにそそげば、とりのぞくことができる。赤ワインの辛口の度合いはタンニンの含有量できまる。タンニンが多ければ、より辛口になる。

ブドウの成育のよくない年、つまり完熟していないときは、発酵の段階で果汁に糖分をくわえることも多い。熟していないブドウからはじゅうぶんな濃度のアルコールが発酵せず、品質が不安定になるからである。瓶詰めの前のいくつかの段階で、すべてのワインを「精製」、つまり濾過(ろか)して不純物をとりのぞく処理をする。

多くのワインは瓶詰めの直前にさらに処理がほどこされ、のこった不純物がとりのぞかれる。低価格の製品の場合は、短時間加熱する方法(瞬間低温殺菌)がとられる。これによってワインが瓶詰めされたあとで熟成がすすまないようにする。より高級なワインでは、きわめて精緻な濾過がおこなわれ、瓶につめられてからもワインは熟成をつづける。大桶ですすむ自然発酵にくわえて、細菌による発酵が必要なワインもある。この発酵は瓶の中でおこり、リンゴ酸が乳酸と炭酸ガスに変化し、それによってワインの酸味がへり、微妙な発泡性がくわわる。