| 検索ビュー | 木 | 項目ビュー |
| I. | プロローグ |
樹木ともいい、草(草本植物)に対応する語。植物学では木本(もくほん)植物という。茎が木質の組織でできていて、その活動によって材が発達し、肥大生長する点で草とことなる。比較的小さな木の中には、根際から1本以上の茎をだすものもあるが、大きな木の場合ほとんど1本の幹のかたちで生育する。
木は大きく2つのグループに分類される。常緑樹と落葉樹である(このような分類は次に説明する植物学的分類と厳密には一致しない)。常緑樹はいつも古い葉の一部をおとしながら、次々と代わりの新しい葉をだし、1年じゅう葉をつけている。常緑樹の葉には2種類ある。(1)針葉:針葉樹のほとんどにみられる葉で、かたくて細い、あるいは鱗片状で樹脂をふくむ。(2)広葉:熱帯や亜熱帯地域の被子植物にもっとも多く、温帯地方でも多数みられる。落葉樹はひろい葉をもち、ふつう1年でもっともさむい季節あるいはもっとも日のあたらない季節に葉をおとす。
| II. | 分類 |
あらゆる木には実がなり、球果をつけることの多い裸子植物か、種子が果実の中につつまれる被子植物にわけられる。被子植物は種子の構造によって、さらに単子葉植物と双子葉植物にわけられる。6万~7万の樹木のうち、1000種以下の裸子植物と数百種の単子葉植物をのぞいて、木はすべて双子葉植物である。
裸子植物は、おもに木からなっている。被子植物の単子葉植物には、木がひじょうに少ない。単子葉植物で唯一、木を多くふくむのはヤシ科で、ヤシ科のアレカ属は世界じゅうの熱帯や亜熱帯地方に自生している。双子葉植物には広葉樹の大半がふくまれ、世界じゅうに分布している。なお、日本に自生するヘゴやマルハチは木性シダ類とよばれ、ひろい意味では樹木にふくまれるが、厳密には樹木といわない。
| III. | 進化 |
木は古生代のデボン紀から存在していた。古生物学者の調査によるもっとも古い木はコルダイテス属の木で、デボン紀初期にあらわれて古生代末期までに絶滅している。現存する木でもっとも古い広葉樹の裸子植物のイチョウは、現在1種だけである。針葉樹は石炭紀の中ごろにあらわれた。被子植物の木がはじめてあらわれたのは中生代の白亜紀の前半で、新生代の鮮新世初頭までに現存する木の属は事実上すべてでそろった。鮮新世の岩石から発見された木の葉の化石のほとんどは、今日のものと見分けがつかない。→ 古生物学
| IV. | 気候と土壌 |
1年の大半を通じて適当量の地下水がある場所なら、木はどこでも生長する。砂漠や、地下水層がじゅうぶんでなく草しかそだたないような草原には木はそだたない。ただ砂漠のオアシスや川沿いであれば、じゅうぶんに管理すれば栽培はできる。草原や砂漠に接する地域では、木は生長をさまたげられてまがりくねることが多い。高山地帯や針葉樹帯北限にみられる、そのような木がまばらにはえる林は矮(わい)林とよばれる。しかし最適の条件のもとでは、木は森林とよばれる大きな集合体を形成する。
木に必要な気候と土壌は、種によって多少ことなる。多くの種が広範囲に生育するが、このうち最適な生育条件にめぐまれるものはごくわずかである。ある一定の地域でもっとも多くみられる種を、その地域の優占種という。
| V. | 生長の過程 |
木が生長していくときの生理的な過程のほとんどは、高等植物全体に共通するものである。木の構造は本質的に同じなので、多くの過程がほぼ同じように進行する。
| 1. | 基本的構造 |
木が生長するためには、もとになるわかい苗木に木質の組織の層が継続してつみかさなる必要がある。木の軸すなわち根と幹は、おもに3つの層にわけられる。表皮とよばれる、いちばん外側の層はうすい壁の細胞からなり、軸の内側の各層を保護する。皮層とよばれる中間の層は細胞壁のうすい大きめの細胞からなり、一時的に養分をたくわえる貯蔵組織として機能する。もっとも内側の層すなわち中心柱は、かたい内鞘(ないしょう)細胞の層、師部細胞の多細胞層、木部細胞の多細胞層、そして細胞壁のうすい髄とよばれる内核からなっている。→ 師部:根:茎:木部
| 2. | 形成層 |
植物の生長初期に、師部と木部の層の間に形成層とよばれる細胞の層ができる。形成層はたえず分裂しながら、かわるがわる新しい師部と木部をつくっていく。形成層が分裂して木部細胞となるとき、内側の細胞が木部細胞となる。そして外側の細胞は形成層としての機能をたもって次の細胞分裂をおこない、今度は外側の細胞が師部細胞となり、内側の細胞が形成層としてのこる。木部細胞のほうが師部細胞よりも多く生成される。
| 3. | 発育 |
形成層が分裂をつづけることによって、木はしだいに太くなる。木部細胞の増加により木部がひろがるにつれて形成層の輪はたえずひろがるが、形成層の外側の組織、つまり師部、内鞘、皮層、樹皮はまもなくこわれて深い割れ目ができ、最後にはさけてしまう。コルク形成層とよばれる新しい形成層が師部の外側にできて、コルク細胞の層が重なっていき幹を保護する。幹が太くなるにつれて、コルク層の表面に特徴的な割れ目ができることが多い。木部の拡大によってコルク形成層がさけると、それにかわる新しいコルク形成層ができる。
| 4. | 成熟 |
成熟した木の幹は外側部分に割れ目のはいったコルク細胞のいくつかの層、つまりコルク形成層、おしつぶされた師部、機能している師部、形成層のうすい層と木部のあつい層からなっている。木部の層はふつう、幹の直径の95%以上を占める。木部の層をひとまとめにして木質部とよび、形成層の外側の層をまとめて樹皮とよぶ。樹皮はコルク形成層によって外樹皮と内樹皮にわかれる。
| 5. | 年輪 |
毎年春にできる木部細胞は大きく、春以降にできる木部細胞は小さく、さらに冬の間は生長がとまるため、木質部の1年間の生長は年輪とよばれるはっきりした輪になってあらわれる。それぞれの年輪の幅は気候の変動などの影響をうけ、考古学者は木の年輪をしらべて過去の気象条件や環境の変化を測定してきた。年齢のわかっている木を基準にして、年齢のわからない木の年輪をくらべることにより、考古学者は4000年近くさかのぼれる年代測定法を生みだした。年輪から年代をさぐるこのような方法は年輪年代法とよばれ、木の梁(はり)がのこっている古代の建造物の年代測定に利用されてきた。古い年輪はたいてい黒ずんでいて機能しておらず、芯材とよばれる。いっぽう、わかい層は色も明るく樹液をはこぶ働きをするため、液材とよばれる。
| 6. | 栄養 |
軸の液材は水分や溶解したミネラル分を土壌からすいあげて葉へ運搬する。葉をとおしてとりいれた二酸化炭素と水がくみあわされて、葉で消費される。光合成とよばれ、栄養分をつくるプロセスである。また生きている植物細胞の呼吸で生じた気体は、液材によって葉にはこばれ、そこで大気中に放散される。光合成によってつくられる栄養分と大気中から吸収して呼吸につかう酸素は、師部によって根まではこばれる。
| 7. | 生殖 |
木の生殖には、植物がほとんどすべてそうであるように世代交代がある。胚珠(はいしゅ)と花粉は1本の木の同じ花、あるいは同じ花部でつくられる。ただしモチノキ属の各種の木やトネリコ、カエデの大半とイチイ、ビャクシン、イチョウの場合は木に雌雄がある。木はふつう風や虫によって受粉するが、カバノキ類では受粉せずに種子を生じる種もある。
| 8. | 寿命 |
木の平均寿命は種によってことなる。ある種のカバノキはふつう約40年でかれてしまう。いっぽうサトウカエデはしばしば500年も生き、オークには1500年、ビャクシンには2000年、セコイアオスギ(→ セコイア)には4000年も生きる種がある。鹿児島県の屋久島に自生する縄文杉は、樹齢3000年とも4000年ともいわれる。アメリカ西部の亜高山帯に生えるヒッコリーマツの中には樹齢5000年近いものもあり、もっとも寿命の長い生物である。
| VI. | 用途 |
木および木製品は、人間の生活と切りはなすことができない。木材や木製品に利用するための木の栽培法については林業、木材工業、木材を、食料源としての木の利用については果実、園芸、果樹を、土壌の浸食をふせぐ木の利用については自然保護、浸食を参照。また公園、大通り、遊歩道や家庭の庭には、多くの木が観賞植物として植栽されている。