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| I. | プロローグ |
急速な燃焼あるいは分解によって大量のガスと熱を発生し、その結果急激な圧力上昇をひきおこす、つまり爆発をおこす化合物または混合物のこと。火薬、爆薬、火工品に分類される。爆発物の最大の平和利用は発破や採石であるが、古くなった建物の爆破解体や花火、リベット打ちや金属の成形などにも利用される。爆発物はまた、兵器として銃砲の発射薬、ミサイルやロケットなどの推進薬、破壊を目的とした爆薬、爆弾、爆雷などにも使用される。→ 地雷と機雷:核兵器:誘導ミサイル
最初につかわれた爆薬は、黒色火薬で、中国では古くから使用されていたが、ヨーロッパでは13世紀ころから使用されるようになり、以来数百年にわたって唯一の爆発物としてもちいられた。ニトロセルロースとニトログリセリンは、ともに1840年代半ばに発見された最初の近代的な爆薬である。その後、単独であるいは燃料やほかの試薬との混合物のかたちで、使用されるようになったおもな爆発性化合物としては、硝酸塩、ニトロ化合物、雷酸塩、アジ化鉛、ピクリン酸がある。三酸化キセノンは1962年に開発された最初の爆発性酸化物である。
| II. | 爆発物の性質 |
爆発物は、それ自体に酸化剤をふくんでいて、外部からの酸素の供給なしに燃焼する。その燃焼のしかたには大きくわけて2種類ある。ひとつは、燃焼速度が毎秒数cmほどの燃焼で、爆燃とよばれる。もうひとつは、毎秒数千メートルにおよぶ大きな燃焼速度をもった、衝撃波をともなう燃焼で、デトネーション(爆轟:ばくごう)とよばれる。狭義には、爆燃を利用したものを火薬、デトネーションを利用したものを爆薬という。火薬には衝撃波による破壊作用はなく、発生した高温ガスの膨張による推進力が利用される。爆薬では、衝撃波による破壊作用が利用される。
爆薬には、燃焼速度が秒速9000mをこえるものもあり、軍事的な目的やある種の発破には、きわめて大きな威力を発揮する。いっぽう、採石や採鉱には、燃焼速度のより小さい穏やかな爆薬を使用しなければならない。銃や大砲の発射薬として利用する場合には、急激な衝撃をあたえるのではなく、燃焼によって発生する圧縮ガスの圧力を確実に弾丸につたえることが必要であり、燃焼速度のおそいものを使用しなければならない。もし強力なものを使用すると、銃や大砲そのものが破壊されてしまう。熱や衝撃にとくに鋭敏で容易に爆発する爆薬は、それほど鋭敏ではないほかの火薬や爆薬を爆発させるために利用される。このような爆薬を起爆薬とよぶ。爆薬は、運搬や保管の安全、その鋭敏さや威力をおさえるために、不活性な物質と混合して使用されることが多い。ダイナマイトはその一例である。
| III. | 発射薬・推進薬 |
火器の弾丸の発射やロケットの推進には、一般に無煙火薬とよばれるものが使用される。これには、ゲル化したニトロセルロースを単独で基剤とするものとニトログリセリンをくわえたものを基剤とするものの2種類がある。後者はダブルベース火薬あるいは混合火薬とよばれる。ダブルベース火薬の代表的なものにコルダイトがある。これはニトロセルロースに30~40%のニトログリセリンと安定剤として少量の鉱油をくわえたものである。「無煙火薬」の名称は、黒色火薬とくらべると発射時の煙の発生が少ないためにあたえられたもので、かならずしも無煙ではない。
無煙火薬の燃焼速度は、火薬の粒子形状をかえることによって調整することができる。火薬粒子の燃焼は、表面から内部にむかってすすむので、粒子の形状と大きさを調整することによって、しだいにゆっくり燃焼するようにさせるか、均一の速度で燃焼させるか、しだいに急速に燃焼するようにさせるかを決めることができる。たとえば、球状の粒子は、燃焼がすすむにつれて表面積が小さくなるので、だんだん燃焼速度が小さくなる。このように燃焼速度が逓減する火薬は、ピストルのような銃身の短い火器に使用される。
| IV. | 爆薬 |
爆薬には、トリニトロトルエン(TNT)のように衝撃や摩擦に対しても安定で、比較的安全にとりあつかえ、保存、使用できるものもある。だが、ニトログリセリンやピクリン酸(下瀬火薬)のようにひじょうに鋭敏で、ほとんどの場合不活性な安定剤と混合して使用されるものもある。のぞましい性質をもった爆薬をえるために、性質のちがった爆薬を混合することが多い。
第1次世界大戦ではピクリン酸やTNTがよくつかわれたが、第2次世界大戦後に、ひじょうに威力の大きい新型の爆薬が数多く開発された。とりわけ重要なのがシクロトリメチレントリニトラミンとペンタエリトリトールテトラニトラートである。
シクロトリメチレントリニトラミンは、シクロナイトともよばれ、RDXと略され、雷管に使用される。RDXとTNTとワックスとの混合物はコンポジションBとよばれ、爆弾などの炸薬として使用される。アルミニウムをふくんだ、トルペックスとよばれる同様の混合物の水中での威力は、TNTよりも約50%大きい。シクロナイトと爆発性可塑剤をふくむプラスチック結合爆薬は、破壊用爆薬として使用される。
ペンタエリトリトールテトラニトラートはペントリットともよばれ、PETNと略される。シクロナイトと同様な性質をもち、TNTと混合してペントライトという爆薬がつくられる。PETNは用途がひろく、導爆線の心薬、伝爆薬、各種の軍用弾薬に使用される。
1950年代には、2つの新しい型の爆薬が登場し、ダイナマイトにかわってひろく利用されるようになった。そのひとつは、硝酸アンモニウムと軽油とを混合した、硝安油剤爆薬あるいはANFO(アンホ)爆薬とよばれるもので、TNTより25%大きな威力をもち、発破用に使用される。もうひとつは、硝酸アンモニウムに硝酸ナトリウムや水などをくわえたもので、含水爆薬あるいはスラリー爆薬とよばれ、ANFOの伝爆薬に使用される。
| V. | 起爆薬 |
比較的感度の低い爆薬の起爆薬としては、それ自身小さな機械的な衝撃や熱で爆発して主薬を爆発させることができる化合物が使用される。これには、長い間、おもに雷酸水銀(雷汞:らいこう)Hg(ONC)2が単独で、あるいは塩素酸カリウムなどほかの物質と混合して使用されてきた。しかし、その製造には危険がともない、また高温下で分解しないよう保存することができなかった。そのため、工業用および軍事用起爆薬のほとんどすべてが、雷酸塩からアジ化鉛Pb(N3)2、ジアゾジニトロフェノールに切りかえられた。
これらの起爆薬は、かつてはテトリル(トリニトロフェニルメチルニトラミン)とともにもちいられていたが、現在では、シクロナイトあるいはPETNとともに使用される。これらの爆薬は鋭敏で大きな威力をもち、起爆薬と大型の砲弾や爆弾の主爆薬との間の伝爆薬としてもしばしば使用される。
工業用雷管や点火装置には少量の起爆薬が使用されている。これを主爆薬にとりつけ、導火線または電気的に点火すると爆発がおこる。
| VI. | 検定爆薬 |
炭鉱爆薬ともいう。石炭鉱山などでは坑内のメタンガスや浮遊炭塵が発火したり爆発したりする恐れがあるため、通常の高性能爆薬を使用することは危険である。このような環境での発破にも使用できるよう、炎の発生をひじょうに短時間にかつ比較的低温におさえて、火災や爆発の危険性をできるだけ小さくした、爆薬が開発されている。
炭坑での使用がみとめられている検定爆薬の代表的なものには、硝酸アンモニウムと、TNTなどのニトロ化合物、デンプン、塩化ナトリウム、炭酸カルシウムなどほかの成分との混合物がある。また、まったく炎を発生しない爆薬も使用されている。この爆薬は液体二酸化炭素を筒におさめたもので、内部の化学的発熱成分によって瞬間的に液体二酸化炭素をガス化する。このとき、筒の一端にほどこされていてるシールがやぶれ、ここからガスが噴出するのである。
二酸化炭素爆薬は真の意味での爆薬とはいえない。熱を発生するのではなく吸収するからである。しかしこの爆薬には、爆発の際に発生する力が、爆薬を装填(そうてん)した穴の底部にむかうため、石炭の粉砕を少なくすることができるという利点もある。
最近の自動車に装備されているエアバッグは、衝突したときに乗員がフロントガラスにうちつけられるのを防止する。原理は、超音波や赤外線のセンサーで衝突を感知し、慣性によって車内の人間がとばされる前に電気信号で爆発物に点火する。爆薬の熱によって、瞬間的に人体に害の少ないガスを大量に発生する火薬を燃焼させる。ガス発生用の薬剤としては、アジ化ナトリウムなどがつかわれ、1000分の1秒単位の時間でナイロンの袋を膨張させる。